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異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜  作者: 渡琉兎


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171/195

第171話:王都騒乱?

「まずは中に入りな、ミリア」


 従魔具店の入り口近くで声を上げたミリアに対して、ティアナは冷静にそう伝えた。

 事は国を脅かす事態かもしれないと判断し、中でのやり取りを提案したのだ。


「はっ! ……そうだな、ティアナ」


 ティアナの言葉に冷静さを取り戻したミリアはハッとした表情を浮かべると、すぐに中に入る。

 ヴィオンは一度外に不審な気配がないかを探ってから、扉を閉めて鍵を掛けた。


「それで、ミリア? いったい何があったんだい?」


 ヴィオンが頷いたのを見たレイスは、すぐにミリアへ声を掛けた。


「レイス様がバルフェムへ向かわれてから今日までの間で、皇太子殿下は何度もエレーナ様との外交を行われておりました。……異常なほどに、です」


 ミリアが口にした「異常」という言葉に、レイスは思案顔を浮かべる。


「それってつまり、前にティアナさんが話していた魅了のスキルがあるかもしれない、ってことですか?」

「でもさ、カエデ。それは結局、なかったじゃないのよ。スズネが完全回復(パーフェクトヒール)を使っても、ミチナガには効果がなかったわけだしね」


 楓が思いついたことを口にしたところで、ティアナが肩を竦めながら答えた。


「……いいえ、ティアナさん。そうとも限りませんよ?」


 だが、レイスの考えは違っていた。


「どういうことですか?」

「スキル〈魅了〉は、使用者の熟練度によっては使用の可否を細かく切り替えられると聞いたことがあります。おそらくですが、スズネ様が完全回復を使われた時には使用されていなかった、というだけかもしれません」

「え? で、でもそれだと、どうしようもできないんじゃ?」


 レイスの説明を聞いた楓は、心配そうに口を開いた。


「そのエレーナ様について、もう一つご報告がございます」


 するとここでミリアがそう口にしたため、全員の視線が彼女に集まる。


「皇太子殿下の要望でエレーナ様は城下に宿を借りて滞在していたようなのですが、時同じくして姿を消したそうなのです」

「なんだって?」

「エレーナ様の護衛も同様に姿を消していることから、こちらは単純に国元へ帰ったと判断されたようなのですが、どうにもタイミングが良すぎるのではないかと……」

「確かに、その通りだね。父上たちはどのような対応を?」


 ミリアが気づくほどのことだ。国を預かるエルデクスが気づかないはずはない。

 そう判断してレイスは聞いてみたのだが、ミリアの表情は曇ったままで答える。


「皇太子殿下が姿をくらましたこともあり、エレーナ様への対応は後手に回っている状況です。おそらくですが、エレーナ様はもう追えないのではないかと」

「そうなんだね。……分かった、ありがとう」


 大急ぎでバルフェムまで来てくれたミリアに労いの言葉を掛けたレイスは、小さく息を吐き出すと、楓へ向き直る。


「カエデ様。クロウの従魔具を作っていただき、誠にありがとうございました」

「レイス様……」

「僕たちはすぐにバルフェムを発ち、王城へ戻ろうと思います」


 微笑みを浮かべているレイスだったが、その笑みは作られたものだ。

 そのことに楓だけではなく、ティアナとヴィオンも気づいていた。


「ですが、ミリア様は? こちらに到着されたばかりですよ?」

「ご心配いただきありがとうございます、カエデ様。ですが、これでも私は鍛えておりますので、お気になさらず」

「そんな……」


 ミリアもまた、楓を心配させないようにと作り笑いを浮かべた。

 王城で何が起きているのか、何が起きようとしているのか、楓には正直なところ、さっぱり分からない。

 自分から王城を飛び出したのだから、何が起ころうとも気にしなければいいだけの話なのだ。

 この話がアッシュや道長だけの話で終わっていれば、楓もレイスたちを見送ることができたかもしれない。

 しかし今は、自分に優しくしてくれ、今もこうして気にかけてくれるレイスとミリアが関わってしまっている。

 この状況で見て見ぬふりなど、楓にできるはずがなかった。


「レイス様! 私もいきます!」

「いけません、カエデ様」

「私にも何かできることがあるはずです! もしも私で役に立たなくても、ピースがいます! 彼なら狭い場所でも動くことができますし、きっと役に立ってくれます!」

「キュキュン!(任せて!)」


 楓の言葉にピースが彼女の肩の上でドンッと小さな胸を叩く。


「カエデがいくなら、私もいこうかしらね」

「ならば俺もついていこう」

「ティアナさん、ヴィオンさんまで……」


 楓たちの想いを受けて、レイスはグッと涙が溢れそうになるのを堪える。

 そして、王族として気丈に振る舞いながら、小さく息を吐いてから口を開く。


「ありがとうございます。それでは、一緒に来ていただけますか?」

「はい!」

「アリスやスズネにも声を掛けよう。二人にとってミチナガってのは、知り合いなんだろう?」

「というわけでだ、レイス様。二人に話をするため、今日まではバルフェムで休んでほしい。ミリア様のためにもな」


 最後にヴィオンがそう提案すると、レイスは苦笑を浮かべながらミリアを見る。


「そうですね。どうやら僕は、焦っていたようです」

「レイス様……」

「今日は休もう、ミリア。そして、明日からまた、僕のために働いてほしい」

「ありがとうございます、レイス様」


 こうしてレイスたちは明日までバルフェムに滞在することとなり、楓たちは慌ただしい夜を迎えることになったのだった。

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