第78話 大国介入
自衛隊が亜細亜太平洋島嶼連邦共和国最大の島、イケブンブロク島を制圧し、首都ティティリンを占領したというニュースは世界中を駆け巡った。
核兵器が第二次世界大戦以上に使用され、大国の介入なく続けられた戦争は、数十年もの間、大規模な戦闘経験のなかった自衛隊が、想定外な活躍をみせ、ついに敵国の首都を占領するという展開にまでなった。
ここに至って、日本国やその他諸国からは早期停戦を望む声が一層高まった。
日本においては、核戦力を全て排除するまでは全島占領するという予定だったが、自衛隊はすでに限界に達し、これ以上の島嶼部制圧は困難だった。
何より恐らく、核兵器を使い果たしたとみられる亜細亜太平洋島嶼連邦共和国との間で、これ以上の戦闘は無益だった。
これはほか諸外国も同じ思いであった。
これを拒むのは亜細亜太平洋島嶼連邦共和国政府の強固な抗戦意志によるほかない。
国家保安大臣は、亜連中央部の島、チナイシチマ島の山の地下にある地下シェルターの閣議室で発言した。
「……諜報活動の結果、米国と中国が軍事介入を行う可能性が高くなりました……」
いつもは冷静で傲慢ともいえる態度の国家保安省の大臣が珍しく顔を青くして震えていた。
「外国の有力な情報筋によりは、米国と中国は極秘裏に共同作戦を行います。核兵器を大量に使用するとのことです」
続いて国防大臣。
「イケブンブロク島の自衛隊は島にとどまっております。これは米国の要請も多分にあるようです。現在、西太平洋地域に戦略爆撃機部隊が配置され、沖合に空母打撃群が配置。中国空軍も戦略爆撃機部隊が広州付近の飛行場に集結中です」
国防大臣も同じ表情だった。
広州は中国南部にある大都市で、ここから離陸し、ほぼ西へ向かえば台湾とフィリピンの間のバシー海峡を飛び、亜連に到達することができる。
続いてイー外務大臣、
「昨日からですが、全世界の国が亜連に駐在する者に対してこれまでになく強い調子で退避を命じたり、要請したりしています。いずれも米国や中国からの強い後押しがあったと言われています。米国と中国は在留同国人等の退避のため、輸送機や輸送船を向かわせているとのことです」
「介入だ」
ヤー大統領がはき捨てるように言った。
「これはこの戦争への介入だ。ただちに厳しく処置しなければならない」
全員が黙った。米国や中国の本土まで飛ぶ亜連の核ミサイルはもうない。
米国や中国がこの国を焦土にすることなど容易なのだ。
突然電話の着信を伝えるブザーが鳴った。
二、三言葉を交わすと、彼はめんどくさそうにきった。
「南西から中国の爆撃機2機と戦闘機10機が我が共和国の防空識別圏を越え、我が国の領空に入ろうとしている」
その時、大きな振動が響き、その後爆発が起こった。
閣議室も一瞬電気が消え、その後補助動力に切り替わる。
なにごとだ、と閣僚たちが叫んだ。
椅子から放り出された大統領が円卓につかまって叫んだ、
「なにごとだ!」
それが米空軍のB2爆撃機によって投下された地中貫通爆弾のせいであるとわかったのはしばらくしてのことであり、さらに米大統領がB2爆撃機2機とF22戦闘機8機が亜連奥深くに進入し、敵司令部を地中貫通爆弾で攻撃したと発表した。
亜連空軍はこの10機のステルス機を全く探知できず、しかも政府中枢の疎開先までばれていたことがわかった。
中国空軍の編隊は探知され、亜連戦闘機が発進したが、シェルターがやられたため、同じところにあった空軍司令部も破損。指揮系統は混乱し、その間、中国空軍機は亜連領空を侵犯、シェルターのあるチナイシチマ島まで到達し、引き返した。




