第14話 亜連からの発表
亜連時間――日本時間と同じ、4時45分。
国民および全世界の人々に5時に緊急放送を行うと発表した。
行政の広報車が出回って、5時より重大放送が行われる旨、放送して回ったが、それでも当然亜連国民は寝ていた。
よって亜連の国営放送、ABSは朝は生中継したものを録画し、繰り返し放送することで全国民に周知することにした。
むしろこの情報を聞きつけた世界中の人々は、亜連の発表予告を聞いて、亜連の国際放送に注視することになった。
日本の惨状はすでに世界中に報道機関、または国では情報機関によって知れ渡っていた。
5時。
ABSは国歌を流した。
2003年に制定された国歌だった。
ああ、我が亜細亜太平洋島嶼連邦共和国 亜細亜と太平洋の太陽となれ
ああ 我が亜細亜太平洋島嶼連邦共和国 亜細亜と太平洋の誇りとなれ
歌が終わると、登壇したヤー大統領がカメラに向けて話した、
「親愛なるわが国民の皆さん 全世界の皆さん 我々は世界に新秩序を築く第一歩を歩み出しました。日本に対して、一部島嶼の占拠、弾道弾攻撃、さらに核攻撃、それに東京の襲撃を実施したものであります」
起きていた国民はテレビに、ラジオにかじりつくようにきいていた、
店で料理の仕込みをしていた老夫婦は仕込みの手を止め、ラジオを聞き入っていた。
朝のランニングが趣味の男性は、ランニング終了後、テレビをじっと見つめていた。
早朝の出勤前に女性が、家にあったパンと粉末を溶かしたスープという朝食を止め、テレビを聞き入っていた。
出勤前、異様に早く起きる夫、朝食の準備をする妻、10代半ばの息子と娘もパンと果物、目玉焼き、サラダ、オレンジジュースという朝食をとめ、放送を聞き入ってる。
「我々はアジアと太平洋の新秩序を築くべく、日本政府に要求します。本日4時から144時間以内に以下の要求に従いなさい」
視聴者は時計やカレンダーを見た。今日は1月12日、その4時。その144時間後―――つまり6日後は1月18日午前4時。
1、全戦闘行為の停止
2、日米安全保障条約の完全破棄
3、亜細亜太平洋島嶼連邦共和国との同盟条約を結ぶこと。またこれには連邦共和国軍の駐留を認めること。
4、日本政府は、亜連政府および連邦共和国占領軍総司令部の意見に従うこと。
5.日本政府は、亜連政府を上位存在と認めること
6,1、2、4、5を包括的に定めた条約に調印すること
「なお、これに従わない場合はさらなる核による攻撃を加えることになる。また、日本以外の諸外国が介入した場合も、日本及び当事国に核攻撃を加える」
以上である。
大統領の演説はこれが終わり、5分以下で済んだ。
続いて、国防大臣から国民に向けて予備役の招集、戦時法が発動したことを発表し、予備役の出頭や軍の指示には速やかに従うように伝えた。
早速、連邦共和国軍の駐屯地、基地、警察署には予備役が出頭しはじめた。
全土で物資の統制がはじまり、軍隊の移動が優先的に行われた。
首都ティティリンも首都防衛師団を中心とした部隊の移動が行われ、郊外や市街地にある空き地などに対空ミサイル陣地が設置され、街頭には武装した兵士たちが立った。
大通りには軍のトラックや装甲車、戦車がやたらと走り、物々しい雰囲気になっていた。
それでも多くの店はあき、商業活動が行われた。
「なあ」
3人の年寄りがティティリンの大衆食堂の椅子に座って、小さな円卓を囲み、スパイスのきいた焼きそばを食べていた頭の薄い老人が言った。
「戦争がはじまったけど、お前のせがれ」 厚めに切ったランチョンミートをパンに挟んだものをゆっくり噛んでいた丸坊主の老人に話す。
「海軍じゃなかったっけ」
「うん、孫もだ。お前もじゃろ」
「うん、俺は孫二人も海軍に入りたてだ、お前は―――」マッシュポテトと魚の丸焼きをゆっくり食べていた、白髪の老人に向けて言った。
「うちは上が空軍、下が陸軍。孫は海軍だよ」
「そうか」頭の薄い老人は言った。「みんな無事で帰ってきてほしいのォ」
「当り前じゃ」丸坊主の老人が言った。
「そうだぞ」白髪の老人も言った。「わしはせがれと孫のため、毎日祈ることにした」
「わしもそうしよう」頭の薄い老人が言った。
「わしも……」丸坊主の老人がそういってパンに食いついた。




