第193話:相棒に最高の従魔具を
メインにするのはもちろん、氷竜の魔石だ。
魔石自体が巨大で、ピースと同じくらいの大きさを誇っている。
これを全て使うのはさすがに難しいため、楓は今回作成する従魔具用に魔石を割ることにした。
「あ! あの、セリシャ様? 魔石って割っても問題ありませんか?」
だが、魔石の効果が割ることでなくなってしまうのではないかと心配になり、確認を取る。
「大きい方が効果は当然だけど、大きいわ。だけれど、割ったからといって使えなくなるわけではないから安心してちょうだい」
「そうなんですね。ありがとうございます」
全く使えなくなるわけではないと分かり、ホッとしながら作業を再開する。
既に〈従魔具職人EX〉でピースに相応しい従魔具の作り方は把握できている。
とはいえ、今回の従魔具はピースの希望で王冠を作ることになっており、他の材料は必要なく、割った魔石だけで作ることが可能だ。
「それにしても、不思議ね」
ここでティアナが呟いた。
「何が不思議なんですか、ティアナさん?」
「ピースが使う魔法は水属性でしょ? それなのに、氷属性の魔石を選んだのが不思議だと思ったのよ」
ティアナに言われて、楓も確かにと疑問が浮かんだ。
「……ねえ、ピース? どうして氷属性の魔石を選んだの?」
疑問を解消するため、楓は氷竜の魔石を選んだピースに直接聞いてみることにした。
「キキュキュキキ、キュキュキキュキュン!(水を氷にできたら、役に立つかなって!)」
ピースなりに自分の魔法属性を考えて、より発展させることができるだろう材料を選んだのだと説明してくれた。
「そういうことらしいです」
ピースの言葉をティアナたちに説明すると、彼女も納得顔で頷いた。
「……レクシアも、そんなことができたりするのかしら?」
するとティアナの思考は従魔具作りではなく、自らの従魔であるレクシアのことでいっぱいになっていく。
楓は楓で、ピースの思考を聞くことができたので、気持ちよく従魔具作成に移ることができた。
「それじゃあ作るよ、ピース!」
「キュン!(うん!)」
まずは氷竜の魔石を両手でしっかりと握り、四分の一の大きさに割る。
スキルのおかげできれいな切断面を残して割ることに成功する。
大きい方は魔法鞄に入れておき、小さい魔石で作業を行う。
イメージは既にできている。
青白い魔石で作られる、透明度の高い、光を浴びるとキラキラと輝きを放つ王冠を作るのだ。
(ここをこうして、そしてこっちをとんがらせて、そして……)
頭の中でイメージを呟きながら、目の前の魔石の形を整えていく。
その様子を見つめているピースも、完成していく王冠の従魔具から目を離せないでいる。
「……全く。本当に立派になったわね」
従魔具作成に集中している楓の姿を見て、セリシャが感慨深くそう呟く。
「どうしたんですか、セリシャ様?」
そこへティアナが声をかけた。
「従魔具作りも、材料の保管も、もう私は必要ないのではないかと思ってね」
「そうですか? 楓はしっかりしているように見えて、どこか抜けている部分もありますし、まだまだセリシャ様の助けが必要だと思いますけど?」
セリシャの言葉に、ティアナは笑いながら答えた。
「俺もそう思うな」
「あら、ヴィオンも?」
「話は聞いたからな。まだこっちに来て日も浅いんだし、俺たちも常識過ぎて知っているだろうと、勝手に思っていることがあるかもしれない」
「……確かに、そういう部分でカエデさんが分からないことはあるでしょうね」
作業に集中している楓は、セリシャたちの会話が耳に入っていない。
「……うふふ。なんだか、まだまだ頑張れそうだわ」
「セリシャ様には私たちもまだまだ甘えさせてくださいね!」
「俺も入っているのか?」
「あら、嫌なの?」
「む、嫌ではないですが……」
楓が従魔具作成をしている時、最初の頃は失敗がないかと作業から目を離すことができなかった。
だが今は、従魔具作成を安心して見ることができており、こうして雑談に興じる余裕もできている。
楓の成長を実感し、そしてこれからも支えていこうと改めて心に誓う。
「……よし! できたああああっ!!」
「キュッキー!(やったー!)」
すると楓は、手際よくピースの新しい従魔具を完成させた。




