第13話 幕間
王都。
蒼天の天秤騎士団が有する、広大な修練場。
クリスは返り血で頬を汚し、感情の消え失せた冷たい瞳で、対峙する屈強な騎士や魔物たちを次々と地に沈めていた。
圧倒的な無双ぶりを見せつけているのは、彼だけではない。
巨大な大剣で訓練用のゴーレムを粉砕するシグマ。
規格外の破壊魔術で標的を周囲の地面ごと吹き飛ばすクロエ。
そしてオメガとノアもまた、他の受験者たちとは次元の違う動きで、立ちはだかる試練を蹂躙していく。
かつて冒険者の頂点にまで登り詰めた【正義の剣】のメンバーたちにとって、騎士団の過酷な入団試験すら、もはやただの作業に過ぎなかった。
その日の深夜。
薄暗い兵舎のベッドの上で、クリスは一人、窓から舞い込んだ小さな羊皮紙を強く握りしめていた。
マリーの美しい筆跡で書かれた、たった数行の報告。
それを指先でそっとなぞり、クリスは小さく、震える息を吐き出す。
「……よかった。本当に……よかった……セラっ」
昼間、修羅のごとく冷酷に剣を振るっていた男の目から、ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ち、羊皮紙を濡らしていく。
それは、自分自身の手によって深く傷つけ、追い出してしまった愛する親友が、ようやく救われたことへの、魂の底からの安堵の涙だった。
誰かを守るために、自ら深い闇へと堕ちていく若きリーダーは、誰にも見られない暗闇の中だけで、ただ静かに泣き続けた。




