第53話 小笠原群島の地上戦 その2
二見港の手前で2台の装甲車が歩兵らとともに抵抗をしていた。
MST12装輪装甲車が20ミリ機関砲弾をばらまきながら、自衛官らを圧倒していく。
自衛官の一人が、通称軽MATと呼ばれる、01式軽対戦車誘導弾を敵装甲車に向けて放つ。
命中。大爆発を起こす。
その隙に別の隊員がさらに軽MATを撃つ。大破。
爆発に巻き込まれる亜連兵士たちをさらに機関銃で制圧していく。
彼らは手をあげ、投降し始めた。
各所での戦闘は自衛隊側の勝利で収束しつつあり、まともに抵抗しているのは、いよいよ、この小笠原村役場のみとなった。
まだ50名ほどの将兵が小銃やロケット砲などで対抗を続けている。
先任指揮官はマル・クサンカ少佐。なお、小笠原諸島占領軍司令官は現在行方不明。
「司令官はまだ見つかっておらんのか?」
2階から敵兵を見ながら、通信兵に言った。
「はっ、どこにきいても音信はとれません」
「うむ。とりあえず独断でここを守らねばいかんわけだ」
そう言いながらマル少佐は思う。
面倒なことになった。俺がこの島の、恐らく最後の指揮官になるとは。
「弾薬は?」
他の兵士が答えた。軍曹の襟章がついた迷彩服を着ている。
「ここの倉庫にいくらか保管してあります。まだ当分は戦えます。
「よろしい。弾薬を各兵に配給し、戦闘を続行せよ」
了解。そういうと、軍曹は命令を遂行すべく、その場を離れた。
村役場の抵抗は激しかった。
自衛隊側にも少なくない犠牲が出た。
周囲を包囲するのがやっとという状況であった、
第1空挺団副団長山下一佐は離れたところに臨時の、簡易的な指揮所を設け、そこから双眼鏡で村役場を見て、戦況を確認するなどしていた。
「中に一斉に、思いっきり無反動や対戦車ロケットを叩きこもう」
山下一佐は幹部たちを前にしてそう言った。
「そして機関銃でさらに制圧射撃、その後他の隊員が突入し、制圧していく、いいな」
他の隊員たちは頷いた。
カールグスタフ無反動砲や01式軽対戦車誘導弾が役場の周囲で構えられる。
そして
「撃ッ!」
山下一佐の号令が、ヘットセット越しで聞こえた。
一斉に各隊員が引き金をひき、役場にいる亜連将兵たちを吹き飛ばす。
後方でMINIMI機関銃を射撃し、収まったところで隊員たちが役場に突入する。
役場入り口から小銃の銃床で殴りつけようと、とびかかる亜連兵士がいた。
ただちに小銃の引き金を引き、銃弾を叩きこむ。
兵士が倒れこむ前に、内部に突入する。
銃撃戦がすぐ起きる。
亜連兵は廊下の角から撃っている。
自衛官は手榴弾を亜連兵に投げ込む。
爆発。
少し様子をみて、制圧したことを確認すると、小銃を構えて前進する。
2階へ向かう階段は特に抵抗が激しい。
敵も手榴弾を投げ込んで抵抗する。
自衛隊は3人の隊員が息を合わせて、1階から2階に手榴弾を投げ込んだ。
大きな爆発が起きる。その時から、敵の抵抗がなくなる。
すぐに上階に突入する。
上階でも各亜連兵が抵抗を続けていたが、数は少なく、ただちに制圧される。
村長室では1人の将校がサブマシンガンを構えて、机を盾に銃弾を撃つ。
将校が物陰から出て、撃とうとしたところ、自衛官が放った小銃弾が腕に命中する。
すかさず前進、将校を制圧した。
これ以降、父島での亜連兵の抵抗はなくなった。
村役場に掲げられていた亜連の旗が下ろされ、日章旗が上がった。
島が奪還されたのだ。
しかし島には、大きな戦火の跡が残った。
なお、小笠原諸島占領軍司令官は部下の運転で軍用の4輪駆動車に乗っている途中、小笠原海洋センター付近で自衛隊の無反動砲の攻撃を受け、絶命しているのが確認された。




