表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
方言だけ最強。機人×魔法の学園で逆転  作者: 黒鍵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

125/126

125 炎翼の苛立ち、赤い幕

 (たつ)()山から少し離れた場所に建てられた仮設施設で、試合を観戦していた炎翼のアスカが、怒りを露わにする。


 モニターには急斜面を滑落する純白の機人が映し出されている。その右脚はソウガが放った蒼炎に抉り穿たれ、辛うじて繋がっていた。


「チッ、<聖騎士>と言っても、所詮この程度か。折角、こちらで便宜を図ってやったというのに、情けない!」


 モニターを睨みながら、テーブルを叩きつけるアスカ。その隣に座る魔翼のクロメは苦笑いを浮かべ、周囲を見渡す。


 部屋にいる学園総体の責任者たちは顔を青ざめさせ、俯いたままだ。誰ひとりとして、アスカと目を合わせようとしない。


(ここまでして勝てないなら、ソウガ君の実力が本物ということ。テッペイ君に怒るのは筋違いだと思うけど……。こんな短絡的な人を、よくコイズミ陛下は武光七翼の一翼に任命したわね)


 クロメはいまだモニターを睨みつける彼女に視線を戻し、小さくため息をつくが、アスカは気づかない。


 ナツメとハンナが待つ山頂へ向かう武蔵零式――ソウガが映るモニターへ、彼女は鋭い眼光を放っていた。その姿を見て、クロメは眉を下げる。


「アスカさん、そんなに睨むと、モニターが壊れるかもしれませんよ」

「ふざけるな、クロメ! 今はお前の冗談に付き合ってやる余裕はない!」


 アスカは怒鳴り、立ち上がると、魔法食いの魔剣『赫灼』に手を伸ばす。その瞬間、周りから悲鳴が上がる。だが、クロメは笑顔を崩さず、言葉を続けた。


「あまりにも貴女が怒り狂っていて、状況が見えていないから、少し揶揄っただけです」

「い、怒り狂っているだと!」


 その言葉にアスカは眉を上げ、魔剣の柄を握り締める。一触即発の雰囲気に誰も動けず、口を閉ざした。部屋の中は緊張と静寂で満たされる。


 今にも剣を抜きそうなアスカを見ても、クロメは余裕を崩さない。それどころか、今度はアスカにも聞こえるほどの大きなため息をついた。


 刹那、アスカの手に握られた柄が微かに揺れ、カチリと鞘を鳴らす。その小さな音が、張り詰めた空気を切り裂いた。


 アスカとクロメ――二人を挟むように座っていた大会本部の幹部たちが一斉に席を立ち、部屋の隅まで逃げる。


 いくつもの椅子が倒れ、激しく床を叩く。静寂は破られ、アスカが詰め寄ろうとしたとき、クロメはモニターに映る漆黒の機体を見て、呟いた。


「このままだと、ポイントで勝っているソウガ君たちが優勝しますね。すでに試合終了となる夕刻まで二時間ほどです。ナツメさんもハンナさんも、それが分かっている。必要最低限の攻撃しかせず、守りに徹しています」


 アスカはクロメから視線をモニターに移す。そこには巨大な盾に身を隠し、牽制程度の攻撃しかしない紺碧の機体――ナツメの魔導機人が映る。


 そして隣には、巧みに薙刀を振るい、空を飛ぶシンヤの機人を近づけさせない純白の機体――ハンナの聖導機人の姿があった。


 そこでようやくアスカは、ソウガのことばかり気にしているわけにはいかないと気づく。呆然とする彼女にクロメは()たび、ため息をついた。


「くっ、してやられた! このままじゃ、本当にソウガたちが優勝してしまうぞ!」


 そう叫び、アスカは部屋の隅まで避難した大会本部の幹部たちを睨む。クロメは肩をすくめ、口を開く。


「別に、あの方たちのせいじゃないでしょう。アスカさん。それにテッペイさんは、いい仕事をしましたよ。だってソウガ君を、あそこまで追い詰めたんですから」


 そう言いながらモニターを指さすと、山頂を目指す武蔵零式の映像に切り替わった。その姿は本来のソウガとはかけ離れていた。


 彼は足を引きずりながら懸命に登っている。たまによろめき、地面に手をつくこともあった。


 テッペイの魔法の効果が残っているのは、誰の目から見ても明らかだった。


「ソウガ君が、あの調子なら、あれ(・・)を使っても逃げられる心配はないですよ。アスカさん。それに済聖光学園に付けられた判定用の魔導具は、偽物でしょう? どんなにダメージを与えても赤くなることはない……」


 妖艶に微笑むクロメ。アスカは彼女を忌々しげに睨みながら、舌打ちをした。


「いったい、どこまで知っているんだ、クロメ。だが、詮索は後だ。おい、お前たち。山中に潜む監視用の機人たちを撤退させろ! あと、済聖光学園の奴らにも、麓まで下りるよう伝えてやれ。従わなければそれでもいい。別に死ぬわけじゃないからな」


 アスカは魔剣から手を離し、クロメに背を向けると、部屋の隅に固まる大会本部の幹部たちに命令した。


 そして、クロメに視線を戻す。その瞬間、アスカは息を呑む。クロメは妖しく目を輝かせ、三日月のように口角を釣り上げていた。


 その姿に、この国で屈指の武力を持つ炎翼のアスカは全身が泡立ち、背中に細く冷たい汗が伝った。





 俺が山頂に到着すると、ナツメとハンナ――二体の機人が背中合わせで立ち、周囲を警戒していた。


 しかし、済聖光学園のシンヤさんたちの姿はまったく見えず、山頂は静まり返っている。


 テッペイさんの魔法で体力を奪われ、体調まで崩した俺は、山頂に向かうのに必死で、彼女たちの様子を気にする余裕がなかった。


 いったい何があったのか――疑問を抱きながら、ふらつく足取りで二体の機人のもとへ辿り着き、声をかけた。


『待たせて悪かった、ナツメ、ハンナ。今、シンヤさんたちはどこだ。なぜ、攻撃してこない?』


 その瞬間、張り詰めていたのか、ハンナの聖導機人が鋭く振り返り、薙刀をこちらに向けた。突風が起き、土埃が舞い上がる。穂先が、ぴたりと俺の眼前で止まった。


 俺は武蔵零式――その装甲の下で青ざめた顔のまま、苦笑いを浮かべる。普段のハンナならすぐに俺だと気づく。だが、よほど緊張していたのだろう。


 わざとらしく両手を上げ、降参のポーズをとって彼女を揶揄う。


『ソウガ、少し意地悪だよ。ハンナが可哀想だ。さっきまでシンヤさんたちと戦っていたんだ。気が張り詰めていたのは、分かっているよね』


 魔導具で拡張されたナツメの声が届いた。その声には、ハンナを気遣う優しさが滲んでいる。体力を消耗して余裕のなかった俺は、己の浅慮を詫びた。


『……すまなかった、ハンナ。ナツメの言う通りだ。考えが足りなかった』

『こっちこそ、ごめん。私は気にしてないから。それより、大丈夫? ソウガ。元気がないようだけど……』


 心配そうに尋ねるハンナに、再び苦笑いを浮かべる。魔導具で増幅されたノイズ混じりの声だが、誤魔化せるほど甘くはないらしい。


 もはや隠しても仕方がない。俺はテッペイさんの魔法で疲労困憊だと、伝えようとした。


 そのとき、山頂を囲むように巨大な火柱が上がり、俺たちと山頂のすべてを深紅に塗りつぶす。


 そして、土埃が赤く照らされ、血煙みたいに不気味に揺らめいた。

読んでくださり感謝です<(_ _)>

ブクマor★で応援いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アスカさんか?クロメさんなのか? どちらかが動いたのでしょうか? ボロボロのソウガ君は? 次を正座して待ちます٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ