第68話 排除
亜細亜太平洋島嶼連邦共和国陸軍の首都防衛師団と、海軍第1海兵師団・第7海兵師団の戦いは熾烈となった。
両軍は同胞に武器を向け、相手を制圧すべく、自身の犠牲すらいとわない戦闘を続けた。
結果として首都防衛師団は壊滅し、首都各地には戦闘の爪痕が深く刻まれた。
1月17日午前2時、首都ティティリンは2個海兵師団によって制圧された。
しかし、目標は達成されていない。
大統領以下、閣僚、要人たちがごっそりいなくなっているのだ。
1月17日午前4時
「やられた」
国防省の自室で、報告を聞いたイー元帥は報告にそう答えた。
軍総合司令部作戦部部長のトー少将も考え込んだ。
「恐らく首都にはいないでしょう……ということは」
その時、一人の少佐が走ってきた。
「伝令! 国営放送がこれより大統領の緊急放送を行うとのことです」
「みなさん、ここで私は大きな謀略をお伝えしなければなりません」
テレビの中のヤー大統領は国旗を背後に、マイクの前に立ってそう話した。
「現在、敵の支援を受けた軍の反逆者たちが一部部隊を扇動し、首都を占領しました。我々は極めて遺憾ながらこの謀略を止めることが出来ず、一時的に逃亡するより他ありませんでした」
テレビをみていたイー元帥はくそ、とぼやいた。
「首都では栄誉ある首都防衛師団が防戦を果たしました。また首都周辺には治安部隊が包囲しています。反逆者たちに告げます。ただちに投降しなさい。私は余分な血は流したくない。投降すれば安全は保障します―――」
「くそ、おれはここではくたばらんぞ」
イー元帥は机の中から、コルトパイソンを取り出し、装弾した。
「私もです」
トー少将もコルトM1911をホルスターから取り出す。
伝令にきた少佐も、サブマシンガンの撃鉄を起こした。
直後、部屋が真っ暗になる。
それは一瞬の出来事だった。
まず少佐が射殺され、同時に数人の特殊部隊員がイー元帥とトー少将にとびかかった。
2人を拘束した特殊部隊は、ただちに連行した。
午前8時。
首謀者を失った2個海兵師団は一気に勢いを失って、首都を他陸軍部隊に明け渡した。
師団司令部は一時的に拘束されたが、師団長以外はすぐに釈放された。2人の師団長は、イー元帥とトー少将とともに即日軍事法廷にかけられた。4人は直後、銃殺刑に処された。
軍事法廷と処刑は、信じられぬことにテレビで中継された。
このような非人道的行為は国際世論や世界各国、人権機関の非難を受けることになった。しかし、亜連政府は聞く耳を持たなかった。
こうして亜連の、戦時下のクーデターは終わった。
一晩の出来事だったが、亜連にとっても、そして日本にとっても大きな爪痕を残すものとなった。




