魔物農場 シーン4 オーク同志の対立と決着
(フジワーラと、トージョーが立っている前に
農場の魔物達が集まってくる)
2月の寒い日曜日、魔物農場の納屋で
農場防衛の問題に関する投票が実施された。
”ミノタウロス舎の戦い” に敗れたとはいえ
鬼人たちが農場を取り返す作戦を練っていることは
十分に考えられたし、彼らにはそうする理由があった。
というのも彼らの敗北のニュースは田園地方一帯に広がり、
近隣農場の魔物たちを反抗的な態度にさせていた事から
周辺のオーガ農場主が、何かを仕掛けてきそうで
それに対する対策が必要なためであった。
魔物たちはフジワーラの農場防衛話を聴き、
次にトージョーの農場防衛話を聴いたが
どちらが正しいのかわからなくなってしまっていた
彼らは、自分なりに考えて自分の意見を持つ習慣が無く
自分以外の魔物の誰の意見を受け入れるのが正解なのかを
判定するだけとなっているのが当たり前になっていたが
二匹のオークともに素晴らしく正解に思える演説をしたため
演説での意見に常に納得してしまい正誤を判定できず
この日曜日の会議で、どちらの意見が正解なのかを
多数決で選ぶための投票がおこなわれる事となった。
農場防衛に関する問題に関する意見は二つに割れ
いつものようにトージョーとフジワーラが対立していた。
フジワーラによれば
「魔物農場を手中に収めた我等が今すべきなのは
銃を手に入れ使い方の訓練をして
鬼人が、この農場を手に入れようとしてくる攻撃に備え
戦える体制を築く事だ
自分たちの身を守ることができなければ
鬼人により支配される農場の奴隷に戻されるだけだ」
一方、トージョーは
「多くの伝書鳩を他の農場の魔物たちに送り
同じように反乱を起こし鬼人の支配から脱させるべきだ
そして同じ魔物同志で団結すべきだ。
そこら中で鬼人への反乱が起こり
鬼人だけが支配者な体制が崩壊すれば
少なくとも我等の農場への集中攻撃は避けられ
同じように農場経営をする魔物と連携すれば
鬼人からの干渉を無くし完全なる自立が可能になる」
と主張した。
投票の朝、魔物たちが大納屋に集まると
まずトージョーが立ち上がり主張した。
反対弁論にはフジワーラが立ち
彼は静かに他農場との魔物連携は無意味であり、
その意見に賛同して投票すべきではないと語り座ってしまう
演説は三十秒ほどで演説の効果に興味がないようにすら思えた。
次にトージョーが立ち上がり、情熱的に魔物団結支持を訴えた。
それまで魔物たちはどちらを支持するか決めかねていたが
トージョーの雄弁が魔物全員を引き込んでいき
彼は言葉を重ねて未来の魔物農場の姿を描き出していった
今や彼の想像力は単純に鬼人の支配からの脱却だけに留まらず
様々な権利を手中に収めた未来についても語った
どちらに投票すべきか疑いようがなくなると
トージョー自身が感じるまで話すと演説を終えた。
演説後、フジワーラが立ち上がり、
独特な空気感を醸し出しながらトージョーを横目で見やると
今まで誰も彼がそんな鳴き声を出すところを
聞いたことがないような高い声で鳴き声を発した。
(フェンリル登場)
その瞬間、恐ろしい吼え声が外から響き渡り
真鍮の鋲をちりばめた首輪をつけた
数頭の巨大なフェンリルが納屋に入ってきて
トージョーに向かってまっすぐ駆けていった
フェンリルの牙を避けようとトージョーは逃げだす
ドアの外へ飛び出ていく後をフェンリルたちが追う
驚きと恐怖のあまり声も出せずに魔物たちは全員が追跡劇を見守る
トージョーは道路へと続く長い牧草地を横切って走っていく
オークに可能な全力で走ったがフェンリルたちは足元にまで迫り
彼は滑って転びフェンリルたちが捕らえたかに見えたが
再び立ち上がると今までよりも速く走り始め
フェンリルたちは再び追いすがって食らいつこうとする。
フェンリルの一頭はトージョーの尻尾に噛みつけるところまで
近づいていたがトージョーは尻尾を振ってそれを逃れ
そして彼は最後の力を振り絞って力走すると
垣根に開いた穴をすり抜け、姿が見えなくなった。
静寂と恐怖が訪れ魔物たちは恐る恐る納屋に戻った。
その時、フェンリルたちが戻ってきた。
彼らはフジワーラが彼らの母親から取り上げ、
こっそりと教育して育てた子フェンリルたちだった
まだ子供だというのに巨大で恐ろしげな顔は凶悪
彼らはフジワーラの傍らに控える
その尻尾を振る様子は、かつて他のフェンリルが
鬼人農場主のそばに控えていたのと同じであった。
フジワーラは、フェンリルたちを引きつれ
キンムーがかつて演説をした時に立っていたのと同じ一段高い床に登った。
「今この瞬間から日曜の朝の会議は取りやめる。
不必要で時間の無駄だ。
これからは農場の労働に関わる全ての問題は
私が議長を務めるオークたちによる特別委員会で審議する。
特別委員会は非公開でおこなう、開催後に決定を皆の者に伝える。
君たちは日曜日の朝に集まり、その週の作業指示を受け
作業だけに専念してよろしい
君たちにとっては時間の無駄に感じ面倒なだけであろう
聞いても理解できない議論を聞かなくてもよいし
何かを語ろうと参加する必要とかも無い
その方が良いであろう?
だが、我等は他の農場のオーガ農場主に支配されている
魔物とは違う
自立して自分達で農場を運営している魔物なのだ」
トージョー追放の衝撃と同じくらい魔物たちは愕然とした。
もし上手く考えをまとめられれば抗議したことだろう
何かがおかしいと思い、なんとなく感じた不安を口にしようと
考えを整理しようとしたが、どう何を言えば伝わるのかが
理解できず、結局は何も言い出せなかった。
しかしオークたちの何頭かは少しだけ心に抱えた怒りを語ろうとした
前列にいた四頭の若い食用オークは、フジワーラの独裁に反発し
反対意見の声をあげ四頭全員が一斉に自説を主張し始めたが
フジワーラの周りに座るフェンリルたちが
低い威嚇のうなり声を上げると静かになって黙りこんだ。
(魔物の前にヒデヨッシーが立ちはだかる)
その後、ヒデヨッシーが新しい体制を他の者に説明する。
「農場に生きる魔物諸君
フジワーラ同志が、皆がバラバラに語る諸意見を取りまとめ
みんなの意見を元にした総意により
委員会で様々な決議を執行する
という過酷な職務を遂行するという自己犠牲に対して
ここにいる全ての魔物が感謝している事であると信じている
農場全体率いていくという職務にかかる重責は大変重い!
多様な感情や意見が発生する中を
皆が納得する正しい方向を導くには
深く意味のある思想が 発言が 行動が 必要なのだ
フジワーラ同志以上に農場の魔物のために生きよう
としている者はいない
君たちが君たち自身で、今、何を行うべきなのかを理解していて
最良の道を選んでいけるのであれば、それは素晴らしい事だろう
しかし、時として君らは間違った道を選びそうになる
同志よ、もし間違った道を選べば、我々は、どうなる?
君たちが、大ウソつきで意味の無い馬鹿げたトージョーの
戯言を支持して言う事に従っていたら、どうなったか?
今になってわかったことだが、
トージョーは我々の存在を脅かすような思想を持っていたのだ
そのような存在は我々の中から排除するしか無かった
君たちも、そう感じると信じている!」
「トージョーは、ミノタウロス舎の戦いで
鬼人達を追放するため、勇敢に戦った」
と誰かが言った。
「外敵に対して勇敢で好戦的なだけで我等は生きていけない
我等が運営する魔物農場全体の維持のために必要なのは
我等に対する忠誠心と帰属意識が重要なのだ
わかるね? 帰 属 意 識 だ
我 等 に 帰 属 し て 生きる 意 識 だ
ミノタウロス舎の戦いに関して言えば、
いずれ トージョーが果たした役割が
過大評価されていた事を皆が気づく時が来ると思う
規 律 だ。 同志諸君、 鉄の 規 律 だ !
それこそが 今 我々に必要な事なのだ。
トージョーの不正は! 思想汚染は!
醜く歪んだもので規律を破壊するだけのものだった。
同志諸君に問おう!
鬼人族である元農場主に戻ってきて欲しい
奴隷だった時の方が楽だったから、奴隷に戻りたい
などとは思う魔物は、ここには、いないだろう?
トージョーの堕落を招く退廃的な思想は
奴隷に戻るように我等を誘導するような
間違った悪影響を与える思想だったのだ
我等の心の中に存在を許されるべきではない思想では無い!
トージョーは排除されて当然の存在だったのだ」
ヒデヨッシーの懐柔演説に誰も反論できず
言われてみてば、そうなのか?
いや、そうなんだろうな
という感覚を魔物達の心へ刻み込み
その日の魔物集会は終了した。
・・・
「このシーンあたりで始まってから15分くらい
平均的日本人の感覚というか生理的な感覚で
集中力ってもんが落ちる時間になるワケなんで
なんか、疲れるなあとか、眠いなぁとか
引き込まれるような要素が無いと
感じてしまうワケなんだけど・・・
なんか、ないもんかな、それを打破するようなの?」
『んだから、丁度いいんじゃないんですか?
内輪もめ対立シーンからの追放劇なシーン
3人の内、1人はいなくなり2人だけが残った
ってな過激な感じが眠気ざましって感じで』
「そーだな、フェンリルとトージョーとの
追いかけっこシーン
これを、どれくらいの長さにするかか・・
丁度、この当たりで開演から15分で
普通の人間は集中力が堕ちるから
なーるべく派手なチェイス・シーン
って感じにしたいよね
フェンリルやる人で誰かアクロバティックな
動きとか出来る人。いる?」
『はーい、体操部でっしたー
ちょっとした軽業師っぽいのなら、でっきまーす』
「軽いね? 本当に大丈夫?」
『はい、泥船に乗ったタヌキになったつもりで任せて下さいー
大丈夫っすよー、はははー』
「とりあえず、ツッコミどころ満載にボケるんか?
一応だけど、笑いとろーとすなよ?」
『わかってますともー
”人は一人では生きていけない
でも、人が集まると、何故か、こうなる”
ってな
ニンゲン性ならぬ、ケダモノ性を表現するんですよねー
まっかして下さいよー』




