魔物農場 シーン3 最初の冬
鬼人種である農場主を追放した初夏から時は過ぎ
夏が終わり、収穫の秋が来て
魔物農場となって最初の冬となり年が明けた
1月になって天候はひどく荒れ
大地や空は鉛色となり畑でできることは何もなかった。
大納屋では毎日のように多くの会議がおこなわれ
オークたちによって来期の作業計画の立案がされていた。
オークが他の魔物たちよりも明らかに賢かったので、
農場運営に関する全ての問題を取り仕切るようになったのは
自然の成り行きだった
農場の魔物からも不満は発生しなかった
というか不満を抱えるほどに様々な事を理解していなかった
いつのまにか農場経営の主導権はオークが握り
色んな事柄への決定権を掌握するようになっていた。
最初、魔物主義をまとめ、他の魔物を説得するまでは
協力関係にあった三頭のオーク
トージョーと、フジワーラ、そしてヒデヨッシーであったが
トージョーとフジワーラの二頭は対立するようになっていった
対立できる議案で常に対立し、論争を繰り広げるようになり
それぞれに取り巻きがついて猛烈な討論がおこなわれた
会議では、その素晴らしい説得力のある演説で
しばしばトージョーが多数決で勝っていたが、
フジワーラは会議の合間の時間に
自分の支援者を集めることに長けていて
ヒデヨッシーも、フジワーラの支援者として取り込まれた。
ある夜、フジワーラは、ヒデヨッシーを
農場主屋敷だった建物の一室へ招き、これまでを総括する
(フジワーラ、ヒデヨッシーが舞台へと出てくる)
「我等は幸運であった。
今でも信じれないほどの奇跡が起きたのだ
この農場にある全てが我等のものとなった
憎むべき鬼人どもの支配痕跡を拭い去り
鬼人農場主を思い出させるもの全てを処分
そして鬼人を農場から追放した翌朝の
目を覚ました時に感じたオーガ支配からの解放感
牧草地、農場全体が見渡せる丘
その頂上から見た明るい朝の光の中での農場全景
我等の物となった……目にはいる全ての物が自分たちと想えた!
有頂天になって跳ね回り、興奮のあまり高々と宙に飛び上がった。
朝露の中を転げ回ったり、甘い夏草を口いっぱいにほおばったり
黒土の塊を掘り返してその豊かな香りを嗅いだりした。
なんだろうな、オーガの言葉で
ポゼッション・オブセッションとか所有欲とか言うものが
満たされた感覚なのか? あれは素晴らしい感覚であった」
『そうでしたなぁ、あの感動は我等の心に残るでしょう
いや、永遠に我等オーク一族の間で語り継がれるでしょう
最初の日、農場全体を点検して周り、
耕作地や干し草用の畑や果樹園、沼や雑木林を
無言の賞賛と共に調べていった時
毎日、視界に入っていた景色なのに
今まで見たこともないようなものに見えましたなぁ
全てが自分たちのものとなったことが
最初、信じられなかったものですよ。
そういえば、魔物主義を浸透させ、魔物農場を運営するために
必要な農場の戒律を定め、皆に周知したのも、あの日でしたな』
「そう、農場の戒律を始めとして、オークである我等は
数々の困難を克服する方法が考えだしてきた
我等は実作業をするべきではない
作業指示を出し魔物達を管理すべき存在なのだ
勤勉に農場経営に関する豊富な知識を学び
優秀な頭脳により作業項目や作業指示を考えられる我等が
リーダーシップをとるのが当たり前なのだ
状況に合わせての指摘、指導をした事により
夏の間中、農場の仕事は時計のように正確におこなわれた
我等は考えられないほど幸福を手に入れた
食事の一口一口が大きな喜びを与えてくれた
それは自分たちの、自分たちによる、自分たちのための食事であって
鬼人オーガの御主人様からの施しものではないのだ
無価値な寄生虫である鬼人が農場から消えたおかげで
皆の食事の量は多くなり、
今まで概念自体が無かった
”余暇の過ごし方” という概念を持てるようになった
秋の収穫時に昔ながらの方法で収穫を挙げる時も
優秀な我等オークの知力と、素晴らしい体力の持ち主であるペガサスにより
滞りなく収穫作業が消化され、かつての生活では当たり前に見られた
馬鹿げた喧嘩、嫉妬は、ほぼ無くなった
であるが、我は不満である
あの、トージョーが立ち上げた魔物共闘委員会だ!
あんなものは、どうでもいいものだ。
あんなものを編成することに、なんの意味がある
全く理解できん、我等にとって害悪でしかない、そうだろう!
魔物といえど、いる農場によって違う
この農場にいる魔物でさえ違うのだ
違う農場にいる魔物と連絡をとる事に、何の意味がある?
同じ魔物が集まれば、必ず内輪もめが発生する
集まった魔物が多ければ多いほど揉め事は増えていく
そんな当たり前の事すら理解せずに
”同じ魔物なのだから、連絡し合い理解しあおう”
などと寝言をほざきよった。なんという愚か者なのだ奴は!」
『まったく、その通りで御座います』
「それに、奴が言ってた
” 農場内において
既に年をとった者に対して敬意を払おう
長く農場のために貢献したら
貢献年度に応じて賞されて然るべきだ "
何だ、あの馬鹿げた戯言は
そんな事より若者の教育の方が重要だ
何も心に描かれていない若者の心に
我等のための言葉だけを刻み込むのだ
新しさについていけなくなり
昔は皆のために働けていただけな
働けなくなった魔物を賞賛して何の意味がある
今から長年、働ける未来がある
若者を賞賛する事が大事であろう
今月、フェンリルが数匹の健康な子を産んだ
魔物農場となってから生まれた子の教育については
我等に責任がある
母親の元から引き離す事になるが、いたしかたない
農場の他の魔物の視界に入らない場へ隔離して
我等のために教育しよう
親にしても周囲の魔物にしても
小さなフェンリルの存在など忘れるだろう
鬼人達は軍とか警察とかいう
治安維持組織を持っているだろう?
あのフェンリル達を農場内で同じような機能を持つ
組織の一員として教育するのだ」
『さすがは、フジワーラ様、素晴らしい
あのフェンリル達を教育して
我等にとって必要無くなり害悪な存在となった
トージョーのような邪魔者を淘汰する
治安維持組織を設立しましょう』
「そう、奴のような存在は必要無い
悪い見本となり、不要な存在が増えるのも、いかん
我のような存在こそが、この魔物農場に必要なのだ」
・・・
といった二頭のオークによる掛け合いシーンの読み合わせ
「これじゃー、ちょっと面白くないよね
なーんか、エッジが無いってかさ
目鼻立ちが、はっきりしない、のっぺらぼうってか
とっかかりのない、ツルツルな感じってか
もっと、極悪な感じを出した方が、いいんじゃないかな
なーんか、ぬるーい よね。
内輪もめからの追放謀略ってのはっさ
もっと、こう、悪意が悪意を呼んで
憎悪が憎悪を呼んで爆発する感じなんじゃないの?」
『そう、じゃっ! ばーんばん変えていいから
君の脳内にある、カッコいい悪役のイメージでは
こんな心に刺さるセリフを言うはずに違いなーい
って感じでさ』
「はい、んじゃ、そうさせて貰うよ
物語の大筋は壊さないようにセリフを考えとくね」
「えーと言っとくけど
越後屋と悪代官の悪だくみ高笑いシーン
”越後屋、お主も悪よのう”
”お代官様こそ”
げーっへっへっへ、でーっへっへっへ
てな定番パターンは駄目だからな」




