171 追いついた仲間たち
毎日が猛暑尾と酷暑日……。皆さま、熱中症に気を付けてください<(_ _)>
そんな中、なぜか発熱しました(T_T)
ナツメたちとともに街道を進む俺の目に、二台の大型魔導車が飛び込んできた。道端に停車した車両は深い緑色の塗装が施され、荷台には迷彩柄のシートがかけられていた。
その洗練された機能美に目を剥く。前世でよく見た自衛隊のトラックを連想せずにはいられなかった。
「すごいでしょ、ソウガ。これを準備してくれたのはキクーチェ公爵家だよ。ハンナがタケミツ様にお願いしてくれたんだ」
言葉も出せず、ただ呆然と大型魔導車を見つめていると、ナツメが自慢げに語った。俺は無言のままハンナに視線を向ける。
「婚約者が危険な目に遭っているかもしれないと伝えたら、父がすぐに準備してくれました」
彼女は頬を赤く染めながら、笑顔で告げた。嬉しいが、これほどの大型魔導車を貸してもらえるほど、俺は彼女に何もしてやれていない。
「ナツメ様、周辺を見てきましたが、誰もいないようです」
立ち尽くす俺の耳に、聞き覚えのある声が届き、顔を向ける。そこにはカナさんが立っていた。
「どうして、冒険者ギルドの受付である貴女がここに!?」
理解が追いつかず、声が大きくなる。そんな俺の肩にナツメが手を置き、耳元でそっと囁いた。
「ふふふ、驚いた? 実はカナは私の家に仕えているんだ。普段は冒険者ギルドの受付嬢をしながら、街の情報を集めてもらっている。アクアクサ領に行くならって、父が私に預けてくれたんだ」
彼女の吐息が耳をくすぐり、俺は思わず距離を取った。ちらりと視線をずらすと、ハンナが頬を膨らませている。
俺から近づいたわけじゃないのに、理不尽だ。そんな俺たちを見て、リュウゾウ先生がため息をついた。
「いい加減にしろ、お前たち。ここは反乱を起こしたアクアクサ領のど真ん中だぞ。少しは緊張感を持て。すいません、カナさん。俺たちの話し合いが終わるまで、周囲を警戒してもらっていいですか?」
カナさんは困ったように笑い、小さく頷いた。先生は軽く頭を下げると、大型魔導車の横に立てられたテントを見た。
俺たちは真剣な表情に戻って頷く。先生も満足そうに頷き返し、テントへ向かって歩き出した。
――――――――――――
テントに入った俺たちは、中央に置かれたテーブルを囲むように座る。その上には、アクアクサ領を中心に描かれた大きな地図が置かれていた。
俺がどうして皆がここにいるのか尋ねようとしたとき、ナツメが口を開いた。
「君の影武者、優秀だけど、一番大事なところが全然駄目だったよ」
「ほう、そうなのか? 三人の中で一番付き合いの長いやつを選んだはずだが」
その会話に俺は息を呑み、二人を交互に見る。ヤクモは口角を吊り上げ、ナツメは余裕の笑みを浮かべる。
「もし演じるなら、見た目や癖も大事だけど、中身もしっかり演じなきゃね」
ナツメはそっと人差し指をヤクモの顔に向けた。やつはため息をつき、独りごちる。
「……そうか、眼鏡とはな。そういえば、あいつにも俺の秘密は言っていなかったな」
そう頷き、そっと眼鏡に触れる。事情を知る俺とリュウゾウ先生だけは、心配そうにヤクモを見つめる。ナツメは俺たちの様子を気にしながらも、話を続けた。
「それで、私とハンナは、ヤクモ君が影武者と擦り替わったこと、ソウガが同じ時期にいなくなったことを父さんに話したんだ。あとは言わなくてもいいよね?」
「ああ、俺もジュンイチ殿から、アクアクサ領で反乱が起きそうだと聞いていたからな。彼なら、すぐに俺たちの行き先に見当がつくのも頷ける」
ヤクモは肩をすくめ、ナツメは満足そうに頷く。おそらく俺だけが会話に追いついていない。そんな俺に、ハンナがじっと視線を向けていることに気づく。
「ジュンイチ様にアクアクサ領のことを教えてもらった私たちは、すぐに動きました。私は父に機人と魔導車の手配をお願いし、ナツメさんはリュウゾウ先生に相談したんです」
彼女はナツメの言葉を引き継ぎ、静かに語る。その顔には悲しげな感情が滲む。それが何かは分からない。俺は口を閉じ、耳を傾ける。
「リュウゾウ先生は同行を申し出てくれました。機人を持っていくなら、整備する人間が必要だろうって。それにソウガの武蔵零式を整備できるのは、先生だけだから」
皆の視線が自然とリュウゾウ先生に集まる。先生は組んでいた腕を解き、頭を掻きながら、短く息を吐いた。
「まあ、ヤクモもソウガも、俺の教え子だ。ヤクモとは小さいころからの付き合いだし、ソウガも手のかかる問題児だ。放っておけないだろ」
俺とヤクモは頭を下げ、感謝を伝えた。反乱が起きた今、いつここが戦場になってもおかしくない。
そんな場所に、教師という立場だからといって来てくれる人はほとんどいない。目頭が熱くなり、顔を上げることができない。
「あまり気にするな、若者たち。こいつは武蔵零式の新たな機能を早く知りたいだけだ」
今までずっと黙っていたカジコさんが、突然口を開いた。零れそうになる涙は引っ込み、顔を上げる。
彼女はパイプを口元に運び、思い切り吸い込むと、ゆっくりと紫煙を吐き出した。柑橘系の甘い匂いがテントの中を満たす。
ゆらゆらと靄のように揺れる煙を見つめながら、彼女は軽やかに告げる。
「武蔵零式の五大機能のひとつが判明したよ。今回は、起動用のキーワードも、発動するための言葉も完璧さ」
緊張した雰囲気も、カジコさんには関係ないようだ。その顔には大人の余裕と、揺るぎない自信が漲っていた。
どんな状況でも、この人は自分を見失うことはないのだろう。リュウゾウ先生とは違った頼もしさを感じ、笑みが零れる。
「お前は、少し場を弁えろ。だが、たしかに五大機能<風>については、俺も興味がある」
やはりリュウゾウ先生だった。カジコさんを注意しつつも、機人のことになった途端、にやりと笑った。
実は二人は似たもの同士なのかもしれない。俺は束の間の穏やかな空気に目を細め、小さく吹き出した。
貴重な時間の中、読んでくださり感謝です(//Д//)
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