187 青き葉に託された願い
すいません、計算間違いをしておりました<(_ _)>
第二章は、ここから残り四話で完結でした(T_T)
俺は目の前の光景に言葉を失う。操縦室に座るソウケンさんの腹部を魔塩草が突き破り、青々とした葉を広げていた。
視界の端がきらりと光る。目を向けると、無数の魔力ポーションの空瓶が転がっていた。
いくつかは俺が持ってきたものだった。キクーチェ公爵家の紋章が描かれたラベルが貼られていた。きっと残りは、ヤクモが持ってきたものだろう。
短く息を吐き出し、気持ちを切り替える。このままではソウケンさんは助からない。声をかけようとして、思い留まる。まずは容体を確認するのが先だ。
こめかみの下にあるボタンを二回押し、口元の装甲を開く。そして、方言魔法を唱えた。
「どぎゃん」
その瞬間、モニター左上に文字が浮かび上がる。
『魔力量 14%』
すでに二割を切っていた。俺は急いで魔力ポーションを探すが、操縦室に転がる瓶はすべて空だった。
どうすれば助かるのか。じっとソウケンさんを見つめると、モニターに新たな文字が浮かび上がった。
『状態異常:魔力伝達率162% 魔力制御率187%』
思わず目を見開いた。武蔵零式を装着して発動した鑑定魔法は、想像を超える精度を発揮してみせた。
ちらりと自分の魔力残量へ視線を向ける。モニター右下に表示されているのは『86/160』。やはり代償として、かなりの魔力を消費していた。
だが、それよりも、ソウケンさんに表示された数値に息を呑む。
機人を操縦するには操縦桿を通して、機体を制御する魔核へ魔力と精密なイメージを送らなければならない。
そのために必要な能力が、魔力制御と魔力伝達だ。
彼の数値は異常だった。多少の個人差があるとはいえ、百パーセントを超えることはない。常人の域を遥かに超えている。
俺は、あの想像を絶する動きは機人の改造によるものだと思っていた。だが、違った。
血の気のないソウケンさんを見つめる。すると、モニターに新たな情報が映し出された。魔塩草から伸びた根が体中に張り巡らされ、新たな神経となっていた。
その根はソウケンさんの魔力を奪う代わりに、機人へ伝える力とイメージを異常なまでに加速させていた。
つまり、ソウケンさんは自らを強化するため、魔塩草を体内に取り込んだのだ。
俺は唇を噛みしめ、拳を握り締める。モニターに映る彼の魔力量が、みるみる減っていく。
『魔力量 11%』
『魔力量 9%』
すでに、助ける方法を探している時間すら残されていなかった。
「……ソウケンさん、俺です。ソウガです」
俺の声に、彼はわずかに眉を動かした。その瞳に漆黒の機人が映り込む。武蔵零式の青き双眸が冷たく光っていた。
「やはり、君でしたか……。シロウ様……いや、シロエ様を……頼み、ます……」
それだけ伝えると、ソウケンさんはゆっくりと目を閉じた。最後に見た彼の瞳にはシロエを託す懇願と、王都への消えぬ拒絶が宿っていた。
この領地と領主を救うために反乱を起こし、その反乱を止めようとする俺に、彼は最後の願いを託した。
その重さが、胸の奥底へ沈んでいく。
俺はソウケンさんに向かって頷き、清正二式から飛び降りた。これ以上、彼にかけられる言葉はなかった。
そのとき、背後から凄まじい轟音が上がる。
振り向くと、無数の炎の魔弾がこちらへ向かっていた。どうすべきか、逡巡する。あれを防ぐ方言魔法が思い浮かばない。
『さむか』も『すぅすーすぅ』も『おもか』も、仲間に託した。それに魔力も心許ない。焦る俺に、ヤクモの声が届いた。
『おもか!!』
その瞬間、大気を裂いて突き進んでいた炎の魔弾が、すべて地面へ叩き落とされた。直後、大地が揺れ、爆音が鳴り響く。
笑みを浮かべる。また、思い詰めていたようだ。俺の背中は、ヤクモが守っている。
俺は振り返り、白亜の屋敷を見つめる。
さきほど叩き落とされた魔弾によって、屋敷を囲む森が燃えはじめ、壁や窓を赤く染めている。いつ火の手が、屋敷にまで回るか分からない。
小さく息を吐き出し、武蔵零式の装着を解除した。
彼女と会う姿ではない――。
ソウケンさんの瞳に映った、青き双眸を見たとき、そう思ってしまった。
「なおす」
魔法を唱えると、漆黒の機体は亜空間へと吸い込まれた。閉じていく空間の中で、武蔵零式は暗き瞳を向けていた。
それは俺への問いかけなのか、戒めなのか分からない。そう感じただけかもしれない。
両頬を叩き、顔を上げる。
この屋敷のどこかに、シロエがいる。
俺は拳を握り締め、大きく一歩を踏み出した。
貴重な時間の中、読んでくださり感謝です(//Д//)
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