舞踏
あーでもない、こーでもないと言いながら台本を書いた後
数人で出かけていったのは、歓楽街のディスコ
おかしなテンションになっているのに
更にテンションの高い人々が集まる所へと行く
なんだろうなーとも思うのだけれども
言い出しっぺの座長いわく
「いや、同じハイになるにしても
こんな事をやろう、あんな感じでやろうと
ひたすら、自分達が、やりたい事だけを考えている
最近の流行語で言う所の、”根暗な演劇オタク”
と呼ばれるような感覚なハイテンションと
重低音なダンス・ミュージックが鳴り響くディスコで
女との出会いを求めて踊っている
最近の流行語で言う所の、”根明な、5時から男”
と呼ばれるような感覚なハイテンションとは
色んな意味で違うし、客観的に見ても別物」
という事らしい。
「なんでしょーね、明るいとか暗いとか
オタクとかいう差別用語を語る流行」
誰かが問う
「さーてねー、フリーターとか呼ばれる
正社員にならないで、アルバイトで働く人々を
語る単語と同じで、どこかの会社にとって
都合の良い労働者を大量生産したいから
なんじゃないのぉ?」
それに座長が応える
「そうですよねー、まあ、なんというか
集団行動教育に従って学生生活を送った良い子が
有名大企業とかに入社するまでの感覚は
クラスの中で明るく元気に
同じクラスの仲間との人間関係を大事にして
オタク、少し前の言葉で、どマニアと呼ばれるような
特定の自分が興味を持った事だけに囚われて
自分の世界に入り込んで
クラス内で孤立するか、同じオタク同志だけで
固まる悪い子を否定するからですよねー」
「そうそう、会社にとって
都合の悪い労働者、撲滅運動のための
差別用語、”根暗なオタク” なんじゃないのぉ」
「そうっすよね、フリーターって言葉を言い出したのも
リクルータとかいう求職情報誌を出している会社が
我が国の平均株価指数が
初めて10000を超えた頃に雑誌に書いたんですものね」
「なんで、んな事を知ってるのさ」
「いや、そのリクルータで、ライターもどきのバイトしてたんで
最初、バイト情報誌の編集長が作った造語だったのが
あっという間に定着して誰もが言う単語になっていったのが
とてつもなく不思議で」
「フリーターねぇ・・何がフリー・・・自由なんだ?
金のためにアルバイトしながら生きているだけなのに」
「大企業の正社員を会社員とかの
安定した給与所得者をサラリーマン
と言うのと区別する言葉が必要だっただけでしょ
んで労働者という意味では同じでも
不安定な随時契約社員なバイト生活者を
底辺労働者と差別して優越感に浸るために
元同級生のバイト生活者とかを
そう呼ぶ事が大流行したってワケでしょ」
「ウチラの中でも、いるからねー
世間の客観的な眼からすると、そう見える人
舞台演劇をするために
正社員にならないで時間の都合がつくバイトだけしていて
いつか役者として、演出家として、脚本家として
成功できるかもしれないと夢見ている人とか多いけど
その成功を手に出来る人は・・」
「少ないわけですよね」
「たいがいは、30歳になるくらいまでに
自分の才能とか、自分の器の大きさとか
そういったものが評価されるほどのものじゃない事を
思い知って、舞台演劇の世界を去るし
小劇場の並ぶ、この街から出て行くしかなくなるんだよね
だから、多いだろ?
田舎の同族会社オーナー社長一族の
ボンボンとか御嬢様
もし駄目でも、田舎に帰って自営業として
会社経営をする一族と一緒に働けば
やっていけるから
まあ、不景気になって、
その地元では有名な優良中小企業が
淘汰されて無くなったら
帰る場所が無くなってゼロから何かを始めないと
いけなくなるみたいだけど」
「いーなー、頼れる御親族がいて」
「いや、親族だからこそ甘えを許さない
厳しい指導みたいですよ?
だって、アレを
やりたがるだけのヘタクソな男は
女と一回だけ一夜を過ごせても
2度と相手にされなくなるだろ?
それと同じで
働き者な所を見せたいだけの
働きたがるだけで
職務遂行能力や、職務把握能力とかが
低いから、仕事をしているようには見えない労働者も
会社に必要無い存在らしいですからね」
「なんじゃ、その職務遂行能力や、職務把握能力って」
「リクルータのヘッドハント会社で
労働者の能力を査定するのに使ってた単語っすね
仕事に必要な事を理解するための職務把握能力
仕事として成立させ続けるために必要な職務遂行能力
それを判定するために面談して
今まで仕事をしながら訓練されてきた事を
聞きだしたりしていての労働者情報データの名前です」
「そっかー、会社って
我が社の職務を遂行できる職務遂行能力と
我が社の職務を把握できる職務把握能力を
兼ね備えた人材を採用したいものだから
って事で作られた言葉かぁ」
「まあ、なんか、ディスコで話すような事じゃないですね
入場料だけで、一晩、フリードリンク、フリーフードな事ですし
さ、飲み食いしましょーか」
「そーだな、そして、たまたま会った
人間的に相性のあう女がいたら
持ち帰りするためにフェードアウトしていいよって事で」
「ばーか、御前じゃ無理だ」
「わかってんだよ。言ってみただけ
女と関わろうとしてみて、どうやったら相手にされるか
どうせ今まで通り、いつも通りの日常に戻ろうとするだろうけど
どうやったら、自分と一緒に過ごす時間を増やして
引き止められるか
そういう事に頭を使ってみても、いいだろ
どうせ、こんなとこで遊んでいる女に
相手になんか、されないだろーけど」




