第69話 次の一手
それは日本にとっても一晩の夢だった。
亜細亜太平洋島嶼連邦共和国でクーデターが発生したとの報道が入ってきた時、クーデターは成功し、亜連との戦争は終結するとの見方が大勢を占めていた。
しかしそれが早朝には大統領含め要人脱出、クーデター首謀者ら自決、或いは処分をしたと発表があったとき、失望と恐怖が日本の世論を征服した。
対外情報庁はこのクーデターに関して情報収集に当たっていた。
クーデターの首謀者は軍総司令官、イー元帥。
彼らは海軍第1海兵師団と第7海兵師団を行動させ、陸軍首都防衛師団などと交戦、首都を一時的に制圧したものの、大統領はすでに脱出し、首都の外から放送で呼びかけた。
首謀者らは自決、あるいは解任。しかし、首都ティティリンの戦闘は熾烈を極め、大きな損害を受けた模様―――
対外情報庁特別チームリーダーの佐々木は報告書に目を通した。
「やっつけにもほどがあるな」
そういうと報告書を机の上に置いた。
「恐らく大統領は以前から情報を掴んでいたのだろう。それで決起したところを掴んで、絞め殺した……」
佐々木は視線を上げた。
この一室には対外情報庁の亜細亜太平洋島嶼連邦共和国に関する特別チームのメンバーがいた。
彼らは各部署から集められ、情報収集や、可能ならば工作活動を行う、そのための特別チームだった。
「しかし、他に不穏分子―――いや、彼らにとって―――はいます」
そういったのは種田は言った。
「一番気になるのは現職の外務大臣、リー・ランと産業大臣のスルン・メーメフのふたりですね」
「確かな情報か?」
「ええ、大使館の一等書記官がうちに接触してきました。今、リー外相とのパイプ役を担っています。現地アメリカ大使館でもリーの使者を名乗るものが接触してきている、とCIAが伝えてきました」
CIAに限らず、アメリカは水面下で日本への支援を行っていた。
また、欧州各国やアジア諸国など、表立った行動は起こせなかったが、情報提供など、可能な限りの支援は行っていた。
「彼らのグループは政治家、官僚を中心に構成されたごく小規模な集まりのようです。閣僚であること、また規模の小ささから、亜連の諜報機関も情報を握っていないようです」
種田の言葉に、佐々木は唸った。
種田は言った。
「一応海軍内部にも不満をもった者はまだいるようです。CIAの情報だと、海軍の海兵隊高級将校のなかに、やはり現地アメリカ大使館に接触してきた者がいると」
「もはや亜連政府もボロボロだね」
佐々木はそういうと、何かを思いついた表情になった。
「種田くん、これから私がある計画をまとめる。私はこれを長官、よければ総理にも伝えた上で、CIAと情報共有してよいかきく。ゴーサインがでたらCIAとも情報共有するので、その準備を頼む」
種田ははい、と答えた。
「君澤くん」
工作活動に長けた君澤という女性ははい、と答えた。
「君は私の計画に基き、諸工作の準備を頼む」
君澤は頷いた。佐々木は他のメンバーに言った。
「諸君らも種田くんや君澤くんを支援してくれ。情報収集も引き続き頼む」




