独白の残響 ラストシーン 残響は空間に溶け込む
事業年度単位で3年が経過した、先進国株式指数が最高値を更新しまくった時期がAIバブルと語られる過去のものになるようなハードランディング(バブル後の暴落)は大規模には発生しなかったが、一時期のAIが世界を変える期待感や熱気のようなものは冷めて、次のバブルを牽引し時代の象徴になる何かを探すようなニュースが出回りだし、アメリカ大統領経済サイクルは1巡して次の大統領になった。
経済サイクルというものにも、いくつかの種類があり、その30年周期を丸ごと経営者として経験した後、次の30年周期の経済サイクルでは会社経営からリタイアしようと決めた。
だが、全てを捨て去ってしまおうと思い立った時になって初めて、心の中に今まで抱えた事の無かった想いが湧いてきた。
「やっぱり、今までの自分を捨て去るなんて嫌だ。
この同業者団体の常識では、
30年くらいすると、どんな有能な経営者でも過去の前例だけに囚われ
現在を見て正解と言える判断が出きなくなる
30年くらい同じ事を続けたら違う事をやるべき
と語られている。
ましてや自分ような凡庸な人間が続けたいと思うべきじゃない
一時期は、それが自然な生き方なのだと事を想っていたが
外資の、40年サイクルで運営している同業者団体と新しく関わって
もう10年くらいは、やれるところまで、やってみたくなった
今では、来年、社会人になって労働者としての人生を始める若い人を
育てるような日々を送って、自分以外の誰かを中心に考える人生にしてでも
まだ、何かを、やっていたい」
今年から始まる4年か8年のアメリカ大統領サイクルでの牽引産業をユーザーにするべく動き出したシステム投資案件が開発完了してユーザーリリースして運用保守フェーズになるまで、なんとか続けてみたいというような構想が心を捕らえていた。
同じ時期に、同じ市場環境、同じ人的操作要因の中で発生したシステム投資案件と言っても、投入された人、関連する国際調達供給網、技術的流行、多数派が示す良識などで、同じようなシステム投資案件でも、初期投資金額を回収できるまでの期間、初期投資回収後の安定運用期間には、天と地に渡るほどの大きな違いが発生するものなのを直前の3年間で観てきたが、まだ自分の耳は語る人の真の目論見を聞き分ける事が出来るし、自分の眼は公表資料として書いた人の本質を読めるという自負のようなものも抱えていた。
・・・
そして、その日、西村は講演依頼を受けて訪れた地方都市の商工会議所での講演で、自分の実体験から抜粋した独白を何故に語ろうと思い立ったのかを語る。
「自分の会社を外資に売り渡して、それまで国内の大企業城下町の下請けワンマン経営会社で全ての意志決定を自分でしていた頃から、グローバル大企業の1事業部として中間管理職のような責任範囲も意思決定も少なく減らした自分の経験は、自分にとっては何かに巻き込まれるかのように、いつのまにか、そうなってしまったという経験談なワケですが、ひょっとしたら、同じように、自分が抱えられる責任範囲は、どれくらいのものまでか? 意思決定とは? 状況判断とは? と悩む人の助けになるかもしれない。そう思い語ってみる事にしましたが、いかがでしょうか? 何かの問題解決のヒントになりましたでしょうか?
私が実経験をした頃とは時代が違うし状況も違います。同じような市場環境だから、どうせ、こんなものだろうと、たかをくくって浅はかな投資案件に関する判断をして失敗した経験などもありますが、それらは、これから新しく投資案件に参加する人への落とし穴のようなものになってしまうかもしれないので語りませんでした。ですが今日、語った中にも、ひょっとすると結果オーライで、たまたま失敗しなかったけれども、少し何かが違ったら破滅を招くような部分もあったのかもしれません。
自分のシステム投資案件への参加経験談を語りましたが、自分にとっては当たり前な事を語りましたが、結構に誰にでも理解されるような表現では無かったので、何を言っているのか理解できなかった人もいると想います。まあ、もし理解してみたいと思われたら調べてみて下さい。
皆さんのように地域密着型同業者団体、この商工会議所で商売をしていると、自分の中の信念のようなものもあるでしょう、自分の働く意欲を失わないために関係者に語って自分にも言いきかせるような煽るような言葉を語る事も、あると想います。
私も、ある意味、そんな誰かに語って自分に言い聞かせているような心持ちを持っているので、いつのまにか、おこがましくも皆さんに語って自分に言い聞かせているような言葉もあったかもしれません。もし、その言い聞かせ言葉が「余計なお世話だ」と想うような言葉に感じたとしたら、この会場を離れたら忘れ去って下さい。自分の価値観で意味が無いと想える言葉を気にするだけ気にするのは時間の無駄ですから。
ちなみに今、今年10月から始めるシステム投資案件の仕事に向けて、今までの3年連結決算の事業成績と、これからの3年連結決算での事業計画を関係者に内示して息を整えています。準備は山積みで、思うように進まず苦労の連続なのは眼に見えていますけれども、なんとか、やり遂げたいと想っている所です。」
・・・
「ふと、長年連れ添った妻が、これまでを思い返すように呟いた言葉がありました。
……どうなってしまうんだろうかと不安を感じた3年間だったけど、なんとか、なったね
その一言に、胸の奥が熱くなりました。
振り返れば、派手な成功など一つもない。ただ、一生懸命に直面した問題に向き合い、できる限りの努力をして生きてきただけです。余裕があれば少しだけ地域の伝統文化を伝承し、そこそこ人の役に立つ子供を育てて、いつか静かに死んでいくだろう人生でしょう。
それでいいと想えます。馬鹿げたほどの夢を追う事も無く、自分の人生を賛美するような人がいるわけでもありません。自分が関係者となって完成した巨大なインフラ・システムなども誰かが話の種にするようなものではありません。誰も完成した高速道路を誰が完成させたかとか考えませんからね。
肉体はいずれ滅びて土に還るだろうが、共に汗を流した仲間と交わした言葉や、家族と乗り越えた記憶、そしてものづくりに向き合った時に語られた言葉は世に残っていきます。
今日、自分が語った言葉も口にした途端、空気の中へと消え、その言葉に含まれた感情も消えてしまいます。ですが、その言葉が誰かによって素晴らしいと語りつがれていくようなものであれば、いつしか、何かを誰かのために作り上げてくれるのかもしれません。
いつの日か、新しい時代を夢見て起業する若い経営者が、つたない私の経験を耳にして何かの参考にでもしてくれたら。人生の岐路に立たされたとき、ほんのわずかでも一助になれたなら、これ以上の喜びは、ありません。」
そんな結びの言葉で、商工会議所が主催する若い起業家の集まりでの講演での経験談独白を西村は終えた。
・・・・
「最後は講演会で独白する長セリフで終わりって感じで? どうでしょ?」
『起承転結の結の部分ってさー、やっぱ、物語の締めなワケだよ。
いっその事、もう30年が経過しての未来で
この奮闘した社長様の努力が身を結んで評価されて
生きた証のようなものを残したと子供が語るってのでもいいし
奥様が株主として、ずーっと売り渡した会社とも関わって
『執念の●●』みたいな感じで、何かを成し遂げる後日談とかでも
この社長の独白が、色んな人の心に刺さって
色んな影響ってか、残響のように残ったってな後日談でも
そういうのが結末部分に無いとっさ
なーんか、物足りないよね? だろ?
本人が自分で自分の事を語るんじゃなくて
後世の人が客観的に見て評価したって感じの方が
偉大なる存在だったって感じがするもんだろ?
講演会で自分の偉大さを、ひけらかすって感じのラストは・・・
ちょっとなぁ? だろ?』
「最初は一人の男の独白だったのだけれども
その残響と言える言葉は大勢の人々の心に刺さり
それは単なる夢では無く現実のものと信じた人々を産み
具現化された美しくも輝かしい夢の言葉により
素晴らしくも希望溢れる未来が訪れる事となりました。
めでたし、めでたし
って感じのエピソードにですかぁ・・・・
それだとー、ここまでが導入部で
ここまでの主人公の子供か弟子みたいな存在が出現して
偉大な先導者な西村様が後世で高く評価されるようになっていく
ってな物語にしないと無理ですよね?」
『そう、偉大なる先導者と、1枚目のドミノ倒しのドミノとの出会い
って感じで、この続きを書けば、そんな感じになるよね』
「うん、そうですな、まずは色んな意味で、まだ、スッカスカな
この導入部に、どんな肉付けして
AIの次の産業牽引する仕事なり会社なり同業者団体なりで
偉大なる先人として評価される人として西村様が
多数派な人々の心の中で、歴史上の人物としてカリスマ化させていくと
それを、踏まえた上で、その最初の弟子ってか伝承者との
出会いとかって、なるワケですよね」
『ん、まぁ・・・そういう事だよ。
そうだなぁ、次の産業牽引とか、弟子ねぇ・・・
というか、こんな展開にしても面白いかも・・
40年くらい前にAIの内部構成が知識ベースと推論エンジンしかない
単純な内部構成設計だかだった時に、各国の同業者団体に勝つための
SIS・・戦略情報システムの最適化をAIでやりましょう
とか言っていた経営者様が、今、偉大な存在になって
その経営者様の知識と推論をAIに学習させて
自分が若くて優秀な経営者だった頃の分身を
経営者AI
として作り上げるための試行錯誤に
大勢の人々が巻き込まれるドタバタ劇ってのでも、いいかも』
「うん、なんか、とりとめのない感じになってきましたね
ま、今日の所は、こんなトコまでで
とりあえず、このアイデアは、しばらく寝かせ再検討って事にして
では、また次の原案検討会で」
「『「『「『おつかれさまでしたー』」』」』」




