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異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜  作者: 渡琉兎


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第175話:情報共有

「戻ったか、レイスよ」


 陛下であるエルデクスは、前置きを省いてレイスに声を掛けた。


「はい、父上。ありがたいことに、カエデ様、スズネ様、アリス様、そして冒険者のヴィオン、ティアナも手を貸してくれることになりました」


 公式な場での会話だ。

 レイスは王族という立場から、ヴィオンとティアナだけは呼び捨てをする。

 それが当然だと理解している二人は特に気にすることなく、エルデクスに対して頭を下げた。


「カエデたちも、感謝するぞ」

「そ、そんな、陛下! 私に何ができるかは分かりませんが、全力を尽くしたいと思います!」


 エルデクスからの言葉に驚きながら、楓は返事をしつつ頭を下げた。


「して、レイスよ。話はどこまで聞いている?」

「兄上がいなくなったこと。そして、ミチナガ様もいなくなってしまったと……」

「うむ。そして、その背後にいるのがおそらくは、エレーナ・ラカーシャだ」


 エレーナが裏で暗躍していると、エルデクスも口にした。

 それはつまり、フォルブラウン王国がラカーシャ王国を敵とみなした、ということでもある。

 この事実に楓はゴクリと唾を呑みこみ、小さく息を吐く。


「ミチナガとエレーナは既に王都を発っている。だが、アッシュは違うだろう。ケイルも含めて捜し出せれば何か分かるはずだが、如何せん情報が少なすぎる」


 王城でも既に騎士や兵士、動かせる人員を総動員してアッシュとケイルの行方を追っているが、手掛かりは一切見つかっていない。

 凛とした表情を浮かべているエルデクスではあるが、皇太子であり、実の子供であるアッシュが行方不明だからか、声に疲れが感じられる。


「カエデ様たちの従魔たちでしか入れない場所や、匂いを追って捜索したいと思います」

「任せるね、ピース!」

「キュッキュキュ!」

「匂いはレクシアに任せてちょうだい!」

「コンコン!」

「ならば、俺とライゴウは許可さえあれば空から地上の出入りを見張っておけますが、どうでしょうか?」

「頼む」


 レイスの言葉に楓たちも声を上げる。

 ピース、レクシアがやる気の声で鳴き、ヴィオンの提案にエルデクスも許可を出す。

 本来であれば謁見の間からの退場も厳かな雰囲気で行われるが、その全てが省略された。


「ねえ、カエデ。レクシアに、匂いを追うことができる従魔具って作れないかしら?」


 退場するため歩きながら、ティアナからそんな声を掛けられた。


「匂いを追うための従魔具、ですか?」

「そうよ。今だけの従魔具になっちゃうけど、それがあれば手掛かりを掴める可能性が高くなるでしょう?」

「確かにその通りですね」


 思案顔で頷いた楓は、すぐに〈従魔具職人EX〉を発動させてみる。


「……作れそうです」

「本当ですか、カエデ様!」


 楓の答えを聞いて声を上げたのは、レイスだった。


「あ、はい。ティアナさんの魔法鞄に入っている材料だけで大丈夫みたいです」


 そう口にした楓ではあるが、材料に関しては〈従魔具職人EX〉が手元にある材料で、最善の従魔具を提案しているだけに過ぎない。

 もっと質の良い材料があれば、より性能の高い匂いを追うための従魔具を作ることも可能だ。


「……早速作ってみましょう、ティアナさん」


 とはいえ、それは楓からレイスに提案するのは気が引ける。

 なんせここは王城だ。

 貴重な素材が山ほどあるだろうし、それを匂いを追うためだけの従魔具に使いたいとお願いするのも、失礼だろうと考えたのだ。


「待ってください、カエデ様」


 しかしここで声を上げたのは、レイスだった。


「その従魔具、材料を良くすれば、より良い従魔具にできますか?」

「えっと、できるとは思いますが……」

「少々お待ちください!」


 楓の答えを聞いたレイスは踵を返すと、一人で謁見の間に入ってしまった。

 それから一分後、彼はすぐに謁見の間から飛び出してきた。


「父上からの許可を得ました! すぐに宝物庫へ向かいましょう!」

「え? ええええぇぇっ!! い、いいんですか!?」


 まさかこうも簡単に許可が下りるとは思わなかった楓は、驚きの声を上げた。

 だが、次のレイスの言葉を聞けば、エルデクスが許可を出したことにも納得できる。


「実の息子が行方不明なんです。父上も、どれだけ貴重な材料を使っても構わないと、仰ってくれました」


 実の息子という言葉に、楓は心がキュッと締め付けられる。

 自分は両親から愛されていただろうかと、すっかり忘れていた感情を思い出してしまったからだ。


(……ううん。私にはおじいちゃんとおばあちゃんがいてくれたわ。それに、今はそんなことを考えている場合じゃない)


 自分の感情に蓋をして、楓は目の前のことに集中しようと心を決める。


「……大丈夫ですか、カエデ様?」

「大丈夫です、レイス様。それでは、私たちを宝物庫へ案内していただけますか?」

「もちろんです!」

「俺はライゴウと共に空から見張っておくとしよう」

「でしたら私がお供いたします。陛下からの許可証も預かっておりますので」


 ここで楓たちは、ヴィオンとミリアと別れて行動することにした。


(アッシュ様。絶対に、見つけ出してみせますからね!)


 そんな想いを胸に、楓たちは早足で宝物庫へと向かった。

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