第50話 小笠原沖海戦 その6 砲戦開始
亜連海軍第2艦隊の残存戦力である7隻の艦艇は、海上自衛隊第1水上戦群の生き残った7隻に向かっていく。
第1水上戦群に緊張が走る。
中井司令官は決断に迫られた。
このまま回頭して逃げるのが良い手だが、恐らく追いつかれる。
そして、『やましろ』が大きな的になってしまう。
中井は命じた。
「総員、砲雷撃戦用意。『やましろ』は北へ回頭。『はるさめ』『ゆうだち』が『やましろ』の護衛に当たる。
なお『はるさめ』は艦橋が破壊された状態である。
第1水上戦群は以下のような陣容で合った。
『やましろ』(一部損傷)『はるさめ』(艦橋破壊)、『ゆうだち』
『まや』『ゆうぎり』『しらぬい』『すずつき』(ヘリ格納庫損傷)『ありあけ』
第1水上戦群は司令の中井海将補以下が護衛艦『まや』に移動した。
前線で砲戦の指揮を執るためである。
『やましろ』には艦隊幕僚長以下、数名が残り、『やましろ』『はるさめ』『ゆうだち』の指揮を執ることになった。
こうしている間にも亜細亜太平洋島嶼連邦共和国海軍第2艦隊は近づいてくる。
彼らの陣容は以下の通り。なお、損傷を受けている艦もある。
巡洋艦『チオイア』(旗艦、大型巡洋艦『ツミル』級)
駆逐艦『アリマセ』(『ブコナザナカ』イージス対空駆逐艦)
対空駆逐艦『ミルツ』3隻、対潜駆逐艦『ツホリボ』2隻
亜連海軍第2艦隊は単縦陣になって航行し、敵海上自衛隊第1水上戦群を目視で捉える範囲まで接近していた。
すでに闇夜は消え、辺りは明るくなっている。
海上自衛隊第1水上艦群の5隻も単縦列に連なっている。
チ大佐は命じた。
「撃ち方はじめ!」
各艦に装備してあった155ミリ連装砲が唸った。
『チオイア』は155ミリ連装砲が4門、『アリマセ』が4門、他駆逐艦6隻がそれぞれ3門ずつという、火砲だけ見れば強力なものだった。
海上自衛隊はそれぞれの主砲が各艦に一門ずつ、艦前部に配置されている。
主砲の命中率は電子装備によって正確に測定され。その命中率も高いものだった。
『ありあけ』の艦橋後部、『ゆうぎり』の艦橋に命中している。他艦にも何らかの打撃を与えていた。
しかし、正確な測定をもって極めて高い命中率を誇っているのは、海上自衛隊も同様だった。
「撃ち方はじめ!」
イージス艦『まや』から中井海将補によって発せられた命令によって、5門が火を噴き、全弾が敵艦のどこかに命中した。
このうち、駆逐艦2隻は艦橋を撃ち抜かれている。
「魚雷発射用意!」
第2艦隊は単縦陣をヘビのようにとぐろを巻いて、進路を敵艦隊に向けた。
チ大佐の号令の下『チオイア』甲板中央にあった533ミリ魚雷4連装発射管4基が海に尖端を向ける。
他の巡洋艦、駆逐艦の甲板に備え付けられてあった324ミリ短魚雷発射管も、水平たちの手で操縦され、魚雷を装填される。
第2艦隊の戦列と敵第1水上戦群との戦列がほぼ横についたときだった。
「魚雷発射!」
魚雷の群れは一気に第1水上戦群に向かっていく。
数発が命中。護衛艦『まや』にも大きな衝撃が響く。
『まや』にも浸水はあったものの、応急措置で大事には至らなかった。
しかし『しらぬい』が533ミリ魚雷2発と324ミリ魚雷を2発ずつ受け、沈没するより他なくなっていた。
『すずつき』も浸水の被害を受けていたが、持ち直していた。
「しかし……」
『まや』のCICルームで中井海将補は唸った。
(このままでは負けてしまう……どうしたら……)




