第548話 魂の旅路、逆しまの兄弟
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アルダ・メルキオールに届いたアシュリードは…
アシュリードは昇っていく。
大いなる兄アルダ・メルキオールがいる天頂の神座、このホーリートライアングルの頂点である王座に。
そして、それは見えてきた。
ホーリートライアングルの時空達の遙か上、高次元にある王座に兄であるアルダ・メルキオールが座っている。
その視線は、どこか諦観したような冷たさがある。
やっと届いた。
神城で出会う時も、近くに見えて遙か彼方の頂点の王座に座るアルダ・メルキオールと同等の階位まで到達できた。
アシュリードはそこへ立った。
同じ視線の高さには、アルダ・メルキオールがいる。
アルダ・メルキオールは天頂の王座から到達して目の前にいるアシュリードを見る。
絆繋合王アシュリード、自身の逆しま。
自身の人間性の全てを投げ捨て受け入れる弟が、同じ階位にいる。
「よく来た…超越よ…いや、絆繋合王。全ての絆を繋げる超位の王よ」
アシュリードは悲しげな顔をして
「兄さん。やっと来たよ。ここまで…だから」
と、手を伸ばす。
兄と手を繋ぐ為に。
アシュリードが背負う八つの光輪には、デウスエクス達が宿っている。
アシュリードの右に浮かぶ剣には守護神レオニドスが、左に浮かぶヴァジュラには防壁神メファノタスが。
アルダ・メルキオールはフッと笑む。
そう、彼らを手元に置いていたのは、アシュリードへ至らせない為だ。
アシュリードは、自身の逆しま、対、超対称。
一個で完璧であるアヌンナキのアルダ・メルキオールの対極ゆえに、多く者達と繋がる事で完成する超越存在のアシュリード。
そして、その手を握れば…アヌンナキを維持できなくなる。
故に、アルダ・メルキオールが取る行動は
「残念だが、私はお前ではない。お前も私ではない」
と、天頂の王座から立ち上がる。
そして、全身に稲妻を放つアルダ・メルキオールが
「我はアヌンナキ。完璧なるモノ。故に我の完璧を崩す者を許す訳には、いかない」
”エルザダリオン
アルダ・メルキオールを中心として稲妻が爆発する。
アシュリードが構える。
その隣に、八人のデウスエクス達の残像が並ぶ。
リュシュオルが
「やっぱりこうなったのね」
ウルスが
「分かっていた結論だ」
ラプターが
「どうする?」
アシュリードが右手に剣を左手のヴァジュラを握り
「最後までつき合うさ」
アシュリードも超越存在の力を解放する。アシュリードを中心に黄金の光が噴出する。
超高次元、無限の宇宙達を足下にするそこで、無量大数を超えた不可数転…10の110乗である存在が出現する。
その主は、アルダ・メルキオールだ。
稲妻の撃神、全身が一撃で宇宙を殲滅する天雷の塊である雷の鎧の帝王が立ち上がる。
アシュリードは、その密度に及ばない出生…10の95乗である。
その形状は、黄金の鎧に包まれた翼を持つ王の天使である。
アルダ・メルキオールの雷の王帝と、アシュリードの黄金の天使王が対峙する。
ヴォオオオオオオ
最初に攻撃を放ったのは、アルダ・メルキオールの雷の王帝だ。
その振り上げた右腕から、何百もの宇宙の塊を落とす。
それを回避しようとアシュリードの黄金の天使王が飛翔して避けるも、アルダ・メルキオールの雷の王帝は、その宇宙群塊を曲げて、アシュリードの黄金の天使王にぶつける。
集合している一個一個が宇宙の塊である群体が、容赦なくアシュリードの黄金の天使王を叩き付ける。
その攻撃に、アシュリードと一体化しているマレーナとウルスが、その攻撃を吸収する力を放つ。
大海と攻撃を受け止める大きな手達を伸ばして、攻撃を大海に吸収させた。
「ほう…やりおる」
と、アルダ・メルキオールの雷の王帝が告げ
「では…これは、どうかなぁ?」
次の攻撃を放つ。
両肩から、宇宙サイズの稲妻の閃光達がアシュリードの黄金の天使王へ襲いかかる。
アシュリードの黄金の天使王は、ラプターとリュシュオルの力を召喚する。
降り注ぐ稲妻の宇宙を、ラプターとリュシュオルが合わさった光の鳳凰達によって落とす。
そして、アシュリードの黄金の天使王が突進する。
それにアルダ・メルキオールの雷の王帝は、左手を構えて放つ。
天使王の突撃と、雷の王帝の拳撃が、ぶつかった瞬間、無数の宇宙達が誕生して、足下の宇宙群へ落ちていく。
アシュリードは、ルプスとイエツァの力を召喚する。
陽光の力と狼の鋭さを併せ持って雷の王帝を押そうするも、雷の王帝がズンと前に踏み出す。
全くもって歯が立たない。
アルダ・メルキオールは、統治していたホーリートライアングルの時空の全てを遙かに超える力と質量を有していた。
ホーリートライアングルの時空を結成して、多くの年月を経て完璧なるモノへの神化を怠った事は無い。
ただ、傲慢な王ではない。
アルダ・メルキオールの雷の王帝が、アシュリードの黄金天使王を吹き飛ばした。
「ぐああああああ」
アシュリードは衝撃を受けて遠くへ後退する。
それにアルダ・メルキオールは、雷の王帝から睥睨して
「所詮、その程度という事か…」
後退する黄金天使王は、パンテーラとユティスの力を召喚する。
鉤爪と掴もうとする引力で、アルダ・メルキオールを引き寄せようとするも
「温い!」と雷の王帝が強烈な宇宙群を創成する稲妻を放電して破壊し払った。
遠くになるアルダ・メルキオールの雷の王帝。
アシュリードの黄金天使王は、雷の王帝を見詰めて
「まだ、諦める訳には…いかない!」
その頃、高次元でディオス達が、遙か上の超高次元で戦っているアシュリード達を見上げていた。
充人が
「やはり、まだ…」
アヌビスが
「これ程の存在だったとは…恐るべしアヌンナキ…」
雷御が
「ディオス、大丈夫なのか?」
ディオスは
「ああ…問題ない。これでいい。そう…これこそが…」
ディオスには、決着の予想が出ていた。
アルダ・メルキオールは、完璧なるモノ、アヌンナキ。
自らを完璧にする為に神化する。つまり、その影響は、逆しまであり対であるアシュリードにも及ぼす。
アシュリードは、黄金の天使王の翼を広げるとその翼の先に八つの光輪が乗って
「兄さん。まだ、終わっていない!」
八つの光輪は、黄金の天使王を包み黄金に流星に変えると、再び雷の王帝へ突進する。
雷の王帝は、全身から稲妻の宇宙を放ち
「何度、来ようとも同じだ!」
と、アルダ・メルキオールが放つ。
黄金の流星となったアシュリードの黄金天使王へ、宇宙群の稲妻が降り注ぐが、その稲妻を黄金の流星は飲み込み推進力にする。
アシュリードは持てる力を全て繋げて、アルダ・メルキオールへ向かう。
頼む、僕は…オレは…兄さんと手を繋ぎたい。
兄さんに、一人ではないって教えたいんだ!
アシュリードは、アルダ・メルキオールの力を逆しま、超対称で呑み込む。
その呑み込んだ力の威力は凄まじい。体が張り裂ける程だが、アシュリードと共にあるデウスエクス達が、その威力を味方に変える。
そして、アシュリードの願い。
手を繋ぐという意志が、時空共鳴、カイラルを起こす。
繋ごう、繋がろう、という意志を持った者達の共鳴を起こす。
ホーリートライアングルの時空にいる民達が願う。
偉大なる御方と共に在りたいと、他の時空達の手を繋ぎたい繋がろうとする願い。
それがアシュリードに届いた瞬間、アシュリードの黄金天使王に更なる神化をもたらす。
翼が広がり更なる翼を生む、鎧の外観が、城のごとく変貌する。
そう、アシュリードの黄金の天使王は、黄金に輝く世界人へ変わる。
世界そのモノを纏う、アシュリードの黄金世界城帝が、アルダ・メルキオールの雷の王帝へ迫りぶつかる。
宇宙を幾つも生み出す雷撃の嵐と、世界と繋がろうとする黄金の光が衝突する。
破壊の創成と、創成による繋がり。
その決着は、破壊による創成の敗北だ。
所詮は、破壊は、創成の一つでしかない。
繋がろうとする力が破壊まで繋がり創成を繰り返す。
アルダ・メルキオールの雷の王帝の力が呑み込まれていく。
このままでは、自分が呑み込まれると理解したアルダ・メルキオールは、更なる完璧を求めて神化を開始する。
これを超える為には、これを理解する為には…。
アルダ・メルキオールは、全だ。全の塊だ。一ではない。
一が集合した全だ。
アシュリードは一だ。そして、全に繋がっている。
ならば、同じ一になり、全に繋がれば良い。
最良の解答だった。
故に、全であったアルダ・メルキオールは、魂の積層…ソウルホールを収束させ加速させ融合させる。
百もの魂が一つの魂になる。個になる。
可能な事だ。なぜなら、自らは幾つもの魂達の積層。
幾つもの元人間だった子達の集まり、その全員の意志が統一され個別に動いている。
それが、今、更なる神化へ、完璧の為に一つになるのは、合理的な結論だ。
それをディオスは、額のサードアイを開いて見ていた。
「アルダ・メルキオールよ。それがお前の敗北だ」
そう、アルダ・メルキオールの敗北は決定した。
ヴォオオオオオオ
アルダ・メルキオールの雷の王帝は吠える。
アルダ・メルキオールが個になる。全の塊だった存在が、個になる。
アルダ・メルキオールの中にあった子達の記憶と意志と人格、魂が融合する。
幾つもの子達、百にも及ぶ個達の時間と記憶、魂が統合する。
なぜそれが可能なのか?
それは、繋ぐ超越の逆しま故だ。
完璧を求めるが故に、否定するその力を取り入れた。
そう、アルダ・メルキオールとアシュリードは、逆しま。
全の塊であるアルダ・メルキオール。
繋ぐ個であるアシュリード。
その指向性は違えど、同じ結論である。
一であり全。全であり一。
個になったアルダ・メルキオールは膨大な感情に襲われた。
「あ、あがぁぁ」
全であったアルダ・メルキオールは、多くの全の視点があったからこそ、感情に支配されなかった。
それを、神化の為に自ら手放した。
確かに、現時点では完璧だ。だが、もう…個である者はホモデウスではない。人なのだ。
「ああああああああああああ!」
アルダ・メルキオールが叫ぶ。傍若無人に取り乱す。
それによって、雷の王帝が崩れる。
亀裂が入り、そこからアシュリードの黄金世界城帝が入り込む。
アルダ・メルキオールは、それを止めようとするも、アシュリード達が見えた。
感じた。
アシュリード達は、手を伸ばしている。
兄さん!
”御方”
”アルダ様!”
理解と共感は別なのに、理解が共感を呼び起こし、共感が繋がりを持とうとする。
「かどわかすなーーーーー」
と、アルダ・メルキオールが雷の王帝で攻撃を、稲妻の爆撃を放つも、その攻撃が虚しく反れて、雷の王帝を黄金世界城帝が貫いた。
砕かれた雷の王帝からこぼれるアルダ・メルキオールを、アシュリードが抱きしめて掴んだ。
「やっと、兄さんに届いた」
と、アシュリードは涙した。
逆しまの兄弟は、やっと繋がった。
落ちて戻る二人、共に帰って行くアルダ・メルキオールとアシュリード。
もう、アルダ・メルキオールはアヌンナキではない。
ホモデウスではない。アヌンナキではない。
超位者であり、アシュリードの逆しまの超越、そして、陰陽の兄弟だ。
泣いているアシュリードに、アルダ・メルキオールが
「全く、泣いているとは…」
「う…やっと、兄さんの手を…」
と、アシュリードは泣いていた。
やっと届いた。遙か遠くにいた兄を抱きしめる事が、繋がる事が出来た。
アルダ・メルキオールが
「お前は…何時も…そうやって、泣いて…」
と、アシュリードのホホを撫でる。
アシュリードが、ホホを撫でる兄アルダ・メルキオール…ゲンキの手を握り
「ああ…そうだよ。オレは泣き虫だ。兄さんがいなかったから、そうなったんだぞ」
と、アシュリード…弟のユウキが。
アルダ・メルキオールに人の血が通う、感情が体を包む。
冷たい存在だったモノに命が宿る。命とは繋がりである。
かつて、アルダ・メルキオールを犠牲にして後悔した父母達の残影が現れる。
その残影達が口にする。
”お願い、幸せになって”
それに魂を宿したアルダ・メルキオールが涙する。
これが感情だ。暖かく苛烈で優しく強く、何よりも忌々しく何よりも愛おしい。
ああ…心地が良い。
下りて来る二人を見上げるディオス達。
それに充人とアダムカインは安堵して、アヌビスと雷御が決着を感じ、アルシュだけは鋭い顔のディオスに
「ディオス…何か…」
ディオスが苦しそうに目を閉じ
「この結末を分かっているのに、そうするしかない私自身が…無力に感じる」
アンディビーダ ラーシュリアーダ ラーディング ゼリロドリア
アヴァルド ヴァウワハーーーーー
遙か遠方で絶望の業火に身を包む存在、超進化加速因子であるシグマが右手に漆黒の絶望槍を形成して、投擲した。
その狙いが、アシュリードへ向けられる。
アシュリードへ絶望の投擲が到着する寸前に、アルダ・メルキオールが庇った。
「兄さーーーーーーーーーん」
絶望の槍がアルダ・メルキオールの中心を貫いた。
粉々に砕ける。
消える兄をアシュリードは掴み、消える寸前に兄のアルダ・メルキオールが
「ごめんな」
と、告げて消失した。
「あああああああああああああ!」
アシュリードが、アシュリードと一体化するデウスエクス達が悲鳴を上げる。
そして、破壊されたアルダ・メルキオールの魂が遙か超高次元に鎮座する六柱のアヌンナキの一人の手によって回収された。
「ははははははははは!」
と、アルダ・メルキオールに魂を回収したアヌンナキが哄笑した。
その隣にシグマが来て
「目的は果たしたぞ」
アヌンナキ・ホモデウス達が姿を完全に現す。
青年の形をした、ラダムとヴァファル、ルデシド
壮年の形をした、エルフラグと、リージェスト
老年の形をした、プリジェスト。
遙か超高次元でしか存在が許されないホモデウス達が、そこにいた。
アルダ・メルキオールの魂を握るのは、雷御と契約していたラダムだ。
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