第40話 対外情報庁
対外情報庁。
数年前に発足した日本の行政機関であり、情報機関の一つである。
国外の情報収集、分析などにあたる。
外務省の外局であるが、防衛省、警察、公安調査庁からの出向組も多い。
実は亜細亜太平洋島嶼連邦共和国の不穏な動向を察知し、政府中枢に報告していた情報機関の一つである。
これらの情報収集、分析が意思決定者たる政府中枢の段階でうまく生かされなかったのは、対外情報庁内部でも無念の声が聞こえた。
対外情報庁では、亜細亜太平洋島嶼連邦共和国との戦争に突入する直前から、長官直下で特別チームを発足していた。
単に特別チームとは呼ばれているが、目的は亜細亜太平洋島嶼連邦共和国の情報収集、分析である。
東アジア担当の第1課を主に、庁内からメンバーを招集し、特別チームを編成、任務を遂行していた。
「長官からは、特に核戦力についての情報収集、分析を行うよう、総理から厳命されているとお達しがあった」
特別チームリーダーの佐々木が言った。白髪が交った50代男性だった。元は警視庁公安部にいたが、対外情報庁発足時に第1課に配属、今は第1課課長になっている。
対外情報庁の中にある会議室には特設のオフィスが出来ていて、十数人の職員がここに詰めていた。
今、その職員たちは佐々木を見つめていた。
「率直に言って困難なことである。しかし、どんな細かな兆候も見逃してはならない」
若い男性が手を挙げた。第1課からやってきた種田という若者である。
佐々木が発言を許可すると、種田は言った。
「外務省アジア大洋州局によりますと、亜連の日本大使館に複数の政府高官や財界の要人から講和交渉に関して、工作活動を共同で行う申し出、支援する申し出などがあったようです」
「具体的に、誰からかわかるか?」
「ええ、今、外務省に頼んでリストアップをお願いしています」
「わかった。出来次第、情報共有を頼む」
種田は頷いた。
若い女性が挙手する。
「君澤くん」
佐々木が指名した。工作準備室の君澤という女性だった。
工作準備室は対外協力者獲得をはじめとした諜報活動を指導統括する部署である。
警視庁ではいわゆる『ゼロ』と呼ばれた部署が行っていたことを、対外情報庁で担当する部署になる。
君澤も警視庁公安部の人間だった。
「もし協力者が獲得が出来るなら、極めてこちらに優位になります」
「うむ。では工作準備室とも情報共有し、工作準備室は具体的に可能な工作活動をいくつか提案してくれ。それを長官にあげ、最終的に総理にも伝えるようにする」
君澤は頷いた。
佐々木が言った。
「みんなもご苦労だと思うが、我が国未曽有の危機だ。日本のために頑張ってくれ」




