第10話 東京奇襲
西太平洋上に、一直線に並んで飛行する、亜連空軍の大型輸送機、CaP-130、10機があった。
部隊は相模灘で北に変針し、関東平野上空に向かった。
輸送機部隊はそのまま降下し、羽田空港の滑走路に向かって行く。
同時刻
亜細亜太平洋島嶼連邦共和国の大型客船『バーバ・ターカ』号。
1月12日4時現在、東京港竹芝埠頭にいる。
しかしこの船は亜連海軍によって改造されており、内部は揚陸能力をもった輸送艦に近い。
去年の大改装でフェリー機能も持ったとされる『バーバ・ターカ』だが、実は内部に空挺戦車、装甲車、特殊部隊用の車両がいくつか積まれていた。
4時、船体後部から埠頭に向かって橋が伸び、巨大な車両用上陸口が開く。
そこからSAT94改空挺戦車4両、SRT07装輪装甲車4両、四角い車体に、上部から20ミリ機関砲の砲塔を付けたMST12装輪装甲車12両、特殊部隊専用の4輪駆動機動装輪車20台が出てきた。
同時に亜連陸軍の迷彩服を着た亜連陸軍第303特殊戦団1800名が上陸する。
バナナ型のマガジンに円筒のガン・バレルのサブマシンガン、SP97サブマシンガンを多くの隊員が構えていた。
なかにはMM11機関銃、円筒型のSR08個人携帯型対戦車ロケットランチャーを装備している兵士もいる。
一部は車両に乗り、あとは駆け足の姿勢で前進していく。目標は永田町、そして皇居だった。
首相官邸の横、首相公邸のベッドで寝ていた鈴木総理が、側近に起こされたのは4時5分だった。
はじめは日本全土で大規模な通信障害が起きているようだ、とのことだった。
総理はただちに防災服に着替え、官邸地下の危機管理センターに向かった。
防災庁はこれを災害と捉え、初動対応の当直がただちに情報収集を行った。30分もすれば、非番の人間も官邸に到着するだろう。
しかし、通信障害故、情報が錯綜していた。
と、東京都下町に大規模な爆発との情報が入ってきた。同時に防衛省から自衛隊が弾道ミサイルを探知し、多数を迎撃したものの、一部が迎撃に失敗したとの情報が飛び込んだ。
鈴木総理と数名の側近は屋上に上がり、黒煙の上がる東京下町の方を望んだ。
爆発炎上の現場を目視し、地下に戻ってきた総理はさらに衝撃的な情報を聞かされた。
静岡県より、浜松市に大規模な爆発を確認。県庁舎から浜松市の方角に高いキノコ雲を確認した。
陸上自衛隊第10師団も浜松市の方角にきのこ雲を確認した。
何よりも決定的だったのは浜松基地の情報だった。
浜松市街地で巨大な爆発を確認。当基地も甚大な被害。基地内の航空機用放射線検知装置から、多量の放射線を検知した。
「なんてことだ……」
総理は呆然とした。しかし、奥歯をぐっとかみしめ、何とか自分を噛み締める。
「防衛出動命令を発令します。あと東海、中部地方の部隊は浜松市に災害派遣命令。ただし、放射線等による二次被害には十分注意してください」
防衛出動は日本が外部からの武力攻撃を受けたと認められる場合、自衛隊に向けて発令されるものだ。
自衛隊は防衛出動のもとで出動した場合、外部勢力を排除するため、武力の行使をおこなうことができる。
自衛隊創立以来、防衛出動がこれまで発令されたことがなかった。
しかし、総理は明確な侵略が起きていることを認め、かつ、緊急に対処が必要であることから防衛出動を命じた。
なお、国会の承認が必要であるが、特に緊急の必要がある場合は、国会の承認を得ないで出動することも可能である。
「総理!」
オペレーターのひとりが叫んだ。
「警視庁より入電! 虎ノ門一丁目交番から、戦車、装甲車を率いた武装集団が北上したのを目撃したそうです」
「武装集団!? どういうことだ!?」
「さらに警視庁から入電! 通報があり、竹芝埠頭付近から戦車と装甲車複数が列を成して北へ向かったとの通報が入りました。通報者は映画の撮影かと疑ったそうですが、警視庁にはそのような届け出は入っていません」
「敵だ」
総理はぼやいた。
「亜連の攻撃だ」




