第542話 瓦解していく全て
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ディオス達とアルダ・メルキオール、それは…
強大な雷撃の天空が墜落してくる。
惑星サイズの天雷には、この宇宙を滅ぼす程の威力が込められている。
放ったのは、アルダ・メルキオールだ。
アルダ・メルキオールの祝福である超殲滅の一撃が、アシュリードのいる星に、カディンギル本部へ落ちる。
それをディオス達は見上げていると、アシュリードが飛翔して、惑星級の雷撃にヴァジュラを伸ばす。
カディンギル本部の上で、アシュリードが天雷に接触した瞬間、ヴァジュラに天雷が呑み込まれる。
ブラックホールのようにヴァジュラは、天雷を呑み込んで消してしまった。
宇宙を一撃で滅ぼす力を呑み込んで消した光景を、ホーリートライアングルの時空穴から、アルダ・メルキオールにレーヴァティン達が見下ろしている。
アルダ・メルキオールは、再び王座に腰掛けると、楽しげな笑みをアシュリードへ向けて
「では、な…」
と、告げて時空穴を閉じた。
アシュリードは消えた時空穴を見詰めた後、暫し目を閉じる。
興奮も、目覚めたような熱もない。
ただ、到達した。
繋絆合王の超越存在になったアシュリードには、感激といった感情はなかった。
ただ…
「兄さん。必ず迎えにいくよ」
と、何処か愁いを帯びた悲しげな顔をする。
そうしている間に、突如、転移次元が出現して、そこからエルディオンの一団が出現した。
カディンギル本部の地上から、エルディオンの一団が来た事にディオスは戸惑い
「どうして…」
と、言葉にしつつ、機神型時空要塞戦艦エルディオンと、時空要塞戦艦アヴィシャガンと同じく時空要塞戦艦、轟天が下りて来た。
ディオスは、各時空要塞戦艦を後ろにする一団を前に困惑を浮かべる。
ディオスを連れ戻す為に集結した雄志達が、腕を組んで怒っているような顔をディオスに向けている。
ディオスは顔を引き攣らせて
「どうして…」
一団の先頭にいるインドラが
「バカな行動をした我らの子を迎えにきたのだよ」
ディオスが困り顔で
「でも、自分は…関係ないと…宣言して」
信長が
「ふざけんなよ! 兄貴は、どんな事になっても兄貴だ!」
充人が
「家族が大事と言っているくせに、自分が家族や友人や仲間を裏切ってどうする?」
アヌビスが
「ディオスは、かつて私がやった愚行を再現するのか? 自分を大切に思っている者達を裏切って一人で好き勝手に暴走して、それがお前の望みなのか?」
アダムカインが
「もし、それが望みなら、殴り飛ばして連れ帰るまで、ですよ。ねぇ…父さん」
充人が頷き
「その通りだ」
ディオスが
「でも、いや、私がやろうとしている事は…」
マリウスが
「私達は、アナタの足手まといなんですか?」
ククルクが
「そんなに我らは弱いのか!」
ヴィクトールが
「ディオス様は、我らがディオス様の気持ちを理解できない程、愚か者だと思っているのですか!」
そこへ、アシュリード達が来る。
アシュリードは通常の状態で
「全ては自分の責任です」
と、一団に頭を下げて
「申し訳ありません」
ディオスが
「彼は、アシュリード君は何も悪くない。私が勝手に」
インドラが
「その勝手を理解できない程、ワシ等に信用がないのか!」
ディオスは項垂れ
「すいません。本当に…もっと皆を信用するべきでした。ごめんなさい」
謝るディオスを信長が掴み、一団に連れて来た。
再び、優志郎からディオスに戻った。
ディオスを囲むアースガイヤの一団は
我々は、同じアースガイヤの仲間でしょう!
アナタは、私達の…聖帝という大切な方なのですよ!
もっと、我々を頼ってください!
と、ディオスに自分達を頼ってくれと言葉を贈る。
ディオスは、その一つ一つに頷いて聞く。
それを遠巻きに見詰めるアシュリードに、アヌビスが近づき
「汝が…新たに…」
アシュリードが頷き
「はい、ホーリートライアングルのアヌンナキ、アルダ・メルキオールの…兄さんの逆しまにして、対の…」
アヌビスが
「そうか、この後は?」
アシュリードが困り顔で
「ホーリートライアングルへ行って、兄と…アルダ・メルキオールと…会いたいです」
アヌビスが
「なるほど、まずは…そこまで、辿り着くには、長期の事になるやもしれんな」
こうして、ディオスと合流した時空要塞戦艦の一団は、アルシュの提案で、シャンバラへ向かい、そこで今後を話し合う事にした。
エルディオン内で、ディオスは時空転移する風景を艦橋で見詰めながら隣にいるライアーに
「ライアー あの…黒い修道服のような…」
ライアーは頷き
「そうだ。あの四人の中に、私が解放したい超越存在達の魂がいる」
ディオスが顎を摩り
「どう…目途を…」
ライアーが
「そんなの、これ程の超越存在達が揃っているんだぞ。なんの不備がある?」
ディオスは「あ!」と納得する。
自分の周りには自分を心配して、ファーストエクソダスの超越アヌビスと、レガリア宇宙の超越アダムカイン、そして…奏と共にあるとしたサタンヴァルデウスの雷御、ワールストリア時空のシャンバラ皇帝アルシュ、機神人類の始祖の超越である充人。
そうだ! 全くの心配の必要がないが…まだ、保険が欲しい。
「あの、時空ストーカーを…」
「誰が時空ストーカーだ!」
と、エルディオンの通信にハッキングした収天螺王の声と、その星系規模の六十億キロサイズの時空星艦アディドと、ついでに天臨丞王の星艦ラーザードも併走してくれる。
ディオスはニヤリ
「いや…自分のトラブル体質も役に立つなぁ…」
と、自分のぶっ飛んだ存在を呼び寄せる体質に感謝する。
ホーリートライアングルの神座の城では
「どういう事だ!」
ラプターが、カログリア達を前に怒声を荒げていた。
カログリアの四人、ヴィクティナ、ルーディシア、アルティシミナ、ラティファーナ。
アルティシミナが
「別に…これが御方アルダ・メルキオール様の為なのですから」
ラプターが
「テメェらがアシュリードに渡してみろってデータは! 超越存在の聖帝ディオスの救極煌王の力を使って、御方にケンカを売る程度だった。だが…この事態…」
ヴィクティナが
「貴方達は、見ないフリをしていたでしょう。なぜ、アシュリードが…御方に特別扱いされるのか…。そして、デウスエクスのコアを持ってもデウスを宿さなかった。その理由は薄々は分かっていたのでは?」
ラプターは忌々しげな顔をして
「テメェ等…御方に刃向かえば、容赦なくオレの鉤爪が引き千切る」
ルーディシアが
「ご自由に…」
ラプターは背を向けて歩き出すと、目の前に多くの者達が通り過ぎる。
それは、ホーリートライアングルの各時空域を任された代表者達だ。
その代表者達の一団が、ホーリートライアングルの創造主にして最高の統治者であるアルダ・メルキオールに謁見する。
百二十人の一団が、アルダ・メルキオールのいる王座の前に跪き
「御方、ご機嫌うるわしく」
「挨拶はいい」
と、アルダ・メルキオールの遮る顔は冷徹だ。
一団の前列にいる制服の男性が
「御方。アシュリードが…貴方様の対…逆しまとして覚醒したと…」
アルダ・メルキオールは頷き
「そうだ。今し方、本当に逆しまとして覚醒したか…確かめた。我の天雷をアシュリードは飲み込み自らの力にした。それが我の対、逆しまである証だ」
前列にいる制服の女性が
「では、覚醒したアシュリードと共に、このホーリートライアングルを…統治するのですか?」
アルダ・メルキオールは
「それは出来ない。我はアヌンナキ…完璧なモノだ。対となる者を受け入れる事は出来ない。完璧が崩れる」
前列にいる制服の若者が
「では…どのように…アシュリードを倒して…」
アルダ・メルキオールは冷徹に
「全員の望みは、高次元の集合意識観測で分かっている。このホーリートライアングルの維持なのだろう」
前列にいる制服の壮年の男性が
「我らは…御方に忠誠を」
アルダ・メルキオールは
「ウソを言うな。自分の為に…我を利用しているだけだろう」
前列にいる若者が
「違います。私達は本当に御方と一緒に…」
アルダ・メルキオールは嘲笑いを向け
「ウソを言うな。所詮、お前達は自分が生きる為に、我を利用している。今もまた、我を自分達の正当性を示す道具にしようとしている。お前達に忠誠はない。
不完全なる者は、自らの生存の為に動く。
それなら、自身の自我でさえ偽る」
前列の壮年の男性が立ち上がり
「御方の望みであるなら、私はここで自死しても構いません」
アルダ・メルキオールは嘲笑で見下し
「ウソを言うな! お前はそうやって、我に自分の守りたい者達を押しつける呪いをかけようとしている」
前列の青年が立ち上がり
「我々は、御方が作ったこの世界で救われた! 今度は我らが! 御方を助ける番です」
アルダ・メルキオールは哄笑で
「ウソを言うな! 何も変わらない。このホーリートライアングルは、お前達との契約の為になり立っている。我が全ての権能をもって安寧と安泰を維持する代わりに、お前達は発展と進歩の情報を我に与える。それによって、我は完璧を目指し、お前達は安定と発展を得る。そういう契約だ」
一団の全員が立ち上がり、前列の壮年の男性が
「この世界は十万年もの間、安寧と平安、そして発展を続けた。始めは契約でしたが…もう、それは…我々と御方の絆になった。御方、我々は御方の為に命を賭ける覚悟があります」
アルダ・メルキオールが「はは、ハハハハハハハハハハ」と嘲笑い
「ウソを言うな! お前達にとって我は、このホーリートライアングルを維持する為の道具だ。それがアシュリードに変わったとしても、変わらん。お前達は、そう有りたいとするバイアスに取り憑かれているだけだ」
一団の青年が前に出て
「どうすれば、信じて頂けるのですか!」
アルダ・メルキオールはフンと鼻で笑い
「信じる。そういう言葉は、存在しないモノを有ると思い込みたい反応だ。下らん
命令が欲しいならくれてやる。好きにしろ。
このホーリートライアングルが崩壊しても、我にとっては、我を完璧にさせるサンプルが消えただけ。
我は、完璧なるモノぞ」
一団とアルダ・メルキオールとの間には、断絶がある。
一団には、理解とは共感と一緒だと。
アルダ・メルキオールにとって理解と共感は別なのだ。
理解はする。だが、共感はしない。
それが完璧なるモノだ。
愕然とする一団に、ラプターが来てアルダ・メルキオールの前に来て
「御方、この後は?」
アルダ・メルキオールは
「決まっている。アシュリードは必ず来る。それまで、待つ。それだけだ」
ラプターは頷き
「分かりました」
ラプターへ、一団にいる壮年の男が
「ラプター様、我々は…」
ラプターがフッと笑み
「聞いたはずだ。好きにしろってなぁ。オレも好きにする。御方の隣に居てな」
何が崩れるような音がする。
ホーリートライアングルの各時空域の代表達は、ホーリートライアングルの時空へ来た、その祖先に至るまでの十万年間以上と共に過ごしてきた絶対の主アルダ・メルキオールと繋がっていると思っていた。
だが、アルダ・メルキオールは変わっていない。
最初の契約の日から、何も…。
代表者達の中で何かが瓦解して崩れていく。
自分達が代々、子孫を通じてアルダ・メルキオールと共に積み上げたホーリートライアングルの時空の安泰と発展の意味が喪失してしまった。
人は信じるべきモノを失った瞬間、奈落に落ちる。
その奈落の事実とは、結局…アヌンナキであるアルダ・メルキオールにとって、積み上げて来た絆に意味が無かったという事だ。
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