第56話 先島諸島沖海戦
先島諸島に海上自衛隊第2水上戦群と輸送艦隊が迫りつつあった。
また沖縄本島及び九州からも空自の戦闘機部隊も接近しつつあった。
これに対抗するのは亜連海軍第1艦隊、空軍の先島諸島駐留部隊、また敵自衛隊が上陸した際には亜連陸軍第7師団が反撃することになっている。
亜連海軍第1艦隊の提督、デァロ・キン中将は空母『シワヘマ』のCDCのメインモニターを見つめていた。
敵戦闘機が大量に押し寄せている。
この規模は想定していたとはいえ、一瞬で殲滅される。提督は思った。
馬鹿馬鹿しいが、総司令部より死守命令が出ている以上は、この海域は離脱できない。
ならば、と提督は思った。
全機発艦の命令を受けた空母『シワへマ』の艦載機はただちに発艦した。
ファイ・タン中尉もその一人だった。彼は戦闘機パイロットだ。
しかし、彼らには別の命令もあった。
敵空母撃沈。戦闘機部隊は発艦後、敵空母を攻撃し、その後本国へ離脱せよ。
途中で空中給油を受けられたい。
空軍の空中給油は、提督の越権行為だったが、部下たちを一人でも多く生かしたかった。
それが提督最後の願いだった。
海上自衛隊第2水上戦群旗艦の航空機搭載型護衛艦『しなの』
その対空レーダーには敵艦載機がこちらに向かってくるのが確認された。
それと同時に発射される、対艦ミサイル。
艦隊に警報が鳴る。
「対空戦闘よーい!」
第2水上戦群から一斉に対空ミサイルが発射された。
対空ミサイルは、敵対艦ミサイルや艦載機を破壊し続けた。
超低空で飛ぶ、敵艦載機を確認できないまま……
レーダー上『しなの』至近に、敵艦載機が突然浮かび上がった。
目視でも確認できる距離だった。
ファイ・タン中尉以下、数機の艦載戦闘機パイロットたちは機首を上げ、『しなの』上空に達した。
『しなの』艦橋から全艦に艦内放送を通じて叫び声が聞こえた。
「敵機直上、急降下!」
甲板にいたもの、艦橋にいたものは反射的に上を見た。
ミサイルや爆発の間を縫って、亜連海軍のAaF-11M戦闘機が急降下してくる。
「ぶつかるぞ!!」
甲板で誰かか叫んだ。
しかし、それは間違っていた。
対艦ミサイルが放たれ、戦闘機は急上昇を開始した。
ミサイルは降下とジェットで凄まじい勢いをつけながら、『しなの』甲板エレベーターに突っ込んだ。
格納庫で2発の対艦ミサイルが爆発し、それは格納庫にあった燃料や火器に燃え移った。
一気に大爆発を起こし『しなの』は燃える艦となって、しばらく海をさまよい、そののち沈んだ。
太平洋戦争が終わって以降、日本が空母を失ったはじめての出来事となった。




