↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
方言だけ最強。機人×魔法の学園で逆転  作者: 黒鍵
第二章 塩の大地と金色の誓い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

182/201

182 背負う覚悟、預ける力

明日からSWです。

皆さん、良い休暇を! 台風よ、去れ!

 誰も声を上げることができず、天幕の中に沈黙が落ちる中、俺はヤクモを睨み続ける。そのとき、クロメが立ち上がった。


「作戦は決まりました。明日の午後には後衛も到着します。損傷の激しい機体の修理が終わり次第、出撃します。アスカさん、まずは貴女の炎翼部隊が突撃してください。私たちは援護しつつ、天草砲式が出てきたら、そちらを迎撃します」


 彼女はアスカに指示を出し、ヤクモへ視線を向ける。


「分かった。それでいい。悪いが、アスカ。先陣は任せる」


 やつは俺から視線を外し、アスカへ向けて静かに告げた。アスカはすっと立ち上がり、そのまま腰を落として膝をついた。


「はっ! この剣に懸け、必ず敵を殲滅いたします」


 その言葉に眉が跳ねる。それではアクアクサ領は救えない。多くの死者が出るだけだ。俺は拳を握り締め、ヤクモに詰め寄ろうとした――そのとき、カジコさんが声を上げた。


「少し眠くなってきたな。今日はお開きにしないか。夜更かしは美容に悪い。今はゆっくりと休むべきときだ」


 足を止め、振り向く。彼女は口元からパイプを離し、片目を閉じた。そして、視線をヤクモに向ける。やつも拳を握り締め、わずかに震えていた。


(……また、思い詰めていた。自分しか見えていないじゃないか)


 視線を落とし、唇を噛みしめる。俺はカジコさんに頭を下げ、天幕を足早に出た。


 背後から足音が届く。おそらくナツメとハンナだろう。立ち止まると、肩を叩かれ、袖を引っ張られた。


「何でもひとりで背負い込むのは、悪い癖だよ。ソウガ」

「そうですよ、私たちもいます。それにリュウゾウ先生やカジコさんも」


 二人のほうへ顔を向ける。すると、彼女たちは笑顔を浮かべ、じっとこちらを見つめていた。それだけで心が軽くなる。


 俺はナツメとハンナに笑顔を返し、小さく頷いた。そして、力を貸してほしいと深々と頭を下げると、テントに戻った。簡易ベッドに腰を下ろす。近くに置かれた椅子にナツメとハンナも座った。


「とりあえず、作戦会議は明日だね。時間はないけど、睡眠は必要だよ」

「そうですね。作戦の内容次第では、魔力や体力をかなり使うかもしれません。なるべく回復させておいたほうがいいです」


 二人の言葉に頷く。たしかに今の俺では、いい作戦なんて思いつかない。それよりも疲れを取り、体調を万全にしたほうがいい。


 昨日は海で溺れかけ、死にかけた。それにヤクモを助けるために街中を駆け回り、魔法で穴まで掘った。


 少しの休息で回復するわけがない。よく無事にヤクモと脱出できたものだと、苦笑いを浮かべた。


 ふと、ナツメとハンナの紺碧の瞳が目に留まった。それはシロエの青い髪を思い出させ、胸を締め付ける。


 ナツメもハンナも婚約者だ。俺の意志ではなく、親が勝手に決めた関係だった。だが、今ではかけがえのない存在になっている。大事にしたい気持ちは本当だ。


 けれど、シロエを助けたいと思う気持ちも、嘘偽りない事実だった。これが恋なのかは分からない。まだ答えを求めようとも思わない。


 今はアクアクサ領と、そこに住む人たち。そして、シロエを救うだけだ。もし、生きて会えたなら、そのときに確かめる。


 俺はこの気持ちを隠すように笑顔で覆った。二人は口を開きかけたが、何も言わない。ただ、その瞳だけが、心の奥に隠したものまで見透かしているようだった。


 二人は静かに椅子から立ち上がると、それぞれのベッドへと歩き出した。


 その背中を見つめながら、俺もベッドへ倒れ込む。少し硬いマットが軋み、キュッと音を鳴らした。


 ――すべては明日だ。


 そう自分に言い聞かせ、俺は静かに目を閉じた。



――――――――――――



「おい、起きろ。ソウガ。もう朝だぞ!」


 その言葉に慌てて上半身を起こす。遮光性の高い布の隙間から、陽光が差し込んでいた。


 ついさっき寝たつもりだったが、もう朝だった。かなり深い眠りについていたらしい。蝉の鳴き声が遠くに聞こえる。


 ベッドの上に座り直し、目の前の椅子に座ってお茶を飲むヤクモを睨んだ。


「俺は疲れているんだ。もう少し優しく起こそうと思わないのか」

「ぬかせ。ハンナが何度も声をかけても起きなかったから、俺が起こしたんだ」


 ヤクモはティーカップをテーブルに置き、人差し指で眼鏡をくいっと上げた。その姿に肩を落とし、ベッドから立ち上がる。


 両手を組んで上に挙げると、背を思い切り伸ばした。心地よい痛みが体中を走り、凝り固まった筋肉を刺激する。頭もかなりすっきりした。


 これなら何かいい作戦を思いつくかもしれない。俺がヤクモの隣の椅子に座ると、ナツメがプレートを差し出した。


 その上にはパンと野菜、そして目玉焼きが載っていた。


「起きたばかりだけど、ソウガなら大丈夫だよね?」

「ああ、むしろ大歓迎だ」


 そう言って、添えられたフォークを取り、目玉焼きに突き刺すと、口元に運び、ひと口で食べてみせた。


「いやー、若いっていいね。もうすっかり元気じゃないか、ソウガ君」


 カジコさんが笑みを浮かべ、テントの中に入ってきた。その後ろにはリュウゾウ先生も続く。俺は急いで目玉焼きを咀嚼し、飲み込むと、深々と頭を下げた。


「昨日からずっと、ありがとうございます。何度も俺を止めてくれて、本当に助かりました」

「気にするな、青年。道を示してやるのも大人の務めだ。まあ、正しいかどうかは知らんがね」


 そう言って、カジコさんは笑い出した。その姿に笑みが零れる。どんなときでも余裕を持って接してくれる彼女を、素直に尊敬してしまう。


 カジコさんといい、リュウゾウ先生といい。俺は素晴らしい大人たちに出会えたことに感謝した。


 もう迷いはない。いや、あるのかもしれない。だが、今は考えない。覚悟は決まった。


 俺がプレートに載った残りを一気に食べてしまうと、全員の視線が集まる。


 そして、俺たちはファンドウを救うための作戦について話し合いを始めた。

貴重な時間の中、読んでくださり感謝です(//Д//)

ブクマや★で応援いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
   この繋ぎのエピソードはとても情景が目に浮かび易く、秀逸でした。  ソウガ君のファンドウ救出作戦やいかに?  次話を楽しみに待っています☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。