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第70話 水面下の動き


 1月17日昼 東京都内 某公園


 それは広い公園の、人通りの少ない一角にあるベンチだった。


 ひとりのスーツを着た男はベンチに座り、ため息をつく。


 ショルダーバッグから炭酸水の入ったペットボトルを取り出し、一口飲んだ。


 男はその後深い緑色をしたビニール袋を何気なくベンチの下に置き、その場を後にした。




 それから5分と立たないうちに、別のスーツ姿の男がやってきた。周囲をきょろきょろとみたあと、ベンチの下を見た。


 ビニール袋を見つけると、さっと取り、リュックサックに入れて、足早にその場を後にした。




 そのビニール袋のなかには封筒が入っていた。


 ビニール袋を取った男―――在日本・亜細亜太平洋島嶼連邦共和国大使館の職員は、これをある一等書記官に渡した。


 一等書記官はその内容を見て、驚き、他の職員―――特に外務省職員の格好をした国家保安省の人間―――に注意しながら、本国の同胞に報告した。




 

 その同時刻。


 西太平洋に、亜連南方の防空識別圏に進入する2機の航空機があった。


 双発の亜連国産ジェット戦闘機AaF-10が付近の航空基地から4機、緊急発進した。


 ジェットエンジンを2基備えた大型機、胴体には赤い星のマーク。


 中国人民解放軍空軍のH6爆撃機だ。


 この2機の爆撃機はしばらく亜連の防空識別圏を飛行した後、離脱。


 台湾とフィリピンとの間にあるバシー海峡を飛んで、大陸に消えた。





 この事態に、亜連は駐亜連中国大使を呼んで、厳重に抗議した。


 しかし、この場で、中国大使はむしろ警告をした。


「外務大臣閣下、誠に遺憾ではありますが、これは自衛のための措置と受け取ってください」


 中国大使を呼んだリー外務大臣が眉を歪めた。


「どういうことですか、大使。権利を侵害しているのは貴方の国の方ですよ」


「ええ、その通りです。ですが、我が国の安全を脅かしているのは貴国でもあるのです」


 大使は続けた。


「貴国が日本に戦争をしかけ、さらに核兵器を投下して以降、東アジアの安全は極めて不安定なものになりました。我が国の経済にも深刻な影響を与えているのです。さらに、貴国の攻撃に巻き込まれた在日中国人も多数います。我が国の国内世論では、核兵器による戦争介入の支持ややむなしといった声も増えています」


「貴方は、貴方の国が、我が国に核攻撃をすると? これは脅迫ですぞ」


「いえ、私は、我が国の代表として、我が国の中央や世論を要約しているにすぎません。それにそうなった所で、これは我が国の自衛行動です。このことは大統領閣下にも必ずお伝えください」


 大使は立ち上がった。そして、続けた。


「我が国は、歴史的経緯や地政学的観点から、日本の軍事行動を警戒しています。日本がミサイルによる反撃など、積極的な防衛行動を講じていることをこころよく思っていません。また貴国もご存じのように、日本は第二次世界大戦後はじめての大規模な上陸作戦も展開しようとしています。これは我が国にとっても危惧する事態です。しかし、日本がそのような行動をとらざるをえないことも理解しています。そして、日本の現在の行動は誰によるものか、ぜひ大統領閣下もお考え下さいとお伝えください」

 

次回更新は8月22日(土)を予定しております

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