魔物農場 シーン2 魔物主義と反乱
キンムーの死後、農場にいる魔物の中では
賢い魔物オークの中で主導権を握ったのは
トージョーとフジワーラという名の若い繁殖用オークと
ヒデヨッシーという名の食肉用オークの三頭だった
フジワーラは大きな外見の繁殖用オーク
寡黙だが独自の考えを持つ雄
トージョーはフジワーラと比べると陽気なオーク
演説は早口で、とても独創的な発想を語る雄
フジワーラと比べると語る言葉は軽薄であった
そして食肉用オークの中で、優れた弁舌によって
頭角を示した小柄な、ヒデヨッシーというオーク
(舞台に三頭が登場する)
キンムーの演説は新思想を魔物に与えた
キンムーじいさんの思想を三頭は
魔物主義という名の思想体系にまとめあげ
農場の魔物への教育と、反乱のための組織作りを開始した
週にいく晩かは納屋で秘密の会合がおこなわれ、
魔物主義の原則が他の者に詳しく説明された
はじめのうちにオークが直面したのは無知と無関心だった
どうせ、強いオーガに従う以外に生きる道は無い
しょせん、オーガが生きていくための道具な俺等が
何をしても、何も変えられない
というオーガによって植え付けられた無関心
どうせ、変わらないんだから無駄
何も考えずに穏やかに生涯を過ごせれば
それでいいんじゃないの?
何で面倒な事を始めようとするの?
いいじゃない何も変えないで今まで通りで
変えると変える前の方が良かったって誰もが言うよ
というオーガによって作られた常識を変えないで
今まで通り、いつも通りに過ごしたいという願望からの無知
オーク達は、それが魔物主義の精神に反しているのを
彼らに理解させるための説得に苦労した。
(舞台で、他の魔物の前で
オーク役が各々に魔物主義の精神を説明する)
(舞台から魔物が退場、入れ替わりに農場主と使用人が登場
ナレーションにあわせて パントマイム)
厳格で有能だった農場主は悪夢の日々に突き落とされた
隣接する農場による損害賠償請求裁判で負けて金を失い
落胆して、毎晩、浴びるように酒を飲むようになっていた。
使用人たちは酔っぱらって何も語らなくなった農場主を横目に
怠惰で不真面目になり、牧草地には雑草が生い茂り
屋根には穴が開いたままで、生垣の手入れもされず
魔物たちへの餌やりも滞り、魔物達は栄養不良になっていった。
真夏のある土曜日の晩、農場主は酒場で大量の酒を飲んだ
使用人たちは早朝にミノタウロスの乳をしぼると
魔物の餌やりをさぼって街へと遊びに出かけてしまった
農場主は帰ってくるなり応接間のソファーで眠ってしまったので
日曜の夕方になっても魔物たちには餌が与えられないままだった。
空腹に耐えられなくなったミノタウロスの一頭が
貯蔵庫の扉を角で破り、ようやく全ての魔物が飢えから逃れた。
(舞台には、農場主と使用人、そして魔物達
ナレーションにあわせて 乱闘アクション)
その貯蔵庫の扉が破壊された物音で農場主が目を覚ました。
すぐに彼と四人の使用人が手に鞭をもって
そこら中を打ち鳴らしながら貯蔵庫にはいってきた。
空腹には耐えた魔物たちの鬼人への怒りが爆発した
彼らは自分たちを苦しめる相手に飛びかかり
鬼人達は突然、殴られ蹴られることになってしまう
今まで従順に従ってきた魔物たちが
こんな行動に出るとは思ってもいなかったのだろう
この突然の蜂起に彼らは頭が真っ白になるほど驚いた
すぐに鬼人達は戦うのをやめて逃げ出し、
数分後には勝利の歓声を上げる魔物たちに追われながら
全員が街道に続く小道を飛んで逃げていき
魔物たちは鬼人達を追い出すと門扉を閉めた。
こうして反乱は成功裏に達成され
鬼人農場主は追放され
農場はオーガによる支配から脱した。
これが後に、ミノタウロス舎の戦い
と農場の魔物に呼ばれる事になった
農場主オーガから農場所有権を奪取した出来事である。
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「ナレーションにあわせてパントマイムって
どんな感じなのか、もっと具体的に書いて欲しい
ほとんど初心者みたいな人もいるんだし」
『いや、各自、自分が演じるなら
こんな感じの魔物や鬼人が良いんじゃないかって
いうものが、もうあるよね?
小劇場じゃ初心者って言っても
高校とかの演劇部とかで、やってて
あの瞬間を、もう一度ってのが、あるよね?
通し稽古までに自分の演じる魔物は
こんな態度をとるキャラなんじゃないかって
自分で考えてきてくれるかな?
なんでも自分で考えないと上手にならないもんだって
どう考えても違ったら指摘するから』
「アクションシーンは?」
『アクション監督もやる予定なキンムー役さんが
そこらへんは考えているはず・・・そうですよね?』
「えーと、そうですね、ここはプロレスのバトルロイヤル
ぽい感じで暴れてもらいます
トップロープを超えてリング内から追い出されたら
そこで負けってルールのバトルロイヤル
特に最初に一番大きな2メートル超えの巨人レスラーと
前回チャンピオンを残りの全員で追い出すシーン
こいつらと最後の2人になったら負けるから
何が何でも最初にリング外へ落そうと
数人のレスラーが協力して叩きだし
最後の1人だけがリング場に残り決着がつくまで
叩きだし合いをするってな試合
プロレスの20人バトルロイヤルのビデオを
ダビングして何本か回すんで見て下さい
この巨人レスラーの立ち回りを農場主役の人が
前回までのチャンピオンの立ち回りを
農場使用人役の人に、やってもらいます
まあ、こういうのは色々あったけど
1973年頃の香港カンフーブームとか
1974年頃の極真空手とか
キックボクシングブームとか
でも、やっぱ1970年代を通じて
子供心に植え付けられた
アクション娯楽と言えばプロレスだからね」
『プロレスのバトルロワイヤルを参考って
プロレス好きな人にしか、わからない要素を
プロレスを知らない人にも伝わるようにするのって
結構に大変なんじゃないかな?』
「いや、まだ毎週金曜夜や土日にテレビ中継されて
人気あるでしょ? プロレス
いつのまにか見ているもんだろ?
家族や学校で一緒の誰かがプロレス好きとかで
強くて勝てる客を呼べるプロレスラーに憧れて
プロレスごっこやるとかしてて視界に入っただろ?
人気レスラーっぽい動きが心に焼き付いていいるもんだろ?
それが馴染みのあるアクションなんだと思うんだよ ね?
やれば わかるさ
元気があれば なんでも できるの だぁああああっ!!!
って感じでやっている内に、アイデアを出し合う内に
まとまっていくもんだからさ、今までも、そうだったろ?」
ま、いっかなー、アクションが中心な舞台じゃないし
と全員が想ったのか、言っても無駄だなと諦めたのか
それ以上の異論は出なかった。
「何度か繰り返している内に、各自が持ち寄った
乱闘シーンに関するイメージの寄せ集めが固まり
こんな感じが面白いと内輪で固まっていくんじゃないかな」
そんな、ゆるーい演出方針でのリハーサルが繰り返された。




