第33話 潜水艦戦
1月12日12時
横須賀基地にある潜水艦隊司令部。
その作戦室では、潜水艦隊司令官の犬山海将は日本近海から亜連海域の地図を他幹部と見ていた。
幕僚長が地図を指しながら説明する。
「敵通常動力潜水艦、アン級は我が国主要港湾で機雷を敷設後、本土の港へと戻っているようです」
「まあ、そうだろうな」
犬山司令官は頷いた。
「また、日本近海には1隻ないし2隻の敵戦略原潜がいるようです。すでに開戦時に発射した原潜と交代して、日本近海をうろついているようです」
「これが厄介だな。すでに出港しているうちの潜水艦には攻撃命令を出しておこう」
「はっ」
犬山司令官は地図を見ながら、顎を片手でいじって言った。
「入港している潜水艦は出港準備中か?」
「はい。全艦出港準備中であります。機雷除去が済み、出港になるかと」
「うん、では一部の艦は出港可能になったらただちに出港。日本近海で警戒行動を取り、敵潜水艦を発見次第撃沈せよ。具体的に行動する潜水艦と各潜水艦の展開海域はただちに検討、命令を出そう」
「他の潜水艦はどうします?」
幕僚長の言葉に、犬山司令官は返す。
「海幕から、核戦力を少しでも削減してほしいとの命令が来ている。具体的には、亜連本土の海域にいる戦略原潜も沈めてほしいとのことだった」
「では」
犬山は頷いた。
かなり危険な勤務となるだろう。潜水艦や哨戒機、哨戒任務に就いているフリゲートなどがいるなかで、戦略原潜を沈めるのだ。
しかし、命令は当然行動に移さねばならない。海幕もそれだけのリスクは考えた上での判断だろう。
「こちらも数隻作戦投入する艦を決めて、任務に就かせよう。作戦立案もただちに行う。作戦に参加する艦は特別により高級な食材を配給するよう手配だ」
1月12日12時30分 太平洋 日本近海
潜水艦『ずいりゅう』は木本艦長指揮の下、海中を航行していた。
開戦以前から警戒任務についていたが、防衛出動が発令されて以降、日本近海にいる敵潜水艦の攻撃任務も帯びていた。
「艦長、敵潜水艦です。ケシ級戦略原子力潜水艦。深度200、2時の方向に距離4000。速度10ノットで直進中」
「うむ」
ソナー室で、ソナー員の言葉に、木本艦長は頷いた。
「いきなり大物が食いついてきたな」
艦長は発令所に戻り、全艦放送を行う。
「総員戦闘用意。本艦ゆっくり回頭、240度」
『ずいりゅう』が回頭。敵原潜は最大速力で気づいていない様子。『ずいりゅう』回頭後には、敵原潜の後方につくような形になる。
「回頭終了」と航海長。
「よし、1番から3番に魚雷装填」と艦長。
前方魚雷室では、3つの魚雷発射装置に魚雷が装填される。
静かに、すみやかに。
「魚雷装填完了」水雷長が言う。
「魚雷発射管注水用意」
艦長が指示する。魚雷発射管から、水が一気に流れる音。水洗トイレに水を流すような音。自艦が水を立てるとき。緊張が走る。
「注水完了」と水雷長
「依然、敵艦直進」ソナー員からの報告。
「よし。魚雷1番、2番発射!」
艦長からの命令。まず2発の、音を追尾するタイプの魚雷が発射される。
「続いて3番発射!」
もう1発発射。
「本艦直進。4時の方向。速力15ノット」
『ずいりゅう』は攻撃後、敵の反撃を逃れるため、ただちにその場から撤収する。
ソナー員はその間も耳を研ぎ澄し、報告する。
3発の魚雷は敵のスクリュー音に食いつき、向かっていく。
敵原潜。囮魚雷発射。1発食いつく。
ノイズメーカーと呼ばれる、囮の気泡発生装置を稼働。しかし間に合わない。1発が後部スクリューに命中。
爆発し、艦体が四散する。
残り1発はスクリュー音が無くなり、そのまま目標を見失ったまま直進し、沈む。
敵艦撃沈の報に安堵と歓喜にわく『ずいりゅう』
「一発無駄にしたな」
自戒を込めて、安堵に、静かに笑う木本艦長。
その後、『ずいりゅう』は通信を行い、潜水艦隊司令部に戦果を報告する。
海上自衛隊潜水艦隊司令部は史上初めて原子力潜水艦を沈めたことに気が付き、歓喜に沸いた。




