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魔法の高み

あの事件から二週間が経った。いつも通り学校へ向かい、教室で修学旅行の説明を受けていた。

クラス中が浮かれた空気に包まれている。

「どこ行くんだろうなー」

「修学旅行までに彼女作んないと!」

そんな声が飛び交う。玲司も少しだけ楽しみにしていた。その時だった。校舎の外から大きな声が聞こえてくる。

「――やめろー!」

最初はただのデモかと思った。だが次第に言葉がはっきり聞こえてくる。

「情報の独占反対ー!」

「魔法の独占反対ー!」

「諏訪家は憲法違反だー!」

教室が静まり返った。学校の前で行われているのは。諏訪家への抗議デモだった。

「何だあれ……」

玲司が呟く。由眼は机に頬杖をついたまま答えた。

「迷惑ね。やめてほしいものだわ。」

しかし外の声は止まらない。

「諏訪家は一位という立場を利用して熱田家を陥れた!」

「諏訪家は禁忌魔法である時間魔法を研究している!」

教室がざわつく。時間魔法。それは禁忌魔法の一つ。もし使用や研究が発覚すれば、終身刑や死刑すらあり得る。由眼がそんなものを使うはずがない。そう思った。

すると由眼が静かに口を開く。

「仮に覚えていたとしても、バレるような馬鹿はしないわ。」

確かにそうだ。諏訪家は秘密の管理に関しては異常なほど徹底している。そんな簡単に証拠を残すとは思えない。玲司はそう考えていた。

だが。

事態は収まらなかった。学校前だけではない。警視庁前。都庁前。各地で同じデモが始まっていた。ニュースでも大きく取り上げられているらしい。玲司は不安そうに言った。

「止めないと、諏訪家の名前が……」

由眼は鼻で笑う。

「あんな頭のおかしい連中、誰が信じるのよ。」

だが。

結果として。世間は信じてしまった。デモは全国ニュースとなり、一躍話題となる。そして由眼は。良くない意味で有名人になった。

「時間犯罪者なんでしょ?」

「怖ーい。」

「やっぱり諏訪家って危険なんじゃない?」

下位の魔法家系から妬まれていたこともあり、噂は瞬く間に広がった。そしてある朝。いつも通り目を覚ます。いつも通り登校しようとした。

だが。由眼が言った。

「今日は休むわ。」

「家の仕事があるの。」

その声はいつも通りだった。だが。

どこか違った。玲司は妙な不安を覚える。もう会えなくなるんじゃないか。そんな馬鹿げた考えが頭をよぎった。本当は。

「俺も休む。」

そう言えばよかったのかもしれない。だが玲司は何も言えなかった。そのまま学校へ向かってしまった。学校へ着く。ひまりも来ていなかった。嫌な予感が強くなる。

「由眼、大丈夫なのか?」

恒一が心配そうに言う。するとみことが静かに答えた。

「白聖さん。」

「貴方が心配しなくても、由眼さんは大丈夫です。」

その言葉に玲司も少しだけ安心した。そうだ。あの諏訪由眼だ。簡単にどうにかなる人じゃない。そう思いたかった。授業が終わる。帰宅する。そして諏訪家の屋敷へ向かった。だが。門の前で足が止まった。黄色い規制線。関係者以外立入禁止。警察車両。大勢の捜査員。

「えっ……」

頭が真っ白になる。近くにいた警察官へ駆け寄った。

「何があったんですか!?」

しかし。

「お話できません。」

それしか返ってこない。玲司は何も分からないまま、自宅へ戻った。震える手でテレビをつける。そして。膝から崩れ落ちた。

「……嘘だろ。」

ニュースキャスターが淡々と伝えている。

本日未明。

諏訪家へ家宅捜索が行われた。その結果。禁忌魔法である時間停止に関する研究資料が発見された。

現在。

諏訪家当主・諏訪義隆。

次期当主・諏訪由眼。

両名に対し捜査が進められている。逮捕は時間の問題だと報じられていた。理解が追いつかない。頭が真っ白だった。由眼が。捕まる。諏訪家が終わる。もうあの屋敷へ帰れない。もういつもの日常には戻れない。その事実だけが胸を締め付ける。気づけば。涙が零れていた。止まらなかった。ただ。どうしてこんなことになったのか。それだけが分からなかった。

物的証拠が揃っていたこともあり、逮捕まではあっという間だった。そして裁判までの二か月間。俺と恒一とみこととひまりは、ほとんど会話をしなかった。会っても沈黙。誰も由眼の話をしない。いや、できなかった。後から聞いた話だと、ひまりはあの日、諏訪家の結界を解除するために学校を休んでいたらしい。辛かったに違いないだろう。そして裁判当日。俺たち四人は春日家に集まっていた。テレビの前。誰も口を開かない。時計の秒針だけが響いている。

カチッ。

カチッ。

カチッ。

その音がやけに大きく聞こえた。恒一は腕を組んだまま俯いている。みことは静かに祈りを捧げていた。ひまりはソファの端で膝を抱えている。そして俺は。ただテレビを見つめていた。時間停止魔法の研究。禁忌魔法の保持。どちらも刑罰は重い。最悪の場合。死刑。誰もその言葉を口にしなかった。口にした瞬間。現実になる気がしたからだ。

そして。テレビ画面が切り替わる。

テロン。

テロン。

速報の文字が表示された。誰も息をしない。画面の向こうでアナウンサーが口を開く。

そしてそこには――。

この話だけで結構進みましたねー。気になるところで切ってしまって、申し訳ないとおもってます。つぎもたのしみにしててくださいー!

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