第3話 群れから抜け出る
ヨットレースでは、風位に正対して2艇のマークボートを並列にアンカリングし、両艇のマスト見通し線がスタートラインとなる。
右手側が本部船(風上位置という)、左手側が外側(風下位置)となる。
左右どちらからスタートしても理論上の優位性は同じである。
運営上は、両位置同条件に設定されるが、風位は常に安定しているわけでもない。
風位によって風上絶対有利となると、本部船側に艇が集中して混乱を来すことになる。
そのため、レースではラインを長く使えるよう、微妙に風下有利とすることが多い。
運営委員の腕の見せ所といったところか。
スタート前には、第1回航マーク(風上マーク)の位置と風位を見極めなければならない。
私の考えた作戦は、「群れを抜け出て、単独で行動する」であった。
一匹狼で、フレッシュエアを最も受けやすいスタート位置を狙う。
集団の頭を抑える、風下1番 (シモイチ)スタートだ。
リコールすれば、全艇(権利艇)を避けての再スタートとなり、ドンケツスタートのリスクを負う。
インカレが終わり、4年生が引退して私たちが最上級生となった。
私たちの水域では、大きな大会は年に2回ある。
6月に開催されるインカレが最重要の大会となる。
1部から3部リーグまであり、2・3部の上位2校が上部リーグの入れ替え戦に出場できる。
1・2部の下位2校は下部リーグに転落となる。
各校3艇がチームとして出場し、その総合成績で順位が決まる。
次に、秋に開催される新人戦がある。
これはリーグに所属する全チームが参加するオープン戦となる。
参加艇数が多くなるため、インカレと異なり2艇がチームとして出場する。
リーグ順位の入れ替えはなく、新チームの実力テストといった位置づけである。
私は、この新人戦で「一匹狼シモイチ作戦」にトライすることにした。
後のない私にとって、試す機会はもうこの大会しかない。
果たして、成功するや否や。
やるっきゃない・・・
<用語>
・アンカリング:錨打ち
・外側:スタートライン風下側マークボート
・リコール:早すぎるスタートを切ってしまうこと(同 フライング)
・権利艇:進路の優先権を持つ艇




