表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
73/252

シンクシ 24

 ◇ ◇ ◇



 料理も、洗濯も、掃除も、何もしなくてもいいなんて、暇すぎて死ぬ。

 もちろん、何もしなくていいということはなくて、事件を、一応、解決した後も、姫様方の護衛という最重要任務が残っているわけだけれど。

 姫様方がお持ちになられた着替えなんかは、お城に戻ってから洗濯するし、料理は、そもそも僕たちはこの宿の調理場に入らせてもらうなどということは出来ない。

 辛うじて掃除くらいならば出来るかもしれないけれど、朝食を前に埃を立てるわけにもいかない。

 昨日までであれば、件の人攫いについて話を整理するとか、聞き込みに出かけるとか、することはあったのだけれど、解決してしまった以上――こういうと解決したことが悪く聞こえるかもしれないけれど、それはまったくもって良いことだ――それもない。

 僕も、本でも持ってくればよかったかな。でも、お城の図書室のものを持ち出すわけにはゆかないしなあ。もちろん、自分でなんて持ってはいない。

 姫様方はベッドの上で、何やらカードを並べたりなさって、遊んでいらっしゃる。

 視線を手元まで戻してくると、ふと、机の上に、昨夜の夕食の献立の書かれた紙が残っているのが目に留まった。

 僕はそれを手元に引き寄せると、収納していたノートを1冊取り出して、メモを取ることにした。

 

「仕事熱心ね」


 手元の本から顔を上げられたシャラさんが微笑んでいらっしゃる。

 

「熱心といいますか……別にそのような真面目な意識を持ってやっているわけではありません。なんとなく、手持ちぶさただったものですから」


 メニューとしてこうして残されているということは、別に門外不出のレシピだということもないのだろう。

 姫様方もおいしそうに食べていらしたし、お城で試作してみて上手くいけばお出ししてみても良いかもしれない。


「あ、でも、もしかしたら、このシンクシでしか手に入れることの出来ない、特産的な何かもあるのでしょうか?」


「そうね。パッと見だと、魚を使った料理が多いみたいね。ウェントスは決して港や河川から近いわけではないし。ああ、最初にアルフリードと会った河川は、あの辺りはあまり捕れないのよ」


 つまり、魚の鮮度という部分に関しては、王都よりもはっきり勝っているわけだ。

 捕った場所から移動する関係上、どうしても鮮度は落ちるからなあ。

 もっとも、僕なら、収納の魔法を使えば、鮮度を落とすことなく、お城の調理場まで運ぶことが出来る。


「へえ。そうなんですね。出来ることなら、市場なんかも見て回りたかったですね」


 流石に、姫様方をお連れしながら魚釣り、あるいは魚捕りはないだろう。


「そうね。アルフリードには収納の魔法があるのだし、鮮度を保ったまま、今日の夕食に、でなければ、明日の朝食にも考えられるかもしれないわね」


 僕が収納の魔法を最も運用しているのは、お城の買い出し当番の順番の時である、というのが、僕の調べたところによる結果だ。


「私もしっかり味を覚えておくわね」


「その時は味見もお願いします」


 僕がシャラさんと献立を眺めながら、ああだこうだと妄想を膨らませていると、何故か、ベッドの方から、シャルリア様がじっとこちらを見つめていらした。

 微笑んでみると、何故か姫様方の輪の方へとお顔を戻してしまわれて、一体何だったのだろうと思ったけれど、必要な事ならばシャルリア様はおっしゃってくださるだろうし、多分、重要な事ではなかったのだろう。


「アルフリードも自信を持って良いのよ」


「え?」


 食事を始めてすぐ、シャラさんがそんなことをおっしゃられた。


「アルフリードがお城に採用されるかの試験をしたとき、ウェトス長官は何もおっしゃらなかったでしょう? その前のあの塔の掃除のこともあるけれど、そんなに甘い、ううん、むしろ、他人には厳しい方だから、そのウェトス長官に何もおっしゃらなかったというのは、十分に誇っていい腕前だということよ」


 いまさら言うことでもないでしょ、とシャラさんは特に僕に対して、呆れているでもなく、何でもない調子でおっしゃられたけれど、何だか僕は嬉しくて、つい頬が緩みそうになっていた。




 朝食を終えて、宿を後にした僕たちは、帰路につく前、シンクシの街中をあらためて見て回った。

 来た時には、状況が状況だったため、ほとんど観光などせずにいたため――僕個人としては、色々と街中を探索するうえで、もちろんじっくりとではないけれど、見て回ってはいた――姫様方は、神殿から階段状に流れ落ちてくる水に駆け寄って掬われたり、割とはしゃいでいらっしゃるご様子だった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ