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第6話 最初の30分間


『きりさめ』が沈んだ頃、亜細亜太平洋島嶼連邦共和国は、ほぼ同時に日本全土に対し、攻撃を加えた。

 202X年1月12日午前4時のことである。


 亜細亜太平洋島嶼連邦共和国総合司令部サイバー軍は日本各地のインフラ、防衛、企業、その他のサイバー網に打撃を与えた。


 


 まず、いくつかの中央省庁など、行政機関や大手通販サイト、企業のサイトにDos攻撃を仕掛けた。

 過負荷をかけ、サイトを落としたのだった。こうして中央省庁のサイトはダウンし、大手通販サイトも使用できなくなり、何より一部企業のシステムがダウンした。

 物流大手の企業では配送が難しくなり、復旧の見込みは立たなくなった。JRや私鉄の改札システム、切符などの販売システムも狙われ、ダウンした。この結果として、多くの鉄道が始発から運行を見合わせた。


 また航空会社、NEXCOのシステムもサイバー攻撃の目標として狙われ、飛行機も朝から欠航が相次ぎ、NEXCOも全国規模で通行止めになった。フェリーなども同様だった。

 携帯含む電話会社もシステムがダウンし、通話やネットの使用が不可能になった。


 警察や消防も深刻だった。全ての電話が鳴り響いて、無言電話が相次いだ。亜連のサイバー攻撃の一環だった。

 まともな業務は不能となった。


 こうして日本各地で混乱は発生した。亜連のサイバー戦は成功した。


 だが、作戦領域は電子の中だけにはとどまらなかった。




 4時20分。


 日本近海から亜連南部にかけて、弾道弾が発射された。


 連邦共和国海軍戦略潜水艦数隻からはSLBM100発以上、亜連の陸上部からIRBM200発以上が発射された。


 日本ではミサイル防衛部隊が配置され、破壊措置命令が下っていた。


 なお、日本に向かうミサイル群の中には、弾道が通常ではないものも含まれている。




 横田の航空総隊司令部はただちに日本に向かうミサイルを探知した。


 航空総隊司令官、日田空将はロケットの管制室のような作りの指揮所の司令官区画で、メインモニターに光点として映されるミサイル群を発見した。

 航空総隊司令官は陸海空自衛隊を通じてミサイル迎撃の任にあたるようになっている。


「ミサイルの飽和攻撃じゃないか…!」


 そう苦虫を潰すように呟くと、日田空将は命じた。


「全部隊、対BM(ミサイル防衛)戦闘! 迎撃ミサイル発射可能になった部隊から順次迎撃せよ!」





 埼玉県入間基地に駐留していた第1高射群はPAC3を搭載した発射装置を南の空に向けた。

 そして


「早期警戒情報受信しました!」


 発射管制室で一人の航空自衛隊の迷彩服をきた三等空曹が興奮気味に言った。


「横田から迎撃命令出てます!」


 女性の空士長が同じように命令を出す。


「対BM戦闘用意。全員落ち着いて対処せよ」


 指揮官がそういうと、室内で了解、とそれでも興奮交じりの声が出る。


 指揮官はレーダーを見た。凄い数だ。そして続けた。


「ミサイル発射」


 配置された、十数台の発射装置から数十発のPAC3-MSE迎撃ミサイルが発射された。


 ミサイルは亜連から発射されたミサイル目掛けて天空を駆け上がっていく。


 発射管制室のレーダー士である一等空曹がモニターの表示を見ながら言う。


「インターセフト(迎撃)5秒前……スタンバイ(よーい)……マークインターセプト(迎撃いま)」


 関東から相模灘の上空で数十の爆発が見られた。


 しかし、5発がすり抜けて、2発は相模灘に、3発は関東平野に落ちていく。

 3発のうち1発は東京都奥多摩、もう1発は秩父山中、そしてもう1発は……





 5台の消防車が鳴り響く。

 通信不良のなか、炎上する葛飾区立石の住宅街に向かう。

 ミサイルは京成押上線京成立石駅の北100メートルの地点に落下した。


 爆発は数十戸の民家を燃やし、なぎ倒し、消した。

 京成立石駅の駅舎も吹き飛び、ホームと駅舎の骨組みがかろうじて残るのみだった。


 消防隊は火災を消そうと放水を開始した。


 現地の消防隊は通信指令センターに現状の報告と応援を要請した。


 本来ならば化学攻撃の危険性を鑑みて、対化学装備をする必要があるが、彼らにその余裕はない。

 いや、むしろこの爆発が何が原因か、わからなかった。もっとも、着弾したミサイルの弾頭は通常弾道だったから、その必要はなかったけれども。


 しかし、何か不吉な予感はしていた。各地で起きている、理由のわからない混乱が起きているのだ。


 そして、この地点から離れたところでは、より深刻な事態が起きていた。




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