第71話 亜連絶対防衛線
1月17日夜
亜細亜太平洋島嶼連邦共和国政府の政府は、北西部にある連邦共和国最大の島、イケブンブロクにある首都、ティティリィンから移動していた。
政府は連邦中部の島にあるハンノ―島の地下巨大シェルターに移動していた。
「敵である日本国自衛隊は大規模なス輸送船団をもって、イケブンブロク島に進攻しつつある」
そう切り出したのは、ヤー大統領だった。
「敵の大規模な地上戦力がこれによって輸送されている。しかも、敵は国外での、大規模上陸作戦がはじめてであるし、想定したこともないという。これは好機だぞ」
大統領は周囲をみて言った。
「つまり、不慣れな状態で大規模な敵の不意を衝くチャンスなのだ。よって我々は以下のような作戦を立てる」
彼は閣議室の壁にかけられていた、日本本州から亜連北部の地図を指しながら言った。
「敵はある程度集結して侵攻してくるはずだ。そしてイケブンブロク島に上陸してくるに違いない。よって、まずは海軍の艦隊の残存戦力を集結させ、一つの艦隊として合流させる」
大統領は地図をこつこつと叩きながら言う。
「作戦第1段は彼らに核攻撃を仕掛ける。弾道弾を中心に、乱れうちをおこない。戦力を撃滅させる。第2段階はもし残存した戦力あれば、艦隊で叩くのだ。これをもって我が国は敵国と有利な条件で講和に持ち込む」
大統領の言葉に、皆頷くしかなかった。
(いつのまにか、講和に持ち込むことが条件になっている)
リー・ラン外務大臣は内心でそう思った。
本来は日本も降伏に持ち込むことが条件だったはずだ。
大統領のなかでも、降伏より、日本との講和を行うこと、それも、少しでも有利な条件で降伏することに、気持ちが変わっていた。
いくら非現実的な予測をしようと、戦況は日本優位になっているという認識は、大統領の中でも変えられなかったようだ。
しかし、また核攻撃をするのか、とリー外務大臣は暗雲たる気持ちになってくる。
また我が国は核を撃つ国になってしまうのか。
また、核弾頭も、撃ち落された分も含めればもうそれほど余剰はないはずだ。
そのことについて大統領にも尋ねたかったが、まともな精神状態になく、その状態でなお、強大な権限を保有している彼に、立ち向かえなかった。
(また日本や、我が国の人々に大きな出血をもたらしてしまう)
内心でそう思うと、外務大臣は暗雲たる気持ちになった。
そしてこの閣議室の中でも、同じような気持ちになっている者はまだ何人かいた。




