第169話:完成品のお披露目
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翌日の営業終わり。
楓は昨晩、ヴィオンにレイスへの伝言をお願いしていた。
その内容は当然、従魔具が完成した、というものだ。
とはいえ、多くの客が出入りする中へ呼びつけるのもどうかと思い、追加で昨日と同じ時間に来てほしい、という内容も付け加えている。
その間、楓はいつもの作業に没頭しており、既製品作りはようやく在庫を抱えられるくらいに落ち着き始めた。
「本日もお疲れ様でした」
「「「お疲れ様でした」」」
楓がそう口にすると、オルダナ、リディ、ミリーも笑顔で返してくれた。
「さあ、二人とも。俺たちはさっさと帰るぞ」
「今日もよろしくお願いします、オルダナさん」
「えぇ~? 俺も王子様見たいんだけど~?」
オルダナは毎日のようにリディとミリーを送ってくれている。
以前に楓が誘拐されたこともあり、遠慮がちなミリーもオルダナの厚意を素直に受け取っている。
リディはオルダナと一緒にいられるのが嬉しいのか、最初から遠慮などしていなかったのだが、今回は少しだけごねていた。
「ダメだ、リディ」
「どうしてだよ、オルダナさん!」
「……王族だけじゃねぇ。権力者にかかわって、粗相でもしてみろ? ……何をされるか分かったもんじゃねえぞ?」
やや声音を低くしてそう口にしたオルダナ。
本心ではレイスがそのような人間ではないことを、オルダナも分かっている。
しかし、他の権力者がそうであるとは限らないし、優しい権力者の方が少ないと彼は考えている。
故に、遠慮なしにグイグイと前に出て行ってしまうリディには、少しばかり脅しも含めて伝える必要があるとオルダナは考えていた。
「……そ、そうなのか?」
「あぁ。だから俺たちはなるべく権力者にはかかわらない方がいいんだ」
そして、リディは思い込みが強い部分はあれど、基本的には素直な良い子でもある。
オルダナの言葉に唾をごくりと飲み込みながら、ドキドキした様子で確認を取った。
「……姉ちゃん、気をつけるんだぞ!」
「え? 私?」
「姉ちゃんも、何されるか分からねえんだからな! ティアナの姉ちゃん、しっかり守ってくれよ!」
「任せな!」
リディは素直で良い子だ。そして、自分のことと同じように、楓のことも心配してくれる。
そんなリディの言葉を受けて、ティアナは力こぶを作りながら頼もしい返事をしていた。
「そうと分かれば、さっさと行くぞー」
「はい、オルダナさん!」
「あ! ま、待ってくれよ! オルダナさん、ミリー!」
それからオルダナ、ミリー、リディが従魔具店をあとにすると、楓はティアナへ向き直る。
「……なんだか、レイス様が悪者になっちゃいましたね」
「権力者なんて、そんなもんさ。まあ、レイス様が王都へ戻ったら、誤解を解いてあげるのもいいかもしれないわね」
申し訳なさそうにしていた楓に対して、ティアナは笑いながらそう答えた。
――コンコンコン。
しばらくして、従魔具店の扉がノックされた。
念のためにティアナが窓から外を見てから、すぐに扉を開く。
「お待たせいたしました。カエデ様、ティアナさん」
やってきたのは、レイスとクロウ、そしてヴィオンだ。
「こちらから呼びつけたんですから、お気になさらず」
「ありがとうございます」
「フシュシュフシュッシュー!」
レイスが微笑みながらお礼を伝えると、すぐにクロウが興奮したように鳴いた。
「クロウ、昨日からずっと従魔具を楽しみにしていたみたいなんだ」
「そうなんだね」
「フシュシュー!」
ルンルン気分で体を揺らしているクロウを見て、楓は嬉しくなってしまう。
「それじゃあ、お披露目といきましょうか! 作業部屋に準備しているので、どうぞ奥へ入ってください」
楓が昨日と同じ部屋へ案内すると、レイスとクロウが歩き出す。
ティアナとヴィオンもついていくが、完成した従魔具に使われた材料を考えると、いったいいくらの価値がある従魔具なんだろうと思わずにはいられない。
「レイス様、クロウ。これが、私の全力を込めた、クロウへの従魔具です!」
こうして披露された、作業台に広げられた従魔具を見たレイスとクロウ。
その瞳はあまりの美しさに、しばらくの間、釘付けになっていた。




