表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/32

裏切るしかない漢

ちゅんちゅんと雀が鳴く頃。俺は目を覚ました。体を起こして周りを見る。ひまりと熱田はまだ寝ていた。みことの布団だけは綺麗に整頓されている。流石だな。そう思った瞬間。

「起きましたか。」

後ろから声がした。

「うおっ!?」

思わず飛び上がる。振り返ると、みことが立っていた。

「びっくりさせるなよ……」

胸を押さえながら言う。

「すみません。」

みことは申し訳なさそうに言いながらも、にこりと微笑んだ。

「お二人はお寝坊さんですね。」

そう言う姿は、久しぶりに聖女らしかった。最近は武力行使だの逃亡だの物騒な話ばかりだったから、余計にそう感じる。

「そうだな。」

俺も苦笑した。そんな話をしていると。

「うるさいなぁ……」

熱田が目を擦りながら起き上がった。寝癖が酷い。魔法家系二位も朝は普通の人間らしい。

「おはようございます。」

みことが挨拶する。

「おはよ。」

熱田は眠そうに答えた。その時だった。ドンドンドン!!二階から凄まじい音が響く。

「あっ。」

全員が察した。次の瞬間。バンッ!勢いよく扉が開いた。

「ちょっとー!!」

ひまりだった。

「なんで起こしてくれないのー!!」

「うるさい。」

熱田が即座にツッコむ。

「だってもう朝じゃん!」

「朝だから起こしてないんだろ。」

「むぅぅぅ!!」

ひまりは怒りながらも洗面所へ走っていった。その姿を見ていると少しだけ気が楽になる。こんな状況なのに、いつも通りのやり取りができることが不思議だった。それから身支度を済ませる。顔を洗い。歯を磨き。朝食を食べる。最後になるかもしれない朝食だった。だからだろうか。誰も無駄話をしなかった。食事が終わると、みことが立ち上がる。

「では、最終確認をします。」

空気が引き締まった。

「ノートを公開し、由眼さんの無実を証明する。」

「それが今回の目的です。」

全員が頷く。

「良いですね?」

「うん。」

「了解。」

「おう。」

返事は短かった。覚悟は決まっている。みことは小さく微笑んだ。

「では、行きましょう。」

そうして四人は熱田家を後にした。家の前には黒い車が停まっていた。熱田がドアを開ける。

「この車は自動運転。」

「へぇ。」

「目的地も入力済み。」

「未来かよ。」

思わず呟く。

「魔法家系だから。」

「関係あるか?」

そんな会話をしていると、みことが彰人を見る。

「熱田さん。」

「なに?」

「狙撃地点にはどうやって行くんですか?」

彰人は当然のように答えた。

「別の車。」

「なるほど。」

「流石にレールガン抱えて同乗はできない。」

それもそうだ。俺たちは車に乗り込む。そしてドアが閉まった。その時だった。熱田が少しだけ真面目な顔になる。

「幸運を祈る。」

一瞬、沈黙。そして。

「かっこつけてるー!」

ひまりが即座に茶化した。

「映画の主人公みたい!」

「うるさい。」

彰人は顔を逸らす。だが次の言葉は真剣だった。

「本当に祈ってるんだ。」

その声に。誰も何も言えなかった。熱田もまた、由眼を助けたいのだ。その気持ちは皆同じだった。彰人は静かに一歩下がる。

「じゃあな。」

ドアが閉まる。その瞬間。ウィーン。車が動き出した。自動運転らしい。窓の外で熱田の姿が小さくなっていく。車は都心へ向かう。決戦の場所へ向かう。怖い。帰りたい。そんなことは全員思っている。俺だってそうだ。逃げられるなら逃げたい。普通の日常に戻りたい。だけど。由眼が待っている。あいつは今も一人で戦っている。だから。俺たちは前を向く。自分のために。仲間のために。そして。諏訪由眼を救うために。本社ビルへ向けて車は走る。進むにつれて人通りは少なくなっていった。最初は普通の街並みだった。だが中心部へ近付くにつれ、歩行者の姿が消えていく。まるで避難でも済んでいるかのようだった。誰もいない。静かすぎる。

そして――

キィッ。車が止まった。

「着きました。」

みことが静かに言う。誰も返事をしない。全員分かっているからだ。ここから先が本番だと。俺は腰の真剣を握る。ひまりは杖を抱き締める。みことも静かに祈るように目を閉じた。そして。

ガチャ。扉を開ける。外へ降り立つ。目の前には巨大な広場が広がっていた。中央には本社ビル。空へ突き刺さるような高層建築。だが。人影はない。警備員や警察すらもいない。一般人もいない。あまりにも不自然だった。

「なんか嫌な予感する……」

ひまりが小さく呟く。俺も同感だった。まるで。俺たちが来ることを知っていて。ここへ誘い込んだような。そんな違和感。その時だった。

カツ――

カツ――

静寂に靴音が響く。全員の視線が集まる。本社ビルのガラス扉。そこから一人の男が現れた。ゆっくりと。まるで散歩でもするかのように歩いてくる。

その靴は、磨きあげられた白い革靴

その服は白を基調とした高貴な制服。

その髪は風になびく綺麗な金髪。

その剣は聖なる力を宿す。

その姿を見た瞬間。誰も言葉を発しなかった。いや。発せなかった。分かっていたからだ。国が相手。ならば。必ず立ちはだかる存在

その男は世間において、こう呼ばれている


″剣聖″



とうとう最後もちかくなってきやしたねー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
恒一、、、、(´∩`。)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ