第34話 作戦『龍の爪』
1月12日 14時30分
本日2度目の自衛隊首脳部の作戦会議が急遽開かれていた。
議題は『亜連核戦力の一部、可能な限り全部の排除の方法について』
会議の冒頭、服部幕僚長は言った。
「午前の会議でも議題に上がったが、総理の要請や国民感情もあり、核戦力の排除について具体的立案が速やかに必要になると思った。昼頃に海上自衛隊の潜水艦が敵戦略原潜を撃沈したが、より積極的な行動が必要となる諸君らの活発な議論に期待にする」
しかし、そのあとしばら続いたのは、沈黙だった。
皆一様に悩んでいた。どうやったら敵の核戦力を排除できるか。
ほとんどの者が具体的方法を思いつく。しかし、その過程には亜連本土への侵入、攻撃が不可欠だ。
我々自衛隊は数十年間、国土の防衛を中心に訓練をしてきた。
そんな我々に、敵深く進入し、核戦力を排除することだなんて、できるのだろうか。
「どこまで参考になるかわかりませんが―――」
統合幕僚監部運用部の一佐は冊子を回した。
古い公文書をコピーしたものらしい。機密を示す押印がされている。
表紙には『Q4G号指令計画に関する研究』と書かれていた。
幕僚たちはいぶかしんだ。
Q号指令とか有事に関する自衛隊の作戦計画である。
4号は対亜細亜太平洋島嶼連邦共和国との戦争を表している。
そのあとのアルファベットは、有事の形態にとって異なる。例えばA号は不正規戦、B号は通常兵器限定戦……と区別されたが、Eの全面核兵器戦争までしかないはずだ。
ちなみに今はQ4D号指令―――対亜連の限定核戦争計画を基本に行動している。
「このGとはなんだね?」
陸上幕僚長が言った。
「これは敵国―――つまり亜連への本土攻撃、或いは侵攻を想定されたものです」
統幕運用部の一佐が言った。どよめきが行った。一佐は続けた。
「これは冷戦期に考案されたものです。仮に亜連が敵対陣営になって、さらに米国の支援が受けられない場合、自衛隊単独で亜連本土にいる軍事力の一部もしくは全部を排除する計画を考えていました」
「まさに現状にあってるではないか」
海上幕僚長は驚いた、統幕運用部の一佐はさらに続ける。
「当時の防衛庁や自衛隊は、仮に世界規模の戦争―――第三次世界大戦のようなものを想定し、米ソが他戦線で全面戦闘を繰り広げている間、周辺諸国と戦争状態に陥った場合、自衛隊のみで、敵対国の本土に侵攻しても当該軍事力の一部および全部を排除する方法も考案していました」
「先人に感謝しなければならないな」
統幕長は言った。統幕運用部の一佐は頷いたが、その後、続けた。
「しかし、この計画が現状の作戦目標と必ず現状と合致するわけではありません。まず、亜連は現在、核戦力を保有しており、我々の目的も核戦力の可能な限りの排除です」
「では、この計画を元に、作戦を練ろう」
統幕長が言った。
その後、作戦が考案され、正式に認可された。
亜連の核戦力排除作戦は『龍の爪』作戦と命名された。




