子役(鴨宮のドサ回り日記10)
女剣劇をやっている一座と合同食事会
伝統ある江戸時代から続く旅芸人一座なので
未成年らしき声変りしてない男子も混ざっている
(自分も18歳で未成年なのだけれども)
ためしに話してみると
親と同じように大衆演劇役者として一生を生きる
というような事を
誰かに語って自分に言い聞かせるように語る
年齢を聞いてみると中学2年生
世間では反抗期とか思春期とかいう年齢だ
「学校とか、友達づきあいとか?どうしてるの?」
そう聞くと
『凄く短い間で転校する事になるから
小中学校が同じな幼馴染とか親友とかいません
それは、いいんです、どうせ子供なんて
自分勝手で我がままだから一期一会で
その時、限りの短いつきあいで
これを言うと自分も子供なクセにと言われますから
学校じゃ言った事は、ありませんが
でもですね、もしかしたら、また同じ場所で
公演する事もあって御客様になってくれる
・・・かも・・しれないので
礼儀正しく常識的に見られるような態度をとってますよ
両親が町内会つきあいとかPTA活動とか
一切やらないかわりに少しだけ可能な限り
そういう活動とかにも参加するようにしてます
役者さんとかで、非常識な無礼者で破天荒な
何をやるか、わからない歌舞伎者でいいとか
色事遊びは芸の肥やしとか
言って馬鹿な真似をする人もいますが
そういう非常識な礼儀知らずで自分勝手なのを
ひけらかすような事は、するな
と女剣劇の主役を張っている母親に
言いきかされているので』
「そっかー、でも、随分と子供らしくないねー
大人に混ざって、もう仕事しているから
普通の中学生の感覚からズレてるな
って自覚とか、ある?」
『子供らしい可愛げのある態度をとった方が
正解な場所じゃ、そういう態度をとるようにしてますけどね
その方が大人にウケるんで
でも、小学校・中学校と同じ年齢の学友だけと関わって
関わる大人は親や親戚だけで
同じクラスの同年代の子供だけの世界での日常を
過ごして集団行動の大事さを勉強する
そういう同年代の子供とは集団行動に関する
感覚自体がズレているなとは自覚してます
というか、つられて同じような感覚になったら
大衆演劇一座の子役なんか、やってられなくなりますし』
「ふーん、そっかー、君の年齢くらいの時には
考えた事すら無かったなー、集団行動に関する感覚かー
やっぱ大衆演劇一座で集団行動するための感覚と
良い高校へ、良い大学へ進学して、
有名大企業や公官庁で働く社会人になって
その大企業本社や、公官庁街で出世して管理職になっていく
仕事のために生きる人間を目指せさせるための集団行動とは
違うもんだからねー
でも、そういう集団行動を指導するような
教育を受けている学校の先生とかと揉めない?」
『いや、だから揉めるも揉めないも無いですよ
短い間だけで、さようなら、ですからね
中学校の先生にしても、自分の給料に関する査定とかは
担任した卒業生とかが、どれだけの人数
地元の進学高校へ進学したかとかでしょうから
自分の出世に関係ないからと何も言ってきませんよ
どっちかっていうと揉めて面倒なのは・・・
どこの中学校に行っても必ずいる
”まあ、旅芸人一座のガキだあ、この地元じゃ偉い家の
差別する側の俺様が、差別される側の貴様を
仲間外れにしないで相手にしてやる”
って感じな
一生を地元で過ごす事が確定している
親が地域密着型の同業者団体の親方職人で
自分も親のような親方になる事を目指して
同じ職人に舐められないようにする訓練を
同じ中学校の人間と一緒にするよう親に仕込まれている
親方職人見習いな御子様ですかね
奴等からすると、短い間で、いなくなるヨソモノなんで
舐められて、あそこの奴等は、どうせ、こんなもんだと
どこかへ行って言われるのが嫌だから癪だからと
いる間に、舐められないようにしたいらしいんですよね
何をやるかと言えば・・・しょーもない嫌がらせやイジメ
どうやって、それから逃れるか
誰が、そういう嫌がらせ用ってか攻撃用戦闘員かを
判定するのが、毎度なんで慣れましたけど
そういうのを避けるのが大変です』
しばし、母親に似た、キリ眉で目鼻立ちがハッキリした
その子の凛々しい顔を眺めながら聞いてみる。
「そうなんだ、小学校じゃ男ばっかの内輪揉めが面倒だから
どうやったら女にモテるかの色恋沙汰の話にはぐらかすとか
無理だろうからねー」
『中学生になってから、ある所で、やってみましたけど
可愛い娘様のいるPTA協議会だかの偉い元市会議員様だかが
けしからーん、なんだ、このヨソモノはー
男子は男子同志で固まって、強くなるために拳で語り合わんか
私が大日本帝国の軍人となった頃は、そうしていたぞ
女子と関わるのは家が決めた結婚相手とだけでいい
とか言い出しましてね、その偉い人の娘様に
ちょっかいをかけた悪者扱いされて
大変な事になったんでー
それから、やるにしても、そういう偉い人の異常様
じゃないや、御嬢様には何も仕掛けないようにしてます』
「そっかー、中学生って青春時代とか言われて
楽しい時期って語る人がいるけど大変なんだね」
『大変だった事を忘れて、楽しかった事だけ覚えてて
昔は良かったねーと言っているからでしょ
小中学校の同級生どうしで結婚した夫婦とかが
ま、大衆演劇役者になるための修行の一部と割り切って
こういう形式が決まった集団行動や人間関係の大変さを
逆に楽しめる感じで学生生活を送ろうとは思ってますよ。
まだ、義務教育が、もう2年くらい
高校卒業するまで、5年くらい学生生活が残っている事ですし』
「でもさ、やっぱ、女剣劇の主役をやっている母親みたいに
主役をはれて追っかけがつく役者になりたいんだろ?」
『そうですね、色々と出来るようになれば、いずれは』
「そっかー、色 々 と出来るようにかー、頑張れー」




