第49話 小笠原沖海戦 その5 砲戦の予兆
空母『カオウミ』が沈み、提督はじめて艦隊司令部が機能を失った今、巡洋艦『チオイア』の艦長、ク・カチン大佐が第2艦隊の残存戦力の指揮官だった。
ク大佐は帰る場所を失った艦載戦闘機を南西に向かわせるよう命令し、本土の空軍に空中給油機の出動要請と、本土飛行場への着陸を要請した。
そして今、ク大佐の指揮する残存戦力は、沈んだ艦艇の救助活動を行っていた。
しかし、ク大佐にはある考えが巡っていた。
彼はCICルームで付近の艦艇を見ながら考える。
先ほど通信員より、敵空母が発艦システムに異常をきたしているとの情報が入った。
それを裏付けるように、まだ残弾はあるだろうに、航空隊による第二次攻撃を仕掛けてきていない。
また、ミサイルによるさらなる攻撃も仕掛けてきていない。これは対艦ミサイルが切れている証拠だ。
ク大佐は思った。
もしこのまま敵艦隊を逃せば、敵は補給を受けて反撃を開始するだろう。
敵には空母があり、対艦ミサイルが満載となる状態でだ。こちらは空母はない。補給を受けたところで対艦ミサイルが入るが、やはり航空攻撃にはかなわない。
ク大佐は他艦からの残弾状況についてきく。
やはり全艦、対艦ミサイルに残弾はなし。主砲、機関砲に残弾はありというのが、どの艦からもきかれる報告だった。
ク大佐はインカムをつかむと、全艦艇に放送した。
「第2艦隊残存艦体へ。こちらは艦隊司令官代行ク大佐である。これより本艦隊は敵に接近し、攻撃を挑む。砲戦である。補給の時間はない。ただちに行動する。敵の戦闘能力をくじくチャンスである。総員戦闘準備せよ」
CICルームにいた全員が息を呑んでク大佐を見た。
大佐は命じる
「輸送艦『アレリ』『カシナ』に通信。乗員の救助活動に当たるように命令。他の艦艇には救助した乗員を至急この二艦に移譲するように伝えよ」
はっ。通信員はただちに両艦に通信を行う。
後ろから副長が声をかける。
「艦長、性急ではありませんでしょうか? こちらにも補給艦がいます。その補給をもってからでも……」
「いや、その間に向こうも回復する。空母もな。我々は今のうちに、この手で始末する必要がある」
第1水上戦群が異変を捕えた。
敵艦隊が突然全速力で第1水上戦群に向かってきていた。
中井は考えた。
なるほど。空母は動かないと知ったか、見込んで攻撃をかけてきたな。
そして向こうにはミサイルはない。ということか……
「砲撃か……」
中井は目を丸くした。ある事実に気が付いたのだ。
こちらも対艦ミサイルはない。つまり砲撃しかない。
恐らく第二次大戦以来最大級の砲戦がはじまる。




