歓楽(鴨宮のドサ回り日記8)
古都に近い歓楽街にあるヘルスセンター
首都から考えると古都より距離がある地域なのだが
古都がゴールデンウイーク明け頃は
修学旅行シーズンで、宿の手配などが難しいので
地元の大衆劇団が公演をするというのが通例になっているので
古都での公演は首都へと戻る折り返し初週という事だった。
まかないの食事に、オマケでついてくるのが、うどん
先週までは味噌汁があった場所に何故か、うどん
ここらへんでは、それが当たり前らしい
初日は、そんな違いも新鮮だったが
三日目くらいになると、この地域独特なアレコレも
慣れて当たり前になってしまう
というか、朝から晩まで
誰かに言って自分に言い聞かせるかのように
大衆演劇の歴史やら、古くからの名作やら
歌舞伎とかからパクッた、タメとか ミエとか
ずーっと、大衆演劇の話ばかりを
年がら年中している座長とかがいるので
そういった芝居以外の事が頭から消えていく
・・・
初日、新鮮だったというか、少し大変かもしれないな
と一座の内、ここらに来るのが初めてだった
自分とかが、これは大変だと思ったのは
首都とかでは一番ウケていたシーンが
”なんや、その、ええかっこしいなんわ”
というようなヤジが飛び交うだけで全くウケない
村のため、家のために生きる事こそが
我が素晴らしき人生
そういったセリフを言うシーンを
二日目からは変えないと駄目となって
代わりに言うセリフを急遽、変えようって事になる
「でだ、なんのために生きる人って事にする」
『自分の愛する奥様のために生きるとかは?』
「ケツが、かゆいわ。の一言で駄目やろね」
『自分の愛する子供のために生きるとかは?』
「ケツが、かゆいわ。の一言で駄目やろね」
『我等の生きる村の繁栄のために生きるとかは?』
「嘘くさっ!! なんや、その偽善者丸出しなのわ。
の一言で駄目やろね」
一座の中で、ここらへん出身な人が
ここらへんの住人感覚で指摘する
『えー、ほんとーに、そうなんですか?』
「ほんまで
昔から歓楽街ゆーか、商人街で
”商魂”てな言葉がある地域に
数社の外資企業が現地法人を置いて
”超個人主義”だか、ミーイズムだかが入ってきて
昔からの農村感覚は壊れて消えてるから」
『どんなのなら、ウケるゆーか、ヤジが少なくて
また、ここらへんでの公演が出来そうですかね?』
「いっその事、ヤジを無視して
他のトコと同じ内容で押し通すか・・
それか、身の程知らずボケを喚くシーンを
ここらへんには、よくいる人パターンで長めにして
エエカッコしいなシーンを短くサラってした感じにするとか?」
『ヤジを無視したら、たぶん2度と声かからんでしょうね
ヤジを飛ばしてたの、地元密着同業者団体の有名人様らしいし
じゃっ! ここでウケそうな身の程知らずボケを
三段ボケにして、過激なツッコミを入れるってのを
テンドンで何度か繰り返してみましょーか
んで、エエカッコシーンは可能な限り
物語が切れないくらいに短いにしよう
うん、そーだ、そうに決まった』
・・・
というワケで
少し変更してのリハーサルをする場所として選んだのは
地元出身劇団員さんの母校な芸術大学の
ヘルスセンターからも歩いていける学校のサークル棟
部外者が、入っていいのかなとも思ったが
結構に、そこらへんは、いいかげんな学校らしく
中に簡単に入れて、サークル棟の一室でリハーサル
「今日は夜の部で午後6時からなので
午後3時までに仕上げよう
今まで通りにやってみて、変えないと駄目なトコは
今回のジモッティなヤツが指摘するんで
その都度、変えていこう」
そんな座長の一言からリハーサル開始




