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ゴールデン・ウイーク・シャッフル  作者: 中山恵一


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狂信 シーン3 処刑


かつてビジネス誌の表紙を飾り、持続可能な未来や人間性を謳っていた

大手IT企業『ネクサス・ソリューションズ』の本社。


その最上階にある役員会議室の空気は、凍りついていた。


「——これで全員ですね」


伊地知誠は、仕立ての良い暗灰色のスーツのボタンを静かに留めた。

かつてこの会社でデータアナリストとして働いていた頃と変わらない、無駄のない洗練された所作。

しかし、その瞳にはかつての迷いや疲弊はなく、ただ冷酷な絶対的確信だけが宿っていた。


部屋の隅には、誠の手によって既に物言わぬ肉塊と化した警備員と役員数名が横たわっている。

血の匂いが充満する部屋の中心で、頭から血を流し、ガタガタと震えているのはCEOの神崎だった。


「伊地知……頼む、金を払う! 何が望みだ!?」


神崎の哀れな命乞いに、誠は薄く微笑んだ。

その笑みには憎しみすら含まれていない。

害虫を駆除する作業員のような、淡々とした無感情さだった。


「勘違いしないでください、神崎さん。

 私はあなたに怒っているわけでも、金を求めているわけでもありません」


誠は胸ポケットから、小型の暗号化ドローンカメラを取り出し、会議室の中央にホバリングさせた。

同時に、世界の数百万人が閲覧する闇のライブ配信チャンネル、

そしてSNSのトレンドをジャックした緊急配信のリンクが有効化される。


画面の向こうには、世界中の「迷える人々」と「不信仰者ども」が息をのんで見つめている。


「世界中に提示しなければならないのです。

 『真理』に従わず、虚飾の繁栄に溺れる邪教徒たちが、どれほど脆く、無力であるかという現実を」


誠は静かにスマートフォンを取り出し、神崎の目の前に提示した。

画面には、巨大なデータファイルがロードされていく様子が映し出されている。


「これは、あなたの会社がこれまで隠蔽してきた全データです。

 途上国での不正労働、環境破壊の裏工作、そして政界への巨額の賄賂……」


「や、やめろ! それを公開されたら、我が社は……!」


「倒産し、社会的に抹殺される。そうですね」


誠の声は穏やかですらあった。


「あなたが築き上げたその『偽りの帝国』は、今日この瞬間に崩壊します。

 あなたが信奉してきた資本主義も、企業のブランドも、

 社会的な地位も、神の真理の前には何の意味もなさないゴミなのです」


誠はエンターキーを押した。

数秒のうちに、テラバイト級の機密データが

世界中の報道機関、規制当局、そしてSNS上に一斉にリークされた。

画面上では、株価の暴落と炎上する世論の通知が凄まじい速度で流れていく。


神崎は顔面を蒼白にし、絶望のあまり崩れ落ちた。

長年かけて築き上げた名声、富、社会的信用が、文字通り社会的に完全に殺された瞬間だった。


「さて、神崎さん。あなたの『社会的命』は絶たれました」


誠は冷たい手袋をはめた手で、サイドテーブルに置かれた大型ナイフを取り出した。

カメラのレンズが、誠の姿と絶望する神崎の姿を克明に捉えている。


「そして次は、不信心者への見せしめとしての『処刑』です」


誠はカメラに向かって、静かに、しかし力強い声で語りかけた。


「画面の向こうで迷っている同胞たちよ、見よ。

 神の法を無視し、偽りの繁栄に溺れた者の惨めな末路を。

 恐れることはない。この腐敗した世界を浄化する剣となれ。

 我らの列に加わり、真の覚醒を果たせ」


神崎の悲鳴が上がる。


カメラの向こうで、数万人の狂信的な信者候補たちが歓喜の声を上げ、

新たなテロリストの芽が世界中で芽吹いていくのを、誠は確かな手応えとして感じていた。

自分はただの殺人者ではない。世界を真理へと導く、最も神聖な使命を果たしているのだと。


そして、”我々”の正しさを示すために今日もターゲットを仕留めていく。

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