第41話 出撃
1月14日早朝
横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊の各港湾の掃海作業は優先的に行われ、この時点でこの5か所での掃海作業が完了していた。
これに伴って港湾に閉じ込められていた『龍の牙』作戦、及び『龍の爪』作戦の主要艦艇が出港した。
潜水艦『はくげい』は出港直後、浮上しながら瀬戸内海を航海していく。
艦橋にいた宇佐見艦長は他乗組員とともに双眼鏡で周囲を確認する。
冬の早朝、冷えた瀬戸内の空気が艦橋にいた乗員たちの肌を刺激する。
(寒いな……)
宇佐見艦長は思う。
しかし潜れば、そんな気象とはしばしのお別れだ。
彼らは亜連本土に文字通り潜って、敵潜水艦を沈める。
(しばし……)
いや、と宇佐見は思う。
(俺は、俺たちは必ず帰ってくる。しばしの別れだ。そして帰ってきて、俺はこの寒さをまた感じるのだ)
『はくげい』は瀬戸内海から豊後水道を抜けたのち、潜行を開始した。
同じ時間、千葉県習志野駐屯地にUH60JAヘリコプター数機が離陸した。
そのうち、2機が編隊を離れ、横須賀基地に向かっていく。他の機は第1水上戦群に向かっていった。
横須賀基地のヘリポートにに着陸した2機は、特殊作戦団20名の隊員を降ろし、ヘリポートから離れて整列した。
全ての隊員は迷彩服3型に18式防弾ベストを着こんで、ある者は20式小銃をもって、ある者はMINIMI機関銃をもって、ある者はM24SWS対人狙撃銃をもって、それぞれ起立している。
ヘリポートの近くには海上自衛隊潜水艦『たいげい』の艦長、野崎二佐と随伴の若い幹部がいた。
その2人に、1人の隊員が近づいていく。敬礼。
「『たいげい』野崎艦長でありますか」
野崎艦長は敬礼。
「そうです、『たいげい』艦長の野崎二佐です」
隊員は言った。
「私は陸上自衛隊特殊作戦団の嶋野二等陸尉です。潜水艦潜伏部隊の指揮官です。どうかよろしくお願いいたします」
艦長は笑って、片手を出した。
「こんな状況です。お互い、頑張りましょう。我が家は狭いですが、いいところです。気に入ってくれればうれしいのですが」
「はっ、恐縮です」
嶋野二尉は屈託のない若者の笑みを浮かべて、艦長と握手した。
佐世保の沖合で待機していた海上自衛隊第2水上戦群は輸送船団と合流した。
輸送船団は海上自衛隊第1輸送隊の『おおすみ』『しれとこ』、他自衛隊海上輸送群の半数の艦艇、防衛省と協定を結んだ民間船舶が数隻。
これらの船団は陸上自衛隊の水陸機動団を中心に、陸上自衛隊の上陸部隊を輸送している。
旗艦、やましろ型航空機搭載型護衛艦2番艦『しなの』の艦橋から、司令の原田海将補が双眼鏡で輸送船団を見つめていた。
「大船団だなあ」
司令がそう、のんきのように、おどけてぼやく。
「なかには北海道から機甲部隊を輸送してきた民間船舶もいるようです」
横にいた、幕僚長の横尾一佐の言葉に、原田海将補は頷いた。
「大変な話だが、これからは余計に大変になってくる」




