第26話 統幕会議
1月12日 午前8時
東京都新宿区市ヶ谷の防衛省の地下にある中央指揮所の指揮官区画には、自衛隊首脳部が集結していた。
長机には自衛隊の高級幹部たちが囲んでいる。
区画の周囲には壁には大型モニター、その前には電子機器、数十のコンソールとそれを操る100名以上の自衛官がいる。
「敵に東京まで攻められたのは大きな痛手だ。自衛隊内外で、自衛隊を非難する声が上がっている」
服部統幕長は言った。
高級幹部たちは黙った。
首都圏での戦いは自衛隊の勝利で終わった。
しかし、首都まで敵軍を突入させた時点で、自衛隊の失態は大きい。
「だが、それ以上に自衛隊は求められている声が大きい。敵に占領された地域の奪還、さらに二度と核攻撃を受けない状況を作り出すことに、だ」
統幕長はそう言いながら周囲を見た。
全員顔を上げて、統幕長を見ている。
「そのための作戦立案を行おう」
統幕長がそういうと、統幕運用部の一佐が手を挙げた。
「敵に占領された地域の奪還に関しては、作戦立案を進めております。奪還地域ごとに、海上自衛隊を中心に、統合任務部隊を編成、同時に各地の奪還作戦を行おうと思っています」
統幕長が頷いた。
「核攻撃の阻止はどうだろう?」
一佐は若干困った表情をして言った。
「その方も作戦立案はすすめていますが、敵の核攻撃能力は航空機、弾道弾など規模も大きく、ミサイルのサイロも保有しているため、敵の深部まで攻撃する必要もあるため、難しい状況です。現状では、防空能力を強化するより他ないと思います」
「そこは航空宇宙自衛隊も対応している」
空幕長が言った。
「ただ、やはり弾道弾迎撃能力は、残念ながら敵のミサイル発射能力が上回っている。撃ち漏らしの可能性は排除できない」
統幕運用部の一佐は同意するように難しい表情をして頷いた。
「敵基地攻撃は困難、というのは理解できる」
統幕長は言った。
「しかし、敵の戦略原潜や侵攻した航空機を撃墜することで削ぐことはできると思う。注力していこう」
全員は了解と頷いた。
統幕長も含め、正直あまり意味のない話だ、と思った。
近海に弾道弾を発射できる戦略原潜が近づいたり、核爆弾が搭載可能な爆撃機が侵攻してくれば別だが、敵の核攻撃能力を排除するのは難しいだろう。
敵本土にいるミサイル運搬車両やミサイル地下サイロを叩くことは、自衛隊では困難だろう。
しかし―――
「だが、統幕運用部はあらゆる可能性を考慮して、敵ミサイル発射能力を根絶する方法を、引き続き考慮してほしい。自衛隊の能力で、より広い方法を考えてほしい」
統幕長はアバウトな要求をしていることはわかっていた。
運用部も自衛隊が行動可能な限り、考慮しているはずだ。
より広い方法で、というのも、もう考えているかもしれない。
運用部の一佐はかしこまりました、と返事をした。
統幕長は頷き、全員を見た。
「まずは敵に占領された領土を奪還することだ」
運用部の一佐はそれならば、と続けた。
「先ほども申し上げましたが、海上自衛隊自衛艦隊司令官を統合任務部隊指揮官とし、先島諸島、青ヶ島、小笠原諸島にわけて。海上自衛隊を中心とした任務部隊を編成、作戦を実施し、これらの地域を奪還するという作戦を立てています」
「立案までにどのくらいかかる?」と統幕長。
「今日の昼までには」
「なるべく早く頼む」
了解しましたと、統幕運用部の一佐。




