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方言だけ最強。機人×魔法の学園で逆転  作者: 黒鍵
第二章 塩の大地と金色の誓い

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179 望遠の先の戦争

ブクマや応援、いつもありがとうございます<(_ _)>

 いきなり正門前に現れた機人たち。俺は身を乗り出し、食い入るようにモニターを見つめる。


 画面に映し出された、魔導車の上に上半身を乗せたような異形の機人たちは、正門前で綺麗に横一列へ並び始めた。


「ちょっと、顔が近いかな、ソウガ」


 視線を落とすと、頬を赤く染めたナツメの顔が目に映る。そこで、かなり前のめりになっていたことに気づいた。


 俺が慌てて後ろに下がろうとしたとき、クロメの魔導機人――魔(ま)壊(ぼろ)が魔法を展開した。


 右手から竜巻が放たれ、左手から炎が吹き出す。やがて、それらはひとつに紡がれ、強烈な火災旋風となって、異形の機人たちを襲った。


 同時に二つの魔法を放つクロメを見て、背筋に冷たい汗が伝う。「ファイア・ストーム」という中級の火魔法はあるが、目の前の魔法はまったくの別物だった。


 風を制御し、火力を調整することで、炎の竜巻は蛇のようにうねりながら、機人たちに襲いかかる。その緻密な魔力制御と膨大な魔力量に、言葉を失った。


 だが、正門に並ぶ巨腕の武導機人と車輪の魔導機人は慌てることなく、冷静に対応する。


 巨腕の機人は上半身を倒し、脚に備え付けられた盾に身を隠し、車輪の機人は常軌を逸した速度で、その場から離れた。


 防御が間に合わず、炎に巻き込まれた機体もいたが、ほとんどの機人は無傷だった。俺が安堵し、静かに息を吐き出すと、ナツメが複雑そうな表情を浮かべた。


 彼女が言いたいことは分かる。相手も攻撃してきたのだ。傷つき、命を落とす覚悟もあるだろう。それでも敵味方関係なく、犠牲は少ないほうがいい。


 口を開こうとするが、言葉が出てこない。きれいごとだと分かっているからだ。唇を噛みしめ、モニターに視線を戻した。


 そのとき、車輪の機人たちが一斉に上半身を前に倒し、両手の爪を地面に突き刺した。その姿は、クムァムーン様の神像に祈りを捧げる住民を思い出させた。


 嫌な予感がして、ごくりと喉を鳴らす。刹那、機人の背中に備え付けられた巨大な魔導砲から、深紅の魔弾が放たれた。


 それは炎を纏った岩石だった。思わず手を伸ばし、モニター横のダイヤルを回し、映像を拡大すると、ナツメが画面から目を離すことなく呟く。


「これは魔法なのかな? 火魔法なら炎の塊が放たれるはずだし、土魔法なら岩石か金属の塊だ。だが、あの魔弾はその両方だ」


 その言葉に、息を呑む。まさか、あの機体にはクロメのように複数の魔法を同時に発動できる者が乗っているのだろうか。


「うーん。あの魔導車みたいな機人は、ざっと見ても二十体以上はいるよね。そんなにたくさんいるのかな。魔法を同時詠唱できる人なんて」


 ナツメの横顔に釘付けになる。たしかにそうだ。そんなことができるのは、俺が知る中で二人だけだ。


 一人は、今も炎と竜巻を操るクロメ。そして、もう一人はナツメだ。彼女は詠唱しながら、筆談でも魔法を発動できる。だが、それでも二つの初級魔法が限界だった。


 混乱しながらモニターに視線を戻すと、炎を纏った岩石はクロメの機体ではなく、地上に待機する魔導機人を襲っていた。


 魔翼部隊の兵たちも手練れではあったが、目の前に迫る見たことのない魔法に混乱し、対応が遅れる。


 炎と岩石――二つの攻撃を同時に受けた魔翼部隊の機人たち。大破こそしていないが、明らかに損傷していた。


 カメラを車輪の機人へ向けると、それらは扇状に展開し、魔翼部隊を取り囲み始めていた。


 このままでは、魔翼部隊の機人たちに甚大な被害が出るかもしれない。そう思ったとき、クロメの機人――魔(ま)壊(ぼろ)が両手を天に掲げた。


 間もなく、夜空に水色に輝く巨大な魔法陣が現れる。それは無数の氷の矢を生み出し、車輪の機人と巨腕の機人へ降り注いだ。


 一瞬で辺り一面が氷の檻へと変わる。地面に刺さった氷は、魔翼部隊を守るように屹立していた。


 だが、ファンドウの機人を仕留めることはできなかったようだ。車輪の機人はすでにその場から退避し、正門へと疾走していた。


 そして、巨腕の機人は巨大な槍を持ち上げ、まるで傘のように、その穂先を広げて氷の矢を防いでいた。


 これが戦争なのかと、俺は目の前の光景に目を剥く。戦術と戦略、それに奇策が複雑に絡まり合い、一進一退の攻防が繰り広げられていた。


 俺は己の無力さと無知に打ちのめされる。顔を伏せ、拳を握り締めると、ナツメが口を開いた。


「どうやら、今夜はここまでのようだよ。クロメ様たちが戻ってくる」


 その言葉にモニターへ視線を向けると、敵の攻撃を警戒しながらこちらへ向かう魔導機人と、紫紺の機人が映っていた。


 ひとまず、戦いは終わった。何も解決していないが、今夜はこれ以上血が流れることはない。それだけで安堵の息を漏らした。


「ソウガ、もういいかな? ちょっと暑いかも」


 ふと顔を下げると、眼前にナツメの顔があった。狭い操縦席に二人並んで、モニターを見ていたことを思い出す。


 俺は慌てて後ろに飛び退いた。その瞬間、ふわりと宙に浮き、足場が消える。俺は機人の中にいたことを思い出し、すぐに魔法を唱えようとした。


 だが直後、白い巨大な掌が現れ、俺をそっと掬った。軽く尻もちをつき、顔を上げると、ハンナの蘆花二式がこちらを見ていた。


 その双眸――カメラのレンズはまっすぐ俺を捉え、月明かりをきらりと反射した。その無機質な視線に、なぜか冷や汗を流した。

貴重な時間の中、読んでくださり感謝です(//Д//)

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― 新着の感想 ―
 モニター越しの状況は手に取るようにわかりました。  ソウガ君とナツメさんの甘いやり取りが良いスパイスでした。  引きのハンナさんの機人のーー  無機質なレンズに、冷や汗をかくソウガ君が目に浮かび…
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