第172話:大集合
そして、翌日。
王都へ向かうため、楓たちはバルフェムの北の門に集まっていた。
「ミッチーの奴、ぶっ飛ばしてやるんだからね!」
「今回ばかりは私も怒っていますし、一発殴らせてください!」
アリスと鈴音は宿から北の門までの間、ずっとこの調子で文句を口にしている。
とはいえ、二人が怒るのも無理はなく、楓は何も言わずにただ見守っていた。
「しかし、前回王都からこっちへ来た時の同じメンバーが集まっちまったね」
楓の横にはティアナとヴィオンもいる。
そのティアナが、今回のメンバーを見て笑いながらそう口にした。
「確かにその通りですね」
「いないのは、ケイル様だけか」
「あー、あの感じの悪かった護衛騎士様だろう? あれは数に入れなくていいでしょう?」
「ちょっと、ティアナさん?」
そんな話をしながら歩いていると、北の門にレイスとミリアの姿が見えてきた。
「お待たせいたしました。レイス様、ミリア様」
「僕たちも先ほどついたところです。カエデ様、皆さん」
レイスはそう口にしながら、ニコリと笑う。
その笑みは昨晩の作られたものではなく、自然の笑みだ。
「アリス様とスズネ様も来てくれたのですね。ありがとうございます」
「あーしたちは、あーしたちの目的があるだけだしー」
「そういうことですから、お気遣いなく」
「それでも、皆様がいてくれると僕としても心強いです」
そう口にしたレイスは、その視線を楓へ向ける。
「カエデ様。実は昨晩、宿に戻ってから自分なりに色々と考えてみたのです」
「何をですか?」
「カエデ様の言葉をです」
「私の言葉を、ですか?」
何か言っただろうかと昨日のやり取りを思い出そうとした楓だったが、特に気になる発言はなかったはずだと、首を傾げてしまう。
「カエデ様は王都へ向かうと宣言してくれた時、ピースなら狭い場所でも動くことができる、と仰ってくれましたよね?」
「はい、言いました」
「それ、クロウでも問題なく動けると思ったんです」
「……あ! た、確かにそうですね!」
「ギャギギュゲッギ!(なんてこった!)」
これでは一緒に行く意味がないと、楓は慌ててしまう。
「でも……そうだと分かってからも、僕はカエデ様や皆さんと一緒に王都へ向かいたいと思ってしまいました」
しかしレイスは、楓たちと共にいたいと口にしてくれた。
「これは、僕の甘えなのかもしれません。我がままなのかもしれません。ですが……どうか皆さん、僕の我がままについてきてくれないでしょうか?」
楓たちはみんな、レイスと共に王都へ向かうためにこの場へ集まっている。
みんなの答えが変わることなどないだろう。
しかしレイスは、あえて自分の想いを口にすることで、楓たちに誠意を見せようと考えたのだ。
「もちろんです、レイス様」
「キュキュン!(任せて!)」
楓は即答し、ピースも昨日と同じように小さな胸をドンッと叩いた。
「絶対にミッチーをぶっ飛ばしてやるから! レイニャンがダメって言っても行くしー!」
「必ず見つけましょうね、レイス様!」
アリスと鈴音は自分たちの目的のためにと改めて口にした。
「私はカエデのために行くだけだからね。王家の問題は、王家で解決してちょうだいよ?」
「俺は手を貸してもいいと思っている。レイス様は信頼に足る方だからな」
「何よ、ヴィオン? 点数稼ぎ?」
「そういうわけじゃないがな」
ティアナとヴィオンもそれぞれの理由を口にし、ついていくことを伝えた。
「皆さん……本当に、ありがとうございます」
レイスがお礼を伝えながら頭を下げると、その後ろでミリアも同じように頭を下げた。
「それじゃあ、いきましょう!」
「はい!」
「キュッキュキュー!(出発だー!)」
最後にレイスがそう口にすると、楓たちはバルフェムを発ち、王都へと向かった。




