第59話 『龍の角』作戦
先島諸島、小笠原諸島、青ヶ島、日本にいた亜細亜太平洋島嶼連邦共和国の軍部隊は全て排除した。
特に亜細亜太平洋島嶼連邦共和国がもっていた、世界有数の海軍力は致命的なほど打撃を受けた。
しかし、亜細亜太平洋島嶼連邦共和国政府は依然として講和のテーブルに付こうとしない。
そして亜細亜太平洋島嶼連邦共和国はまだその核戦力を失っていない。
1月15日 朝
亜細亜太平洋島嶼連邦共和国は降伏もせず、ただ攻撃戦力をもったまま、沈黙している時間が続いた。
日本側は不気味な沈黙と感じていた。
その時間、日本は何をしていたのか。
日本国民の世論は、この時間を『不気味な沈黙』と評していた通り、日本への新しい攻撃―――より具体的に表現するならば、日本への新しい核攻撃を準備しているのだという主張が多かった。
それは具体的な形となって現れたのは、大都市部の住民が地方―――村落への自主避難が相次いだことだった。
もし、その避難する住民が大都市部の1パーセントだったとしても、村落にとっては抱えきれないほどの負担である。
地方郊外に家屋をもつ土地主は、突然、大金をはたいて、ほぼ修繕していない家屋を売ってくれといわれ、不動産屋には避難民が殺到し、さらに農村の公園や農道でキャンプや車中泊をする光景も珍しくなかった。
それは大都市部の住民の中でも数パーセントであったが、3発の核攻撃を相次いで受けた人々にとってはもはや生存に関わる出来事であった。
そうでなくても、東京をはじめとする大都市圏では一気に避難道具が店頭からなくなり、防護服やガスマスクなど、対放射能のグッズを販売する店もあったが、これもまた一気に売り切れた。
よって、これらの品は高騰し、違法に転売する者も増え、警察も対応に追われた。
行政機関も、ミサイル攻撃や核攻撃が行われそうになったときに、どう対処すべきか、問い合わせがやはり殺到した。
そして都市部の人たちは、子供だけでも疎開させられないかという意見が増え、行政が児童・生徒の一時的な自治体外避難を検討し始めた。
しかし、これらの出来事は1週間も経たないうちに展開していった出来事である。
人々がミサイルと、核の恐怖におびえながら、その対応はそのほとんどが即効性のものではなかった。
日本国民の多くは、ミサイルと、核兵器の現実的な恐怖に苛まれていくしかなかった。
自衛隊も先島諸島、小笠原諸島、青ヶ島の奪還作戦で、大きな損害を出した。
部隊の再編成を行いながら、戦力を維持していた。
さらに、自衛隊は、次の作戦について協議している。
自衛隊の高級幹部たちの会議。
統幕運用部の一佐が幹部たちに一冊の冊子を配布していた。
『龍の角』作戦について。
「何だね、この作戦は?」
ある陸将が尋ねる。一佐は答えた。
「これは亜連本土攻撃作戦です」
会場がざわつく。一佐は続けた。
「亜連は降伏せず、沈黙を続けています。これ以上の核攻撃を阻止するため、亜連政府を降伏する、あるいは徹底的に核戦力を叩くことを目的としています」
「では」
統幕長が言った。
「その詳細を説明したまえ」




