第28話 暴動
午前7時30分
東京都新宿区新宿八丁目は亜細亜太平洋島嶼連邦共和国から居住している人が多く、いわゆる亜人街として有名である。
亜連の攻撃を受け、損害を受けた機動隊は再編成し、第1機動隊と第2機動隊がステンレスの盾をもって亜人街の各所にいた。
二車線のさして広くない亜人街商店街の入り口には機動隊員が数十名、縦に列を成して、盾を構えて侵入を拒んでいる。
その前の交差点には激憤に駆られた過激な極右団体や、個人が集まっていた。
『ただちに解散しなさい! 繰り返す、君たちの行動は無許可のデモ行為である! ただちに解散しなさい!』
機動隊の呼びかけに、誰かが火炎瓶を投げた。機動隊の列の前の地面に落ちて、炎上する。
火炎瓶は所持そのものが犯罪であるため、列の後方から2、3名の機動隊員が飛び出してきて、とっさに投擲した者を押し倒し、検挙する。
他の集団が集まろうとしたが、すぐに逮捕した者を引き連れ、多少殴られたが、列の後ろに引き返した。
『機動隊ー! 同胞のカタキを打とうとしているんだぞー!』
暴徒の中から拡声器で呼びかけをしている者もいる。
『東京が悔しくないのか! 浜松が悔しくないのか! そこの亜人どもも攻撃をした亜人どもも一緒だぞ!! 弱者のふりをして諸君らを殺そうとしてるぞ!! 君たちの敵は我々ではない!! 平然と核を打ちこみ、日本の女子供を焼き殺す、後ろのヒトモドキどもだ!!』
『ただちに解散しなさい!』
機動隊は任務を遂行した。
今機動隊の眼前にいるのは、愛国者の皮を被った暴徒だった。差別主義者であり、復讐を名目に秩序を破壊しようとする者だった。
さがれーさがれー、と暴徒のなかから叫び声が聞こえる。
機動隊は何か暴徒らが次の行動を起こすと察した。
と、火炎瓶がいくつも投げ込まれる。
機動隊員の中には火炎瓶をもろに食らい、炎上する者もいた。
炎上した隊員にただちに消火器が吹きかけられ、担架で後送される。
後方にもう一段機動隊の列ができる。
前列の機動隊員の前方に防毒マスクを被った機動隊員数名がガス銃をもって、やや角度をつけて打つ。
白いガスの尾を引いたガス弾が空を飛び、暴徒の足元に落ちる。
催涙ガスに巻かれた暴徒たちはたまらない。
機動隊の指揮官は命じる。
『検挙ー!』
前列の機動隊員が暴徒に向かう。
身動きがとれなくなった暴徒に、思いっきり体当たりをくらわして身柄を拘束する。
逮捕者は警視庁の輸送車に乗車させられ、警察署に輸送されていく。
このような暴動は今回のみならず、何回か断続的に続いた。
市ヶ谷の防衛省前では、右翼団体と左翼団体が対立していた。
『防衛省の皆さん―、自衛隊の皆さん―、戦いはやめましょう。戦いは何も生みません。対話こそが重要なのです』
左翼団体の街宣車が壮年女性の声で防衛省に向けて問いかけると、
『自衛隊の皆さんお疲れさまです。対話は何も生みません。敵を思いあがらせるだけです。この人のいってることは利敵行為です』
防衛省の正門前には機動隊が盾を構え、縦に列を成している。
その後方には陸上自衛隊員が小銃を持って監視をしていた。
道沿いにはパトカーや警視庁の輸送車、自衛隊の車両が止まっている。
『防衛省の皆さんー、自衛隊の皆さん―、皆さんが戦う必要はないのです。犠牲が増えるだけなのです』
拡声器を通した壮年女性の声が聞こえる。
自衛隊員たちに呼びかけても無駄であった。
彼らは命令によって任務を遂行しているだけなのだ。
では、政府に呼びかければいいのか、と首相官邸前で反戦運動を掲げたデモ隊は、無許可デモということで身柄を拘束されていた。
もっとも、戦う必要がないのか、対話をするのみでいいのかは疑問視される。
『そこの左翼に問いかけます! あんたらは対話すればいいと思っているのか!? それで攻撃されずに済むと思っているのか!? あなたたちは頭お花畑です! この戦後平和主義につかりすぎた似非平和主義者なのです!!』
右翼団体も左翼団体の攻撃に終始していた。
機動隊員たちはこの無許可デモ団体をそろそろ拘束しようとしていた。




