負けたくない 番外編
ある日の終礼が終わったのと同時に、アイツがいつものように俺の席へ訪れる。
「今日帰れる?」
「あぁ別に構わないが」
「よし、決まりだね」
ガッツポーズをし、何故か嬉しそうにしている。木漏れ日の青空の元で帰路についている途中だった。
「そうだ。裕朔、一緒にゲームしようよ」
「ゲーム、それは囲碁将棋か?」
「違うよ。剣術のし過ぎで古くなったんじゃない」
山にいたからか、据え置き機やら、ゲーム機なんぞ置いてなかったし、師匠とやることは剣術か学問、将棋やら囲碁だの駒台しかやっていなかった。
「とりま、ゲームしようよ。家にあるしさ」
「分かった。正々堂々と勝負をしよう」
「決まりだね」
さっそく望海の家へと向かうやいなや、ゲーム機の準備を行いコントローラーを握る。今回ヤツが持ってきたのは対戦型シューティングゲームである。
操作方法を覚えいざ……
「スタート」
始めた瞬間、アイテムを拾い戦いに出ようとしていたが――
「甘いね」
すぐさま撃ち抜かれてゲームオーバーだ。刹那的に終わり桜の花びらが散ったかのように負けた。
「…なぁ」
「やった〜勝った」
「まだ時間はある」
「望むところだ。どんな手でも勝って見せてよ」
その後も、何回も望海に挑み策略も練った、何度も完璧な攻略法を見つけ出したはずなのに。
「また勝ちぃ」
歯が立たず、敗北が続く。将棋や囲碁なら負けない自信はあるのだがな……
だが何故かアイツにだけは負けたくない。そんな意味のない対抗心を燃やしてしまう。
「諦め悪いなぁ、負けを認めたらいいのに」
「認めたら、そこで戦さは終わる」
「ゲームなんだけどなぁ」
望海は呆れたように笑いながらコントローラーを置く。
「でも少し安心した」
「何がだ?」
「努力の剣聖にも負けず嫌いなところがあっただなんてね」
「……勝敗の世界で生きてきたんだ」
「認めたらいいのに」
吹き出しながらコントローラーを持ち、笑いながらこちらに顔向け。
「なぜ笑う?」
「昔の意地を張った顔になってるから」
「意地を張った顔を知らんのでな。さぁ試合を始めるぞ」
「はい、はい。いつもの照れ隠しね」
「照れてなんてない」
再戦し、今度こそはとしっかり相手の期待に照準を合わせ、撃ち落とそうとする。だが上に上がるのは読んでいる。
「ほぉ……少しはやるようになったねぇ」
「学習した」
「だけど僕にゲームで勝つなんて百年早いよ」
そうすると望海の機体が降下し燕返し、躱そうとコントローラーを動かすとその時には俺の機体は撃墜された。
「……そうかならば、百年分の学習を積む」
「は?」
「お前に勝つまでやればいい話だ」
「いや待って、怖い怖い怖い」
結果三時間以上、勝敗を挑んだが負けた。窓から夕焼けが射し込む。
「本当に諦めないなぁ」
「勝つまでだ」
「まぁ、裕朔に勝つの楽しいからいいんだけどね」
そこから更に数十分やっても敗北した。
……不本意だ。惜しい時はあったものの追撃される。
「満足した?」
「してない」
「だろうね」
「だが、次は必ず勝ってやる」
「はいはい」
望海は笑いながらゲーム機の電源を落とす。
「裕朔、楽しかった?」
「……あぁ」
「ならよかった。またやろうよ」
こうして帰宅した。だが久々にテレビゲームをしたが、たまにはいいかもしれない。




