↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
方言だけ最強。機人×魔法の学園で逆転  作者: 黒鍵
第二章 塩の大地と金色の誓い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

175/201

175 炎翼と魔翼、迫る制圧

少しだけ暑さが和らいだような気がしましたが、気のせいでした(´;ω;`)

★やブクマ、ありがとうございます<(_ _)>

 俺は頭上を通り過ぎていく二体の機体に目を見開いた。あれはただの機人ではない。一体には見覚えがあるが、以前見たものよりも少し形が違って見えた。


 深紅の機体は炎を纏うように空を裂き、紫紺の機体は影そのもののように音もなく滑空していた。


 間違いなく、炎翼のアスカと魔翼のクロメだ。俺は頬を伝う汗を拭い、その先に視線を向ける。すでに他の機人たちも、こちらに近づいていた。


 慌てて駆け出す。二体の機人は、大型魔導車の荷台に手が届く距離まで迫っていた。


 俺は息を切らし、必死に走り続ける。ようやくヤクモたちのもとに辿り着くと、目の前の光景に息を呑んだ。


 ヤクモの前には、紅蓮のマントを羽織ったアスカと、漆黒のローブを身に纏ったクロメが膝をつき、頭を垂れていた。


「よくぞ、ご無事でヤクモ殿下。王都から、アクアクサ侯爵家に囚われたと報せを受けたときは、生きた心地がしませんでした」


 アスカの声は歓喜に震えていた。彼女もヤクモを慕う一人なのかもしれない。そう思うと、複雑な気持ちになる。


「本当によかったです。これで何の憂いもなく、アクアクサ領を制圧することができます」


 隣のクロメは頭を下げたまま、口角を吊り上げた。その顔は魔女そのものだ。やはり、こちらも油断できない相手だ。


「二人とも心配をかけてすまなかった。すぐに無事を知らせることができず、申し訳ないと思う。まだしばらくは、アクアクサ領にも動きはないだろう。少し休んでくれ」


 ヤクモは表情を変えることなく、彼女たちを労うと、眼鏡の縁に指を這わせた。その頬には、わずかに汗が滲んでいる。


 どうやら、ヤクモにとっても二人の到着は予想外だったのだろう。当初の予定では、アクアクサ領から抜け出したことは伏せ、時間を稼ぐつもりだった。


 こいつだけを隠して別行動をとらせる案もあったが、もはやそれも叶わない。計画を立てる前に、選択肢が潰されていく。


 焦りながらも、この状況をどう打開すべきか思考を巡らせる。


 そのとき、足元から振動が伝わってきた。後ろを見ると、多くの機人が速度を落としながら止まるところだった。


 機人の数を数える。魔導機人が六、武導機人が八、聖導機人はいない。どう見ても、攻撃することしか考えていない編成だった。


 無機質に陽光を反射する機人たちを見上げていると、背後から声が届く。


「おい、ソウガ。貴様が殿下を誑かして、ここまで連れてきたのか!」


 振り返ると、アスカが肩を揺らし、大股で歩いてくる。動揺している俺には、言葉を返す余裕がなかった。


 彼女は俺の襟首を掴み、詰め寄る。俺は口を閉じたまま、遥か先に見えるファンドウを見つめた。


「何か言ったらどうだ! このまま斬り伏せても――」

「やめろ、アスカ!」


 ヤクモが近づき、アスカの手首を掴む。珍しく怒りを露わにしていた。それでも俺は、ファンドウから視線を外すことができない。


「俺がこいつを誘ったんだ。アクアクサ領の反乱を止めるために!」


 アスカは眉を上げ、忌々しげな眼差しを向けたまま手を離すと、ヤクモを俺から遠ざけた。


「それは殿下がお優しいからです。きっと、そうなるようにこいつが誘導したのです。あの気味の悪い魔法を使って」


 ヤクモがため息をつき、首を横に振る。どうやら、こいつもアスカへの説得は諦めたようだ。


 正直、誤解されようがどうでもよかった。だが、ファンドウを救う方法を考えるには、少し騒がしすぎた。アスカに手を向けて呟く。


「ちと、おもか」


 その瞬間、アスカが地面に叩きつけられる。周囲の地面は陥没し、小さなひびが入った。怒りに任せたつもりはなかった。ただ、考える時間が欲しかった。


 だが、これで少し静かになる。そう思ったとき、そっと肩を掴まれる。顔を向けると、カジコさんがじっと俺を見つめていた。


「ソウガ君。私は言ったはずだよ。思い詰めるなってね」


 はっと息を呑む。そして、魔法を解除すると、カジコさんに向かって深々と頭を下げた。


 後ろではアスカが起き上がり、剣の柄に手を伸ばそうとしていた。忠誠心が高いのはいいが、周りが見えていない。冷静に事実を受け止めることもできていない。


 こんなやつしか、ヤクモの周りにはいないのだろうか。少し心配になる。俺はカジコさんの前に出て、腰を落とした。


 無手でも問題ない。親父から散々、格闘術を叩き込まれている。アスカの指先が剣の柄に触れそうになった――そのとき、ひとりの男が割って入った。


「アスカ様、彼はクロメ様の部隊に配属されることが決まっています。これは越権行為です!」


 機人に乗るための特殊な皮鎧を纏った青年は、アスカの前に立ち、両手を広げた。ちらりと視線をずらすと、ヤクモが安堵の息を吐いている。


 どうやら彼こそが、本当の意味でヤクモを慕う者なのかもしれない。俺は構えを解き、その青年の背中に向かって礼を述べると、この場を離れた。


 後ろからアスカの声が聞こえるが、無視する。お互いに冷静になったほうがいい。視線を落とし、短く息を吐き出したとき、足元に影が伸びた。


 ふと顔を上げる。そこには妖艶な笑みを浮かべ、こちらを見つめる宮廷魔導士団総帥――魔翼のクロメの姿があった。

貴重な時間の中、読んでくださり感謝です(//Д//)

ブクマや★で応援いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 七翼の二人ーー特にアスカさんは、相当ソウガ君を毛嫌いしてますね。  もう一方で、魔翼のクロメさんは、お気に入りのご様子。  この先の展開はどうなるのでしょうか?  続きを楽しみにしております☆*…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。