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逃走の先は

決心を固めた、その時だった。警察官が腰のホルスターに手を伸ばす。

「……は?」

思わず声が漏れた。次の瞬間。

パンッ!!

パンッ!!

銃声が響いた。警察が発砲したのだ。しかも相手は俺たち。俺は以前テレビで見たことがある。警察が銃を使うには幾つもの手順が必要だと。警告。威嚇。確認。だが今目の前で起きたのは違う。そんなものは一切なかった。ただ真っ直ぐ。俺の頭を狙って撃ってきた。そんなことが許されるのか。混乱する俺を、みことの叫び声が引き戻した。

「玲司さん!!」

今まで聞いたことがないほど大きな声。

「脱出します!!」

みことは即座に状況を判断していた。

「ひまりから離れないでください!!早く!!」

そうだ。今は考えている場合じゃない。生き残らなければ。だがここは二階だ。飛び降りれば無事では済まない。俺が躊躇していると、

「ひまり!」

みことはノートを押し付けた。

「これを持って!!絶対落とさないで!!」

「う、うんっ!!」

ひまりが涙目で頷く。その直後。みことが俺とひまりの背中を押した。

「行きます!!」

景色が反転する。窓の外へ投げ出された。

「うわあああああ!!」

地面が迫る。激突。全身に激痛が走った。骨が折れた感覚。肺から空気が抜ける。だが次の瞬間。暖かな光が身体を包む。みことの治癒魔法だった。折れた骨が戻る。裂けた筋肉が繋がる。痛みが一瞬で消えていった。

「走ってください!!」

みことも着地して叫ぶ。俺たちは全力で駆け出した。ひまりの額には汗が滲んでいる。今の彼女は、隠密結界。防御結界。二つを同時に維持している。相当な負担のはずだ。それでも足を止めない。後ろからは警察の怒号が聞こえる。まずい。このノートを世間に出すなら都心へ向かわなければならない。マスコミ。テレビ局。新聞社。どこでもいい。だが、その前に捕まる。どう考えても無理だ。俺たちは高校生三人。相手は国家権力。逃げ切れるはずがない。そう思った、その時だった。

――キィン。

空気が震えた。何かが高速で飛翔する音。俺の左側。遠くの建物の屋上が一瞬だけ光った気がした。

次の瞬間。

ドォォォンッ!!

凄まじい轟音。追っていた警察車両の前方で爆発が起きた。アスファルトが吹き飛ぶ。警察たちが慌てて身を伏せる。俺たちは思わず足を止めた。

「な、なんだ……?」

誰が撃った。どこから撃った。何も分からない。だが一つだけ分かる。あれを撃った相手は。間違いなく化け物だ。みことも警戒するように周囲を見渡す。ひまりは怯えながらノートを抱きしめていた。

「今のうちに!」

みことが叫ぶ。

「隠れましょう!!」

俺たちは近くの空き家へ飛び込んだ。息を殺す。心臓の音だけがやけに大きく聞こえる。外ではまだサイレンが鳴り響いていた。だがそれ以上に。俺は別のことが気になっていた。

――今の一撃は、誰だそう考えていると、ひまりが不安そうに口を開いた。

「これからどうしよう……」

今にも泣き出しそうな声だった。みことが冷静に答える。

「とりあえず、このノートを世間に公開することです。」

ノートを握りしめながら続けた。

「マスコミでも、報道機関でも構いません。ニュースとして取り上げてもらい、真実を世間に晒す。それが今の私たちの目的です。」

俺は重いため息を吐いた。

「言うのは簡単だけどな。」

窓の外を見ながら話す。

「都心まで行かなきゃならない。しかも警察に追われながらだ。」

現実的ではなかった。そんな話をしていると、みことが何かを思いついたようにひまりを見る。

「ひまり。」

「なに?」

「空は飛べましたっけ?」

ひまりが目を丸くする。

「無理だよ!?」

即答だった。

「さすがに飛べないよ!」

「ですよね……」

みことも少しだけ残念そうだった。移動すれば見つかる。かといって留まっていても状況は変わらない。先ほど助けてくれた謎の協力者の正体さえ分かれば――。俺たちは悩んだ末、とりあえず俺の家へ向かうことにした。そこで今後の方針を考える。それしかなかった。だが。家の近くまで来た時だった。

「……あれ。」

ひまりの顔が青ざめる。俺も気付いた。家の前に警察車両が何台も停まっている。制服警官の姿も見えた。完全に包囲されていた。

「終わった……」

思わず呟く。家にも帰れない。頼れる場所もない。もう行く当てなんて――。その時だった。

キィィィッ――。

タイヤが地面を擦る音。俺たちの目の前に黒塗りのボックスカーが急停止した。全員が身構える。まさか。警察か。そう思った瞬間。スライドドアが開いた。中から顔を出した人物を見て、俺たちは固まる。

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