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方言だけ最強。機人×魔法の学園で逆転  作者: 黒鍵
第二章 塩の大地と金色の誓い

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157 青き海、祈りの熱

お忙しい中、読んでくださり、感謝です!

 俺は静かに目を覚ました。七月も半ば。冷房の魔導具が備え付けられていない部屋は、朝だというのに、すでにかなりの暑さになっていた。


 じわりと下着が湿っている。だが、不思議と嫌な感じはしなかった。


 俺は上半身を起こし、掌を見つめる。いまだにシロエの背中――その熱が残っているような気がした。


(……もしやとは思っていたが、本当に女だったとはな)


 俺と同じ金色の瞳に涙を浮かべたシロウ――いや、シロエの顔を思い出し、あの夜の余韻を確かめるように掌を握り締めた。


 ベッドから下り、窓辺へと歩く。太陽はすでに高く、日差しは鋭い。目を細めて街並みを眺めた。


 災厄は収まりつつある。だが、町の人たちの表情には、いまだ不安が滲んでいた。焦る必要はない。やがて町にも活気が戻るはずだ。


 俺はそう自分に言い聞かせ、背筋を伸ばして朝の支度を始めた。



――――――――――――



 朝食を終えた俺とヤクモは玄関の前で合流し、町の様子を見て回ることにした。


 たった数日でアクアクサ領の状況が劇的に改善するとは思っていなかったが、それでも少しは期待してしまう。わずかに口元から笑みが零れた。


「……ソウガ、あまり期待するな。まだ、マイナスからゼロに近づいただけだ」


 ヤクモは真っすぐ前を見つめ、淡々と告げた。その視線の先には、クムァムーン様の神像に祈りを捧げる住民たちがいた。


 指を交差して強く握り締め、頭を下げる姿に息を呑む。その瞳には、濁った狂気が爛々と宿っていた。


「クムァムィ様、どうか私たちをお救いください」

「亡くなったあの子を、天国へ導いてください、クムァムィ様」


 同じ神を崇めているはずなのに、呼び方が少し変わるだけで、ここまで信仰の熱が変わるのか。頬に一筋の汗が伝い落ちる。


「ソウガ、勘違いするな。ここが異常なだけだ。呼び名が多少変わろうが、神は等しく慈悲深い」


 ヤクモは地面に額を擦りつける住民たちを睨みながら語る。アクアクサ領は昔から信仰に厚かったが、ここまで狂信的ではなかったらしい。


 ただ、過去には呼び名の違いから周辺の領民と多少のいざこざがあった。


 だが、それを知る者は少なく、歴史の教科書の隅に小さく取り上げられる程度の話らしい。


「なら、なんであの人たちは、あんなに必死なんだ?」

「俺にも分からん。だが、祈るだけで救われることなど何ひとつない。自らが動いた、その先にしか答えはない。神が手を差し伸べるのは、そのときだけだ」


 ヤクモらしい言葉に、つい口角が上がる。たしかに神は平等だ。でも、それは無差別に人を救うことではないと、俺も思う。


 だが、祈りを捧げる人たちの頬は窪み、体は痩せ細っている。彼らに選べる道は、祈り以外になかった――そうも思う。


 俺は早くアクアクサ領に元の生活が戻ることを願わずにはいられなかった。静かに心の中で両手を組み、クムァムーン様に祈りを捧げた。


 俺たちは、神像に祈りを捧げ続ける住民たちから離れ、港のほうへ歩き出した。建造中の大型船を見られるかもしれないし、市場の様子も気になった。


 不漁が続くとはいえ、まったく獲れないということはないはずだ。今、どんな魚が水揚げされているのか。それが分かれば、何か原因が掴めるかもしれない。


 昨夜、宿へ戻る馬車の中でヤクモに提案したら、やつはかすかに眉を下げながらも、頷いてくれた。


(……やつの気持ちも分かる。素人が見たところで、大したことが分かるはずはない。それでも、何もしないよりはマシなはずだ。それとも他に気になることがあるのか?)


 その瞬間、シロエの顔がよぎった。艶やかな青い髪をなびかせ、涙を浮かべる彼女。その姿を思い出しただけで、胸が苦しくなる。


 胸に手を当て、短く息を吐く。潮の香りが鼻腔をくすぐり、昨夜の記憶が色鮮やかに脳裏へ浮かび上がった。


 気持ちを落ち着けたかったが、かえって心は乱れる。それを悟られぬよう前を向き、ヤクモを追い越して港へ向かった。



――――――――――――



 俺たちは街中を眺めながら歩いていた。いまだに住民たちの顔は暗く、店先に並ぶ品物も疎らだった。


 ため息を堪え、顔を上げる。そのとき、突如として視界が開けた。目の前には、それまでの淀んだ空気が嘘のように、青く煌めく海が広がっていた。


 少しだけ気持ちが明るくなる。眩い景色に目を細めて歩いていくと、すぐに港へ着いた。


 予想に反して、そこに大型船はなかった。あるのは、魔燃機関を外された船たちだけだ。それはまるで意志を失ったように、緩やかな波へその身を委ねていた。


 どれほどの船か見てみたかった。だが、大型船はすでに完成し、港を出たのかもしれない。


 もしそうなら、この不漁も解決できるかも――。そう思い、わずかに胸が熱くなった。


 やがて視線はヤクモへ流れた。すると、やつの険しい表情が目に映る。俺は眉をひそめ、その視線を追った。


 そこには、漁師たちと話し合うソウケンさんの姿があった。

読んでくださり感謝です<(_ _)>

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― 新着の感想 ―
 ソウガ君視点、内心の深掘りがとても良かったです。  気づけば、目の前には海とソウケンの姿が頭に浮かんでました。  一波乱あるのか? 次話を楽しみに待ちます。╰(*´︶`*)╯♡
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