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音源


バイトも休み、リハーサルも無いので

効果音とかの製作作業を手伝う事になった。


そして、やってきたのは、練習スタジオ

オールナイトパックで一晩、借りたらしい

週末だと料金が高くなるけれども

平日の夜なので安く借りられるという事だった。


「えーっと、まあ、ちょっとした雑務なんだけど

 協力してな、今日一日、よろしっく!」


『はい、よろしく』


「えーと、まずな、このーブルース・ロック・バンドで

 最初ワンマン・リーダーなギタリストだったんだけど


 ツアーで疲れている時に麻薬に溺れて

 役立たずになって主導権を

 ボーカルと、もう一人のギタリストに握られて

 バンドを追い出されるっていう


 破滅的な生き方をした伝説ミュージシャンが

 一枚だけ残したソロアルバムの曲


 ワールド・ミュージックなんていう

 日本じゃ売れないし誰も知らないジャンルの音源だから


 パクっても大丈夫なんだよね」


『え、という事は、こっちのテープとかに入ってるのも』


「そっちもね、まあ、同じような逸話のある人のだね


 ギタリスト兼ボーカルで

 ファースト・アルバムだけ、ほぼ全曲作詞作曲したけど

 最初のツアー中にドラッグに嵌って

 心の病気になって、バンドをクビになった後

 2枚だけ出したソロアルバムの有名じゃない曲と


 完全に使い物にならなくなって

 アルバムは作らせて貰えなくなったけど

 実験的にライブだけやって、客席ガラガラで

 そのショックで引退して

 隠遁生活に突入してしまった時の海賊版ライブ音源


 アシッド・フォークって知られてないジャンルだから

 これもパクっても大丈夫」


『よく、これだけ自己破滅的な、今では一部の、どマニアしか

 知らないような みゅーじしゃんの音源を

 コレクションしたもんですね』


「んー、だって、いまだに人気があって

 売れている有名なバンドマンとかの曲だと

 パクったら、もろにバレんだろ


 だから、その有名バンドから叩きだされた

 破滅的な社会生活不適応者って感じの人の作品なら

 少しだけ音色が似ているけど

 曲の構成とか、色んなものが違うからな」


『なーんだかなー

 音をコレクションしているって言うより

 そういったバンド運営のドタバタとか内輪もめとか

 追い出されたのの悲惨な末路とかの物語を拾ってません?』


「うん、まあね。

 太く短く生きて死んだ自己破滅的な天才ってさ

 なんとなく面白いもんじゃなーい」


・・・


『これなんか、なんか面白いってか使えません?』


「あー、ベースとドラムが、リーダーとサブリーダーな

 ブルースバンドにいたギタリストのソロ曲集ね


 ツアー中に新興宗教の教祖になる事を決めて脱退した方のかー


 いやー、これより、脱退して数枚ソロアルバム出した後

 アルコール中毒になって

 ホームレス救済センターで死んだのの方が


 どっちかっていうと好きなんだけどなー俺的には


 んで、この教祖様の宗教音楽パクリのソロアルバム音源

 どこのシーンに使うって」


『説教クサイ事を語るシーンに使えません?』


「そうかな? そう思う?

 ためしにビデオと一緒に流してみよーか?」


そして流してみた後


「そーだね、うん、でもだ、まんま使うと


 マニアが気づくから、ギターリフじゃなくて

 電子ピアノでのリフにして、リズムをモダンジャズっぽくして


 昔々、亡国の独裁政権の独裁者が

 群衆を洗脳するのに使った洗脳周波数に調整すれば

 いけるかな?」


『へ? 洗脳周波数? なんすか? それ?』


「いやー、言われてみれば、そんな感じがするって感覚ってね

 作れると信じて本当に作った人がいたんだよね


 ディスコとかに行くと、凄い興奮を煽る重低音が

 強烈に強調された音が流れているだろ


 あれと同じで洗脳効果のある周波数ってあるんだよね

 演説シーンのバックに流したら

 そんなに上手じゃない演説でも

 説得力のある感じに聞こえるってね


 んだから洗脳周波数って呼んでる造語


 この元ネタを考えた音響心理学だかの

 学術理論の用語じゃ違う単語らしいけど

 そんなのを知る必要も無いしね」


・・・


そして、サンプリングしたり

リズムを入れ替えたり、している中


「ミドルエイトを入れ替えて」


と言われる。その用語自体が理解できず聞く。


『ミドルエイト? なんですか? それ?』


「一番目立つ、リード・ボーカルやギターと

 ドラム・ベースのリズムトラックの合間に


 挟まるような感じで鳴っている

 リズムギターや、隠し味アコースティック・ギター

 みたいな音の事


 ためしに、これのミドルエイト

 渋いモダンジャズ・ピアノだから


 ・・・こんな感じの曲なんだけど


 こうやってレゲエ・キーボードに変えてみると


 ・・・・ほら、同じリズムとボーカル・ギターでも

 全然、違う音像に聞こえるだろ?」


と説明される


で、言われた通りにミドル・エイトを差し替えたり

あれや、これやと、あーでもない、こーでもないと

いじくりまわしている内に一晩が過ぎ


「あー、これさ、劇伴に使うだけじゃなくて

 音源買取会社にも持っていくから

 もし採用になったら、買い取り額の何割かを払うから

 楽しみにしててね」


『へ? どういう事っすか?』


「CMソングまでいかないBGMとか

 ちょっとした番組内BGMとかをさ

 作っている会社にコネがあるんで

 そこで買い取って貰えたら金になるんだよね


 有名な大先生だと1曲150万とかだけど

 俺等とかじゃ、1曲5万円くらいにしかだし

 そもそも採用されて買い取って貰える事も少ないしね


 ま、期待しないで待っててよ


 たまたま、気に入られたら金になるって程度なんで」



『はい、期待して待ってます』


結局、採用されなかったようで支払いは無かったが

たまーに、CMで流れる音で似たような音が流れると

ひょっとしてとか思うようになった。


同じような元ネタからサンプリングした人がいて

それがCM製作会社に採用されたってだけなのに

なんとも変な感覚だ。


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