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あまめの卵焼き

 昼休み。チャイムが鳴る。玲司が弁当を取り出そうとすると、

「玲司」

 由眼が当然のように話しかけてくる。

「なんだ」

「お腹が空いたわ」

「そうか」

「お腹が空いたの」

「聞こえてる」

 由眼は黙る。玲司も黙る。数秒後。

「……」

「……」

「……」

「まさかとは思うけど」

「なに?」

「俺に昼飯を用意しろって言ってる?」

 由眼は当然のように頷いた。

「付き人だもの」

「帰れ」

「というか弁当ないのかよ」

「あるわ」

「あるのかよ」

「でも開けられない」

 そう言って弁当箱を差し出してくる。玲司は受け取った。輪ゴムを外し、蓋を開ける。

「はい」

「ありがとう」

 由眼は箸を持つ。そして。

「……」

 箸が止まる。

「どうした?」

「どこに何が入っているの?」

「あ」

 盲目だった。

「右上に卵焼き」

「うん」

「左に唐揚げ」

「うん」

「下にブロッコリー」

「ブロッコリーはいらない」

「好き嫌いすんな」

 そんなやり取りをしていると、周囲の視線が集まる。

「柊って、毎日諏訪さんの世話するのか?」

「大変そうだな」

 クラスメイト達が面白そうに眺めていた。その時だった。由眼が少しだけこちらへ身を寄せる。

「……玲司」

小さな声だった。

「ん?」

「もっと自然にしなさい」

「は?」

「私、実際はそこまで困ってないから」

 意味が分からない。昨日の話を思い出す。魔法で周囲を認識している。

「もしかして、お前……」

 由眼は表情を変えないまま続ける。

「見えていると言ってもいい」

 玲司は思わず固まる。すると由眼は、周囲に聞こえない程度の声で続けた。

「でも学校では隠しているの」

「なんでだよ」

「面倒だから」

 絶対それだけじゃない。

「それに」

 由眼は箸を動かしながら言った。

「手の内を全部見せるほど私は馬鹿じゃないわ」

 その言葉だけ妙に重かった。さすが魔法家系序列一位。伊達ではないらしい。

「だから」

 由眼が小さく笑う。

「ちゃんと介護して頂戴」

「結局そこかよ」

 由眼が唐揚げを食べる。数秒後。

「おいしい」

 少しだけ嬉しそうだった。玲司は気づく。

「その弁当作ったの誰だ?」

「父よ」

「諏訪家当主!?」

「料理が趣味だから」

「情報量が多いんだよ」

 そんなやり取りをしていると、クラスメイト達がざわつく。

「なぁ」

「ん?」

「柊ってさ」

「うん」

「完全に彼氏じゃね?」

「違うからな」

玲司が即否定する。

「誰が彼女よ」

由眼も即否定する。

クラス全員が思った。

(否定するタイミングだけ息ぴったりだな……)

今回はほんわかぽく掛け合いだけをかきました!

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― 新着の感想 ―
(*꒪ዐ꒪)オォォ…付き人以上だろ
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